要約　『中学受験の親たちへ』　著者　おおたとしまさ、安浪京子

中学受験を通して親子が強固な信頼で結ばれるからこそ、中学受験を終えて本格的な反抗期の時期に突入しても、子どもは安心して親に反抗することができ、親は安心して子どもを見守ることができるのです。それがゆとりある中高一貫校の教育環境と相まって、豊かな思春期をすごすことができるのです。 211ページより

●はじめに

本書は、中学受験に関する「迷信」を検証した本です。世間一般に言われている中学受験に関する言説、例えば「中学受験は良い大学に入るため」「中学受験は親の受験」などや、「中学受験をする意味」「中高一貫校の大学進学実績がいい理由」「偏差値とは何か」「本当の学力とは何か」などを検証しています。

「中学受験をしなければならないのだろうか？」と悩む親に向けて、中学受験に関する正しい知識を提供しています。受験をするにしても、市内にしても、子どもの人生を大切にして、親子共に成長し、人生の糧となるような中学選択をするためのヒントが得られる本です。

●本文要約

１．中学受験が子どもの人生を決めるのか？

中学受験が子どもの人生を決めるかのような風潮があり、親はあふれかえる情報に振り回されがちです。中学受験を通して親子が一緒に成長し、正解のない世の中を生きていける「自分の頭で考える力」を持つ子どもに育てるには、親はどのような心構えで中学受験に臨めばよいのでしょうか。

親の姿勢を子どもは良く見ています。それぞれの家庭でずっと大切にしたい考え方を軸に、それぞれの家庭に合った中学受験との向き合い方を、自分自身で考えて見つけていきましょう。本書にはそのための考え方のヒントが載っています。

「子どもたちのために大人たちができることは何か」をテーマに様々な学校を取材している教育ジャーナリストと、中学受験専門のプロ家庭教師の二人が、それぞれの立場から、いま中学受験で「常識」とされていることを検証しました。子どもたちと日々直接関わる現場からの視点と、一歩引いた場所からの視点の2つで、より詳しく、偏りのない検証ができており、多くの人にとって参考となる「中学受験に対する考え方のヒント」が示されています。

２．なぜ中学受験をするのか

まず、なぜ中学受験をさせるのかを考えてみましょう。その理由が「学歴のため」「いい大学に行くため」ということなら、中学受験はおすすめできません。確かに、中高一貫校は一流の大学に進学する子が多いですが、それは中学受験に合格するような子たちはもともとの能力が高いことや、高校受験がないゆとりを活かして目先のテストの点に追われずに幅広い学習ができることなどが理由です。
学校の目標は生徒をいい大学に行かせることではありません。きちんとした私立の学校には「人としてこうあるべきだ」という学校としての考え方・目標が必ずあり、学校の雰囲気や生徒たちにはその学校「らしさ」が出ています。そのような「生き方」は言葉で教えられるものではなく、同じような生き方をしている人たちの中で生活することで自然と身につくものです。中学受験をするのは、この「らしさ」「生き方」を身につけるためです。

また、中学受験の問題（特に「つるかめ算」に代表される受験算数）というのは大人でも簡単には解けないほど難しいもので、中学受験は「自分で考える力」を伸ばす良い機会になります。
しかし、基礎は分かっていなくてもとにかく解き方を暗記する方がテストの点は取りやすいため、「何が何でも難関校に」と模試やテストの点数だけを気にして暗記ばかりして点数を取るというような勉強方法になってしまうと「考える力」を身につけることができなくなってしまいます。
スペルミスや書き間違いなどはどうしても起こってしまうものなので「考える力」のある子が必ずしも点数を取れるわけではありません。目先の点数ばかりを気にするのではなく「行けるところに入ればいい」というおおらかな考え方で中学受験に取り組み、しっかりと「考える力」を育めれば、その子は中学生になってからぐんぐん伸びていきます。

３．本当の学力をつける勉強の方法

続きは以下リンクからお読みいただけます。（残3900文字）