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産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 あやめ語り 3
コンビニの裏口付近。
おばちゃんが出て来るのを待っていたら行儀の悪そうな同世代の豚男が煙草を吸いながら近づいてきた。
『あれ?お前さぁ、今日ゲーセンで女王とか言われてなかったか?』
「…。」
『シカトですかぁ~~??』
あたしは学生カバンを強く抱きしめた。
『おチビちゃ~~~ん!君賞金貰ってたよね?今日たんまりお金持ってるよね??』
3人くらい集まって来た。
どうしよう…おばちゃん早く出て来て!
『喋れねーのかよ!この女!睨んでんじゃねぇぞ!クソが!蹴り飛ばすぞ!』
と、言うのと同時に豚男に上半身を蹴られて学生鞄が飛んで行って小銭が散らばった。
あたしは急いで転がった小銭を取ろうとしてもがいていた。
『あれれ?ここに入ってんのぉ~?あ~らいっぱい持ってんじゃん!いい子はお金のない僕らに募金するものですよ~?じゃ、全部俺らの募金ってことで。またゲーセンで大会してたら俺らの為に出ろよな。な?』
「あ…あ…。」
あたしは自分が吐いた吐瀉物の先に散らばったカバンの中身をはいつくばって片づけながらお金が少しでも残ってないか確認したけど出て来たのは10円だった。プリカも現金も取られてしまった。
しばらくするとおばちゃんが出て来た。
『どうしたの!?あやめちゃん!吐いてるじゃないの!?大丈夫?誰かに乱暴されたの!?』
「おばちゃん…そんなのいいの…おばちゃん…お金もプリカもお弁当も全部取られたよぅ…お財布買っとけばよかった…あぁん…」
あたしは泣いてしまった。
おばちゃんと一緒に買い物に行こうと思ってたのに…
「うぅぅ…」
『…もしかしたら…ゲームセンターからあやめちゃんの事つけてたんじゃないの?あの不良たち!それで私達の会話聞いてあやめちゃんが裏で待ってるの知って違うグループが店の中でわざと私に商品探させたりしてたんだわ!妙に店の中で色んなこと聞きまくると思ってたら…。ごめんなさいね。私が気付いてあげれなくて…痛かったでしょ?事務所で待たせてたらよかった…ゴメンねあやめちゃん。』
「おばちゃんは悪くないよ…でも…」
『とりあえず帰りましょ。すごく汚れてるしお風呂に早く入って洗濯しましょ!それからお金取られたんだから警察に届けましょ?ね?お風呂より夕飯が先の方がいい?』
ショックでこの先を覚えてない。何を話したかどうやって帰ったか。何を食べたか。お風呂に入ったかすら。
警察…
「おばちゃん?あたし警察行くの怖いしもういい…。あたし多目的トイレで寝起きしててお巡りさんに注意されたことあるし。ヤだぁ…。」
『そんなことしてたの?コンビニに来てくれればどうにかしてあげれたのに…』
「おばちゃんに迷惑かけたくなくて…」
『この子ったら…加奈子に爪の垢煎じて飲ませたいくらいだわ!偉そうだし図々しいし!あ…噂をしたら玄関から物音が…』
「ただいま~!私バイトでヘトヘト~何?おかず超ハズレじゃーん!いらない!あれ?あやめちゃん来てたの?久しぶりね。ママのしょーもない長話の相手してやって!」
『加奈子!本当に食べないの!?あやめちゃんと一緒に作ったのに!』
「え?じゃあ部屋まで持って来て~」
『ね?偉そうでしょ?酷いでしょ?よし、あやめちゃん、加奈子の部屋におかず持って行って!私だと偉そうだから。』
「え!?」
どうしよう…お姉ちゃんちょっと苦手…
おかずをトレーに入れてお姉ちゃんの部屋に入った。
「あ…あの…夕飯の…お…お…おか…ず…」
『え!?なんであやめちゃんが部屋に!?』
「あの…とて…も…おいしかった…ので…食べれると…思う…」
すごく静かな間がとても長く感じた。
『ねぇ?あやめちゃんっていつもそんな話し方なの?ママとは普通に喋ってるよね?恥ずかしいの?』
「あ…あの……怖…ぁ…ん…ごめ…なさぃ…お邪魔…しました!」
耐えれなくなって部屋から出てしまった。せっかく話しかけてくれたのに。そう…あたしは全てにおいて自信がなくて喋るのも苦手だし声も小さい。『え!?』って聞き返されると怖くて返事が出来ない。
だから決まった人としかちゃんと話が出来ない。
だけどゲームで自信がついたから学校に2年ぶりに行っても大丈夫だと思ってた。それなのに全てを失ってしまった。
「おばちゃん夕飯とお風呂ありがとう。あやめ家に帰る。月曜日から学校に行く。」
あたしはおばちゃんにそう告げて自分の住んでいるはずのアパートの部屋の鍵を開けたらタカヤとあの女が裸で寝ていた。いやらしい。
パンツを1枚取って気付かれないように家を出て公園の多目的トイレに向かった。ゴミ箱に少女漫画の雑誌が捨ててあったので拾ってベッドに転がって読んだ。
あの人が好き…この人が好き…。
恋愛って何だろう?パパの事を好きなのとはもっと違う何かみたい。
暴力を振るわれるのが怖くてドキドキした経験はしたけど
素敵すぎて頬が赤くなってドキドキする経験ってどんな感じなんだろう?
少女漫画って面白いんだ。
また捨ててたらいいのに。
楽しそうな学園生活、漫画の中でくらいあたしが体験してもいいよね?
多目的トイレにいると時々お巡りさんに補導されそうになるからいいころ合いの時間に潜り込むようにしている。
日曜日、昼に出て来て公園の端の方で昨日の少女雑誌を繰り返し読んで過ごして夕方からまた多目的トイレに。
公園に出ると補導されるのでトイレの手洗い場で水を飲んで眠りについた。
明日は月曜日…。