見出し画像

刻字入門 野那歩ノ吊リ橋編①

書ノ分野ト刻字

書と一口に言ってもその中にはいくつか分野があります。
①漢字 
そのまま漢字・漢文(詩・散文)を題材に製作した作品群です。篆書・隷書・草書・行書・楷書といった書体や書風を工夫して表現します。
「書道」といって一番想像しやすい分野かもしれません。中国で漢字が生まれ様々な事象を書くことからはじまった漢字は書の原点であり、また現在においても基礎から書道を始めると、まずここを通ります。
②かな
小倉百人一首などでよくみかける和歌のつづき文字をイメージして下さい。
和歌や、俳句など美しい日本語を、かな文字で日本特有の美しい流線をつかい表現します。紙も和の趣のある美しい料紙が多く使われます。
③漢字かな交じり(近代詩文)
相田みつを先生の書をイメージして下さい。
現代文(日本語)を漢字とかなの調和をはかりながら表現します。
書の歴史としては新しいですが、読める・読みやすい書体で書かれることが多いので、漢字やかなに比べ親しみやすく、人気が拡大しています。
④篆刻
いわゆるハンコです。主に中国古代の漢字である篆書、世界史で出てくる甲骨文や金文などを印材(石)に刻し、印(判子)を制作します。
篆刻作品としては、7.5cm角ほどの大きな石材を刻し、その世界観を表現しますが、実用的な判子のようなものから、漢字・かな・漢字仮名交じり作品の落款印なども刻します。書の歴史と文字のデザイン性、一字一字の融合美を考えながらの制作は大変奥深いものです。
⑤前衛書
文字の可読性を超えた、前衛的で抽象的な書の世界です。素材が「文字」であるということに縛られすぎない自由なフリースタイル書道です。
⑥刻字
文字を刻み付けること、その多くは木に刻みます。
看板などでも見かけたりしますね。木を彫って文字を浮かび上がらせたり掘り込んだりして立体表現するとともに、

彩色したりもします。

と、大まかにこういった分野があるわけですが、どれか一つに特化している方、書全般を様々楽しんでおられる方、人それぞれです。概ね何か一つを専門的に勉強され、その他も時折楽しむという方がほとんどかなと思います。

私は、篆刻寄りの雑食です、、、笑

さて今回のテーマは⑥刻字
聞きなれない言葉ではありますが、考えてみれば、甲骨文も亀の甲羅に占いの結果を刻したものですから刻字。そのほか、中国古代には木や石、金に文字が刻され、現存しているものの歴史としては筆よりずっと古いわけです。
もう少し時代が下ると、字の上手い人が字を書き、彫刻の上手い人が刻すという分業で行われ、一人で全てを完成させることはほとんどありません。
現在の書の世界においても、書の構成から刻すまでを一人で完成させる刻字は、かなりの少数派ではありますが、いかんせん私、雑食ですから、なんでもします笑

ということで、ご依頼いただきました看板の制作レポートを中心に、刻字入門として記していきたいと思います。

刻字ニ使ウ木材

画像1

シナ・ヒノキ・ケヤキ
などが比較的扱いやすい木材になります。
柔らかすぎても、かたすぎても難しい、、、
ちなみに、安価で手に入りやすい杉は柔らかいのでかなり難しいです。

今回はこの看板を設置する現地の木材を使用することになり、
調達していただきました。
木の性質については勉強不足なので偉そうなことは言えませんが、現地で使用するものは現地のもの(地産地消?)が、加工後も気候になじみ、木が新しい形で生きやすいような気がします笑
今回は写真の3枚を同時進行で、、、、
真ん中の1枚は古木ですが、古さを生かしたまま制作の予定です。

書体・文字構成ヲ考エル

画像2

ま、だいたいあっという間にこんな感じになります(笑)
とにかく「あーでもない」「こーでもない」と創意工夫しながら延々書き続けます。

画像3

実際木に貼って、
自分の字を自分で朱を使ってなおしたり、、、、
近くで見てみたり遠くで見てみたり、、、、
看板となると、見る人は大抵が看板からある程度の距離をとって見るので、文字の位置やデザインは、距離をとって確認することがとても大切です。
とにかく、この書を決めることが全体の出来栄えをうらなう最も大事なところなので、いろんな角度から見て、納得いくまで文字を調整します。
日をまたいで確認することも大事!

夜中に「天才かも!」と思って書いていたものが、朝起きて見てみたらとんでもなかった、、、ということが稀にあります。まぁ、だいたいお酒はいったとき、、、、、

よし、これだ!と思う書が仕上がって、思い残すこともなくなったら次の工程に進みます。

つづく

最後までお読みいただきありがとうございます。サポートいただきましたご厚意はキッズ書道パフォーマンス育成に使わせていただきます。