「子育てママが始めたサービス」という謳い文句
タイトルにもあるように、昨今の保育サービスや子育て支援事業には、子育て当事者になった人たちが感じた不安や疑問をもとに始まったものが、たくさんある。
私の住んでいる地域にも、ママ友のコミュニティーから始まったNPO法人があって、地域の子育て世代に役立つ情報を発信していたりする。学童で働いていると、子どもがいないと知ることもないような事業やサービスを色々と見る機会があるので、自分の世界も少しずつ広がるもんだ。
だけどこの「子育てママが立ち上げた・始めた」の謳い文句が、私はどうやら苦手らしい。
小さい頃から、将来は子どもに関わる仕事がしたいと思っていた。
ひねくれ者の私は、幼稚園の先生や保育士、学校の先生という王道な選択肢は取りたくなく、自分が大好きだった料理を軸にして将来を考えた。
保育園で給食調理員をしながら、ちょっと離れた位置から保育園という環境をずっと見てきた私は、毎日疲弊している先生や保護者という現実を目の当たりにして、子育て環境を少しでも良くできる何かをしたい、という漠然とした目標ができた。
自分がこうした事業をするにあたって、先人たちの知恵を拝借する必要があり、子育てサービスを立ち上げた人たちに話を聞かせてもらった。
そこで誰もが口にしていたのが「自分が子どもを産んでから困ったので、このサービスをはじめた」という言葉。
すごく聞こえはいいし、大変な中で頑張ってるんだなぁと他者からの称賛もあるだろう。
でもそれ絶対違うじゃん。
子どもが好きで、保育士や幼稚園の先生になる人たちがいて、そういう人たちは自分が親になったときにどうするかっていうのも、保育の現場を見ている限り、それなりに考えている人が多かった。
でも世の中で母になる人の大半は、自分が親になるまで子どもは好きだけど、子育て世代を取り巻く環境がどんなものかを想定していない人がほとんどではないだろうか。
子どもが産まれた。育休と産休を取ったけど、保育園が空いてないから仕事に戻れない。だから新しいサービスを作りました。
子どもが産まれた。子育てって本当に大変だし、自分のことに使う時間が作れない。自分の時間を作る方法がない。だから新しいサービスを作りました。
いやなんでそうなる?自分より先に子育てしてる人いっぱいいるのに、なんでそのケースを見ていない?
「あの子、子ども産まれてから会えなくなったよね」
「子どもがいるから、私は遠慮しておくね」
自ら子育てサービスを作った人は、自分が親になる前、周りにこういう友達はいなかったの?私はたくさんいた。私は友達と遊びたかった。だから自分で何が出来るかを考えて、子どもを取り巻く環境について必死に勉強している。つもり。
自分がいつか親になったときに欲しいサービス、と思って考えていたけど、産めない私にとって今考えているものは、結婚して出産した友達と、変わらずにいたいと思う人のために作りたいもの。(根本的に何も変わってない)
だけどこういう事をやりたいって話すと、子育て世代や経験者から「子どもを育てたことがないから、そう言えるんだよ」と言われる。なんで。めちゃ胸糞なんだけど。
当人はきっとそんなつもりないんだろうけど、子育てマウント取られてる気持ちになって、これを言われる度にメンタルがボコボコになっている。
「社会全体での子育てを~」なんて言ってるくせに、いざ未婚子無しが子育て支援をしようとすると、子育て未経験という壁を作られる。そんなんで社会全体での子育てなんて出来るわけないじゃん。
子育て支援をしたい若者や独身者が、子育て世代に線引きされて、やろうと思ったことをやらない、やれない。
結果、子どもを産んで初めて不便に気付いた子育て世代が、線引きされた人たちがやろうとしたことを、忙しい中で立ち上げることになる。
環境は整わないし、疲れるし、めちゃくちゃ悪循環。
いつの時代も子どもは宝。その宝を社会全体で守るためには、子育て経験者と未経験者の間にあるガラスの壁を取り払う必要があるんじゃなかろうか。