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東樹 詩織 / Shiori Toju
2016年11月25日 12:51
帰り道、バスの窓から小料理屋のほの明るい磨りガラスを見た。小さな店だけれど、夜な夜な常連客が集まってお酒を飲み交わすのだろう。小料理屋の前を、腕を組んだ男女が通りすぎるのを見た。親しげに顔を寄せ合って笑っている。寂れた町のあちらこちらに、両手にあまるほどの幸せが転がっている。それは、蛍光灯が鈍く光る車内でがたがたと揺られている私の腕の中にはないものだ。胸の奥をぎゅっと掴まれた気がして、