若者たちの夢が、新たな未来を照らすとき
この8月、私は日本で開催された『にもオーケストラ・オイリュトミー公演』に観客としてその壮麗な舞台を心から楽しむ機会を得ました。日本のオイリュトミストたちが心を一つにして実現させた、まさに夢のような公演でした。このプロジェクトを立ち上げたのは、スプリングバレーの先輩であり親しくお付き合いくださっている小林裕子さん。その実現に向けての非常な努力の過程を知っているだけに、その感動はひとしおでした。
さらに嬉しかったのは、この公演の話を台湾でしていたところ、私の教え子が親子でわざわざ日本まで観に来てくれたことです。彼らは交響曲ドヴォルザークの『新世界』を、東京で目に焼き付けてくれました。
その教え子の娘さんは、現在、私が教えている照海シュタイナー学校の高校三年生です。彼女とクラスメイトたちに、2年前からオイリュトミーを教え続け、成長を見守ってきました。彼らは音楽に対してとても意欲的で、情熱と夢に溢れた素晴らしい若者たちです。昨年はベートーヴェンの作品で素晴らしい公演を披露してくれました。
ところが、今回の日本公演で「新世界」に感銘を受けた彼女がクラスに戻り、その感動をクラスメイトたちに伝えたことで、新しい波が生まれました。彼らは卒業公演で、ドヴォルザークの『新世界』でオイリュトミーをしたいと希望してきたのです。
もともとクラスメイトとオイリュトミーで大きな作品を仕上げたいとの希望していた彼らは、その夢を叶えるため、彼らは自ら学校に働きかけ、本来半年で終了する予定だったオイリュトミークラスを1年に延長してもらいました。生徒たちの強い意志と行動力に、私は深く感銘を受け、彼らの情熱に応えるべく、私も新たな決意を固めました。
オーケストラオイリュトミーは非常な大曲です。
オイリュトミーを20数年続けて経験を積ませていただいた今でも尻込みしてしまいそうな、大きな山です。
幸いなことに、私は過去に2度、新世界の第1楽章を舞台で演じた経験がありました。最初は2008年、スイスのドルナッハでフルートの役を、2回目は2012年、スプリングバレーでヴァイオリンの役を担当しました。この経験が、今の若者たちに伝える手助けとなっていることは、本当に感謝すべきことです。以前、記事で「浴びる学び・探す学び」という言葉を書きましたが、それを超えて「自らの中で熟成し、命を与え他者に伝える学び」が今、形となっています。
https://note.com/shiori_itagaki_/n/n12210d7345fc
もちろん、オーケストラを雇うことはできませんが、ピアノ伴奏で練習を重ねています。高校生たちは自らを木管、弦楽器、金管、打楽器のセクションに分け、対話しながら作品を創り上げています。シュタイナーの思想に基づくと、オーケストラは一人の人間の象徴です。木管は頭部、弦楽器は胸部、金管と打楽器は四肢を表し、指揮者がその人間の「自我」を導いているのです。この哲学的な理解を基に、彼らと共に作品を作り上げていく過程は、私自身にとっても大きな学びの時間です。
先日は老人ホームでお年寄りたちとオイリュトミーを楽しみ、今日は若者たちと時間を過ごしました。どちらもかけがえのない時間で、こうして年齢や背景を問わずオイリュトミーの魅力を伝えられること、人の可能性を引き出せることに心から感謝しています。生徒たちが自分の夢を追い続ける姿を見ていると、私もまた新たな挑戦に向けての力をもらいます。
オーケストラーオイリュトミーを指導することは、私にとっても大きなチャレンジです。しかし、過去に指導いただいた先生方の教えと、これまでに積み重ねてきた経験、そして目の前の若者たちの情熱が、私を支えてくれています。
また、「新世界」は夫が過去に所属していた東京交響楽団がニューイヤーに上演する曲であり、彼からも喜んで手伝うよ!と言ってもらえています、
これからも、私は生徒さんたちに最高の芸術体験を提供できるよう学び続け、共に夢を追いかけ続けます。彼らと過ごすこの時間は、私にとってもかけがえのないものであり、未来へとつながる大切な学びの時間です。
私とオイリュトミーで関わるすべての人が、その命を輝かせ、オイリュトミーが彼らの人生を豊かに彩り続けますように。