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要約 『友だち幻想 人と人の<つながり>を考える』 著者 菅野仁

●ベストフレーズ

「友だち」という言葉に象徴される身近な人々どの親しさや、情緒をともに共振させながら「生」を深く味わうためには、これまでの常識をちょっと疑って、人と人との距離の感覚についてほんの少しだけ敏感になった方がいいのでは、ということを述べたかったのです。 154ページより

●はじめに

友だちはいらない?

本日の一冊は、社会学者でコミュニケーション論が専門の菅野仁さんの『友だち幻想』です。

現代社会に求められている「親しさ」とはどのようであるかをとらえ直し、人と人とのつながりについて改めて見直すきっかけになる一冊です。

本書を読めば、友だちは大切だけれど、その関係を重苦しく感じてしまうという「同調圧力」の苦しみが軽くなります。

●本文要約

1.友だちという悩み、親しみという苦しみ

友だちは大切だけれど、その関係を重苦しく感じてしまうという方は多いことでしょう。
特に若い人は友達を大切と思いながらも、現実には友だちをめぐるいろいろな悩みを抱えた人が多いようです。実際、SNSには友達との悩みが溢れています。

友だちという問題について悩み、ひいては、人との繋がりに自信を持てなくなっている人が増えているようです。

著者は、私たち人間は、知らず知らずのうちに、さまざまな人間関係の幻想にとらわれているといいます。固定した思い込みにとらわれているために、ちょっと見当はずれな方向に気をつかいすぎて、それで傷ついたり途方にくれたりしているのです。

たとえば、価値観が百パーセント共有できるのだとしたら、それはもはや他者ではありません。自分そのものか、自分の<分身>か何かです。思っていることや感じていることが百パーセントぴったり一致していると思って向き合っているのは、相手ではなく自分の幻想ではないでしょうか。

また、いくら親しい人間であっても、必ず自分が知らないことがあるし、自分とは違う性質を持っています。どんなに気の合う、信頼できる、心を許せる人間でも、やはり自分とは違う価値観や感じ方を持っている「異質性を持った他者である」と意識することが、私たちがとらわれがちな幻想から抜け出す第一歩です。
そして、無条件に良いものと考えられてきた「身近な人とのつながり」や「親しさ」など、すべての人間関係を考え直すことで、「親しさ」や「つながり」が生み出す苦しみから解放されます。


2.時代が変わり、人間関係の在り方も変わった

かつての日本には「ムラ社会」という言葉で表現されるような地域共同体が存在していました。これは、何も地方の農村や漁村に限ったことではなく、東京のような都会も同様です。近所に住む住人同士の関係が非常に濃密だった「ムラ社会」が必要とされていたのは、食料や衣類をはじめ、生活に必要な物資を調達するためにも、仕事に就くにしても、いろいろな人たちの手を借りる必要があり、一人ひとりにその地域で果たすべき役割が課されていたからです。
こうした、物理的に一人では生活できない時代が長く続きました。そしてその時代では地域からの交際から締め出されてしまう「村八分」というペナルティを受けることは、死活問題でもありました。そこで私たちは、ある種の共同体的なつながりや関係の中で日本的な親しさの作法を培い、現代でも、その作法をお手本にし続けています。
しかし、社会は変わりました。貨幣(=お金)というものが、より生活を媒介する手段として浸透してきたことで、極端な話、お金さえあれば生きるために必要なサービスを受けることができるようになってきたのです。
家庭や学校や職場において、さまざまに多様で異質な生活形態や価値観をもった人々が隣り合っている現代において、今まで私たちが行ってきたムラ的な伝統的作法が合わなくなっているのが現状です。
共同体的な凝集された親しさという関係から離れて、もう少し人と人との距離感を丁寧に見つめ直したり、気の合わない人とでも一緒にいる作法というものをきちんと考え直すべきではないでしょうか。


3.現代社会では「気に入らない相手とも並存できる」スキルが必須

小学校にあがるころ、「一年生になったら」という歌を歌った経験があるかと思います。学校というのは、とにかく「みんな仲良く」で、「いつも心が触れ合って、みんなで一つだ」という、「一年生になったら」という歌に象徴されるような「友だち幻想」というものが強調される場所ではないでしょうか。学校は「子どもたちはというのはみんな良い子たちだから、教師がサポートさえすれば、みんな一緒に仲良くできるはず」という前提で頑張っているのです。
昔は、小学校はだいたいムラに一つしかなく、代々家族ぐるみで顔見知りの子どもたちが集まり、親同士もつながりがありました。学校を支える地域ぐるみでの濃密な関係がはじめからありましたので、このような運営が可能でした。
しかし、現在では、地域自体が単なる偶然にその場に住んでいるひとたちの集合体になっており、こうした偶然の関係の集合体の中では、当然のように、気の合わない人間、あまり自分が好ましいと思わない人間とも出会うようになります。つまり、このような人たちとも、「並存」「共在」できることが大切になってくるのです。そのためには、「気に入らない相手とも、お互い傷つけあわない形で、ともに時間と空間をとりあえず共有できる作法」を身につける以外に手はないのです。


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4.「ルール関係」と「フィーリング共有関係」の二つに分けて、適切な「距離感」を学ぶ
5.「ルール」を学び守ることで「並存性」を確立させ
6.最も距離感に変化が生じるのが「親子関係」
7.「友だち」は幻想にすぎないと理解することで、人間関係を良くする

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