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【イラストエッセイ】 鍋

秋の味覚が恋しくなってきた

久しぶりに
野菜と鶏肉をたっぷり煮込んだ
ちゃんこ鍋を作ろうと思い
鍋を出したら
白い白菜みたいな猫が鍋に入って
ミャーと鳴いていた

君の居場所をとって申し訳ないのだけど
返してくれないか

そう思いながら
ツンツンしてみるのだけど
この白菜はちっとも鍋を返そうとしない

確かに
お気に入りの居場所を見つけたら
人間だって
留まっていたいし離れたくなくなる

気持ちはとてもよく分かるんだけど
『ずっとそこにいる』
という事はできないのだよ
と目で訴えてみる

しばらく眺めていたら
何かを悟ったかのように
白菜はぴょんと
またどこかへ行った

『ずっとここに留まる』
ということは
生を持つ者は許されていない

鍋の火加減を調整し
蓋の水滴が内側で滴り落ちていくのを
ぼんやりと眺めながらそんなことを思った

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