産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 中学生活 1

吉澤家では水着の事で一騒動があって。
龍一はあやめに言い過ぎたので謝罪した。あやめは何も思っていなかったので何で謝罪されたかわかってなかった。

そして遂に隣隣接中学に登校する日がやって来た。

朝、制服に着替えてからみんなで朝食を摂っていると龍一があやめの姿を見て小言を言い出した。
『あやめ制服のスカート短くねぇか?』

「お母さんがこのくらいが可愛いって…。」

『母さんが短くしたの?』

『だって可愛いでしょ?この丈』
彩菜は悪びれもなく答える。

『ざっけんなよ!パンツが見えそうじゃん!見えたらどうすんだよ!』

『見えないわよ!あやめちゃん足癖悪くないし。大体アンタは何目線でもの言ってるのよ?』
彩菜は校則が厳しかった学校に通っていたのであやめの学校の校則が緩いと聞いたので可愛く見える様にしたかったのだ。

『そのハイソックスは?学校指定なの?』
今度はソックスにまで口を出した。

「ん?学校指定じゃないけどお母さんが買ってくれたから。」

『前の制服の時ニーハイ履いてたじゃん?ニーハイダメじゃないんでしょ?』

『ま~た偏ったファッションチェックが始まったよ。ハイソックスでいいじゃん。ニーハイの方が絶対領域あるからエロいと思うんだけど~。』
蓮二が笑う。

『黙れ!蓮二!』

「リュウはニーハイの方が可愛いと思うの?」

『可愛いより生脚の面積が狭いからあっちの方がいい』
パンを食べながらもごもご喋る。

「リュウがニーハイの方がいいって言うならそうする!」
会話も噛み合ってないし理由もわかっていなかったが龍一の好みに合わせたかったからニーハイに変える事にした。

『細かい男は女の子に嫌われるわよ?』
彩菜はうるさい龍一に一言助言しといた。

龍一、蓮二、明菜、秋乃は学校が遠いので先に学校に出た。

しばらくして彩菜があやめを車に乗せて隣隣接中学に送って行く。送迎用にわざわざ目立たない軽四ワゴンを購入したのだ。

『朝から龍一うるさいわねぇ!』

「そう?」

『生活指導の先生か!って思っちゃったわ』

「あ~お母さん!緊張して来た!」

『大丈夫!強面兄さん達の前で何回も練習ししたんだから何処でも挨拶は出来るわ!』

車中で話していたら20分後に学校に着いた。

『さぁ私はここまでよ。5時間頑張ってね!』

「うん…頑張る…」
緊張しながら職員室に向かうあやめ。
職員室の前でドオドしていたら担任の先生の方から寄って来た。

『1年A組の担任白石です。』
20代後半の若い女性教師だ。

「四ノ宮あやめです。」
あやめは挨拶をした。
そこから白石と一緒に教室まで着いて行った。とりあえず廊下で待っているように言われたので待機していた。
白石は教室のドアを開けて挨拶を始めた。

『静かに!転校生の紹介よ!今日から新しい生徒が仲間になります!』

教室がザワザワし始めた。白石が教室のドアを開けたら益々ザワザワした。
入って来るように合図されたのであやめが教壇に上がると白石が黒板に「四ノ宮あやめ」と名前を書いた。あやめは挨拶を家で何度も練習していたので

「四ノ宮あやめです。3年間よろしくお願いします!」
と大きな声で言う事が出来た。
強面兄さんとの練習がかなり効果があったようだ。

『可愛い!』と女の子の声や拍手やらあちこちから色々聞こえて恥ずかしくなったけど頭を上げて照れくさくて前髪を横に長しながら顔を少し隠すような仕草をした。

白石に席を促され座った時隣席の女の子が
『私、清水っていうの!よろしくね!四ノ宮さんすっごい可愛い。後で話しようね!』

「あ…うん…。」
同年代の女の子に話しかけられたのは不良時代以来だった。

ホームルームも終わり1時間目の間の時間にあやめの席に女の子が集団で集まって来て
『どこから来たの?』
『芸能人は誰が好き?』
『何が趣味?』
質問の嵐に困惑していると1時間目の国語の先生が教室に入って来た。

『こらー。お前らは顔見知りばっかりだけど転校生は30人の中に1人入れられて誰が誰だかわからんのに集団でワーワー言われたら怖いだろうが。お前らも同じ事されたら嫌だろう?徐々に慣れて来るんだから騒がない!わかったか?』

『はーい』
『ごめんね。四ノ宮さん。』
集まって来た女の子の1人がそう言って去って行った。

国語は既に龍一に教わったところだったから授業についていけた。
国語が終わった後の休み時間はあやめの周りに来た子は流石に人数が減っていたが隣のクラスの子が教室を覗いて
『えー!転校生めっちゃ可愛い!』
という声がする。

(褒められるのは嬉しいけど…見られるってやだなぁ…)

転校生フィーバーが起きていた。
ほんの一時の事だけど恥ずかしがり屋のあやめにとっては中々に辛い時間であった。
(全員あの強面のお兄さんだと思えば大丈夫!)確かにそれは気にならない。

昼食は給食だった。
クラス人数30人で男子12人女子18人という編成なので男子は男子だけで固まって女子は女子グループで食事を摂る。班は決まってない。あやめは最初に声をかけて来た清水のグループ3人と一緒に食事をした。
何を話せばいいのかわからなくて殆どあやめからは喋っていないけど質問には答えていた。

昼食が終わり昼休憩が終わったら家では大問題の水泳の時間だった。
初日からプールに入れるのを喜んでいたあやめだったが家では前日初日からプールがあるだけで龍一がまた騒いでいた事を少し思い出してちょっと笑ってしまったあやめ。

