for serendipity1202「自前の思想」
岡本裕一朗さんの『教養として学んでおきたい現代哲学者10人』(2022)、10人の1人として紹介されている吉本隆明さんの章より。
重要なのはこれらの本が、彼自身が考える自前の思想であるということです。吉本はしばしば、今の研究者や学者がやっていることは、外国の文献を日本語に翻訳し紹介するだけの、いわば輸入業者に過ぎないと言って批判します。具体的な目の前にある自分たちの現実を、自分の分析によって解明し、自分たちの言葉で表現することを怠っていると考えていました。
それに対して吉本は、自分自身の言葉で、自分自身の経験に基づき、日本語で書かれた文献を中心に、自分の分析で解明していくというスタイルを貫きました。つまり、外国からの借り物の視点、あるいはそれを翻訳するというスタイルではなく、自分自身における分析に基づいて、目の前の現実を明らかにしていくスタイルを取ったのです。(202~203p)