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ソリューション・ジャーナリズムの第一歩

宣伝会議「編集・ライター養成講座 即戦力コース」、第2回目。
冒頭で我々は講師の米光氏に対し、必死にイベント企画をプレゼンしていた。

「社交ダンス恋バナ会を開催します」

「子どもの習い事についてゆるく語る会を実施します。対象は……」

文章を志して同講座の門を叩いたはずだった。何の因果で私は、子どもの習い事に関するオフ会を企画しているのだろうか。

背景はこうだ。

米光講座では、各々が自身の「プチ専門」を決める。以降5ヶ月間かけて、自身のプチ専門に関する記事をひたすら執筆する。同時に、プチ専門に関連したイベントを主催することまでが課題に含まれている。

米光氏曰く、この企画には大切な意図が込められている。イベントを開催することは、すなわち読者に直接会いに行くことである。そこで読者と接し、彼らの視点を内に取り込む。すると著者の意識が変わり、本当に読者を意識した文章を書くようになる。米光氏によれば、イベントを開催した時点から受講者達は「覚醒する」。

斬新な手法に驚いたが、とても理にかなっていると思った。
同時に、まさしくこれはソリューションジャーナリズムの手法と思い至った。

ソリューションジャーナリズムとは、課題解決型の報道の一種である。社会の問題を明らかにするという旧来のジャーナリズムの役割を超え、課題解決に向けた道筋までを報じていく動きを指す。日本では西日本新聞や、同紙から派生した「ジャーナリズム・オンデマンド」(JOD)などの取り組みが知られる。SNSや問い合わせフォームを活用し、市民から直接疑問や要望を受け付ける。それに基づき取材を行い、報道という形で還元する。

この報道のあり方を知ったのは、緊急事態宣言のさなかだった。
全国の学校に休校が要請され、教育現場を伝える報道はおしなべて暗いトーンになった。ジャーナリズムの役割は社会の問題点を明らかにすることだ、という旧来からの考え方がある。この信念は、報道関係者の中にこそ根強い。それゆえコロナ禍のような特殊状況下では、ネガティブな報道が社会を席巻しがちになる。私は教育ライターとして目指すべき方向性に迷いを感じていた。そんな中で出会ったのが、ソリューションジャーナリズムだった。

調べる中で米国の「ソリューションジャーナリズム・ネットワーク」という団体と出会った。ソリューションジャーナリズムを世界的に牽引する団体だ。同団体が主催する基礎研修を受講した。そこで得た最も重要な教訓の一つが、読者に会いに行くということだった。取材対象はもちろんだが、まず何よりも読者に会いに行く。彼らの声を吸収する。そこがスタート地点となる。

読者向けのイベントを企画する。これはまさしくソリューションジャーナリズムの実践である。編集ライティング講座の門を叩いたら、思わぬ形でソリューションジャーナリストとしての一歩を踏み出すこととなった。

何よりもまず先に読者の元へ飛んでいく。それが私の目指すライター像だ。

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