『どうかしたの?』
清水が聞いて来た。

「プールの授業って男女合同でするのかな?家で話題になってたからちょっと思い出して。」

『プールの時間は隣のクラスの女子と一緒に受けるの。男子は体育館でなんかやってる。交互にやってるから男子と一緒にプールは入らないよ!』

「そうなんだ!」

龍一の取り越し苦労であった。

『四ノ宮さんも今から更衣室行こう!』
清水以外の子に声をかけられた。
悪いかな?と思ったけど声をかけられて無視する訳にもいかない。
ただの転校生フィーバーなので初日は仕方ない。

『あたし香川!よろしくね!清水とも仲いいんだよ!』

「うん。よろしく。」
更衣室で水着に着替えた。
「香川さん、この学校のスクール水着可愛いよね!」

『そう!私ぽっちゃりだから体型わかりにくいこの水着好き…ってか四ノ宮さん胸おっきい!』
香川が大きな声で言うのでみんなが集まって来た。

『うわぁ!いいなぁ!羨ましい!』

あやめは恥ずかしくなってとっさに胸を手で隠した。
でも蓮二が堂々とした方がいいと言ってたのを思い出して手で隠すのはやめた。

「香川さんもおっきいよ?」

『やだぁ!あたしのはおっきいんじゃなくてぽっちゃり!あはは!』

あやめにしたら3年振りくらいのプール。
ちゃんと泳げないからバタ足で5mで立ってはまた泳いでの繰り返しで25m泳いだ。

その後はプールでの自由時間だったのでみんな遊んでいたがあやめはプールの端っこでバタ足の練習をしていた。楽しい水泳の時間はあっという間に終わってしまった。蒸し暑い更衣室で着替えて髪も乾いていない間に終わりのホームルームが始まって下校時間となった。

『四ノ宮さん一緒に帰ろう?家はどの辺り?』
香川と清水と須藤と園田に声をかけられたが

「あ…あたし毎日お母さんが車で迎えに来るんだ…ごめんね」
と謝った。

『お母さんが迎えに来るの?四ノ宮さんってお嬢様?』

「え?普通だよ?もうすぐお母さんが来るからまたね!」

あやめは早く彩菜に会って学校の話がしたかったので駐車場に向かって行った。車がまだ来ていない。10分ほど待っていると彩菜が迎えに来た。

『ごめんね!ちょっと遅くなっちゃった!どうだった今日?』

あやめはすぐ車に乗り込んだ。

「一度に沢山話しかけられて最初はちょっと怖かった。でも楽しかった!挨拶はお兄さんたちの前でいっぱい練習したから大丈夫だったよ!」
無邪気にはしゃいでいる様子を見た彩菜はホッとした。

あやめは家についてから部屋に戻って私服に着替えてキッチンで彩菜と話をしながら家事の手伝いをしていたら龍一と蓮二が帰って来た。
龍一は制服のまま台所に来てあやめに近づいて行った。

『水泳の時間は男女合同だったのか!?』
大きな声で尋ねた。

『何があったか聞くより水泳の時間の話が先かよ!』
蓮二が自室の前でツッコミながら笑う。

『当たり前だろ!気になるだろ!俺は共学に行ったことないんだから!』
そう言えば龍一と蓮二は小中高の一貫の男子校だった。

あやめは2クラスの女子が合同で水泳の授業をした話を龍一に話した。

「次は男子が水泳で女子は体育館で別の授業受けるんだって。」

『じゃあ男子と水着姿で会わないんだな!』
ホッとする龍一。

「うん。何でそんなに嬉しそうなの?」

『男にあやめの水着姿を見られたくないからな!』

「リュウ散々あやめのスクール水着の姿見て蓮二と何か言ってたのに?」

『俺と蓮二は別!見てもいいの!あ!誰か知らない男に声かけられたりしなかっただろうな?』

「女の子とは話したけど男子とは全然しゃべってないよ?」

『龍一!アンタさっきから何目線で喋ってるの?さっさと着替えて来なさい!』
彩菜は龍一が何をごちゃごちゃ言っているのか全くわかってなかった。

これ以上この場に居たら彩菜にまた裏拳か締め技でもお見舞いされそうなので龍一は部屋で私服に着替えてからキッチンへ戻って来た。

『なぁ、あやめ…学校の授業どうだった?』
龍一がまともな質問をしていたので彩菜は安心した。

「今日ね、国語と算数と社会と音楽と体育だったのね。音楽は全然わかんなかったけど他は教わったところだったから大丈夫だった!」
あやめは自分が知っているところが授業に出て来たことが嬉しかったようだ。

『算数じゃなくて数学な!5科目はわからない事があったら俺でも蓮二でも聞いてくれればいいよ。音楽や家庭科や体育や美術の授業は自力でがんばれ!』

「うん。もうすぐ期末テストがあるんだって。なぁに?期末って?」

『1学期の終わりのテストの事だよ。学期末にあるから期末テストって言うんだ。ってか学校入ってすぐ期末テストかぁ。7月だもんな仕方ないか。テスト終わったらすぐ夏休みだぞ。』

「え!やっと学校に入ったのに…。」

『まぁでも2学期以降通えるんだしいいじゃん!』

「テストかぁ…小学生から受けてないからきっと良くないんだろうなぁ~…」
あやめは少し落ち込んだ。

『じゃあ!あやめちゃん!学年で真ん中くらいだったら夏休みにみんなで海に行きましょ!張り合い出るでしょ!』
彩菜が声をかける。

『毎年行ってんじゃん…』
龍一がボソッとつぶやく。

『それはそれ。これはこれ!』

「うん!あたし海行ったことがないの!がんばる!」
試験勉強に初めて挑むあやめだった。

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