読書記録 荒木勇太『在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活』
1、この本に興味をもった理由
新型コロナウィルスの流行によって、学校は長期休業になり、未だに春休みのまま、新年度の授業を始めることができない状況になっている。
さて、専業非常勤講師大家と名乗っている以上、講師業を生業にしていることは、読者の皆様は、ご存知だと思います。
私はある私立大学・高等学校(それぞれ別の学校法人)にて非常勤講師をしている。
ふと、自分の人生を考えた時、大学の教授になるか、路頭に迷っていくのかと、二択で考えてしまうことが多い。
理系の研究者であれば、企業の開発部門に所属する手段がある。
しかし、文系の研究者には、その選択肢はない。
現に、優秀な若手研究者であっても、専業非常勤をつづけて、体を壊したり、精神を病んだりする者は多い。自殺する者さえいる。
では、自分はどのように研究する時間をつくっているのか、生きていくのかと考えた結果、大家になって不動産収入を得て、非常勤講師をつづけることで、生き残る方法を思いついた。
すでに在野研究者として生きている人たちがいる。彼らはどのように研究活動を行っているのか、その先学の英知を知るために、この本を読むことにした。
2、押さえてきたいポイント
・研究資金は生活費の中から捻出することになるが、サントリー財団の助成を受けることもできるので、自分の研究分野に該当する助成の情報を知っておくことが必要である。
・仕事の中で知的冒険をする習慣をみにつける。
・就職し収入があるため、生活の安定している。よって、研究実績の数・スピードを気にせず、失敗のリスクが、高い研究にチャレンジできる。
・趣味だから業績を求めなくてよいため、成果主義に精神を病む必要がなくなる。
・読書中心の研究は一人でやる活動だからこそ、在野でできる。
・研究だけでなく、体力づくりをすることで、仕事で摩耗することなく研究活動ができる。
・専任教員に比べて、貸出冊数・貴重本の閲覧など図書館の利用の制約を受けることがある。
・定年後に大学院に入学した社会人院生は、一定の結論に導くことを優先して、論の整合性を重視しないことがある。
・価値観と方法を自由に設定できる人間が在野向きである。大学に属することで、俗なテーマは研究できない。
・インターネットのオープンアクセス活用することで、論文は入手できる。
・ウェブサイトを作成し、誰も手をつけていない隙間をうめる研究を行うことで、評価を得て、大学研究者からの問い合わせがくることがある。
・検証しようのない自説を唱えて、正しく語る罠に落ちることがある。それを避けるために、研究者と交流する必要がある。
・SNSに発信することで、読者から間違えを指摘したり、探せなかった情報を教えてもらえることがある。
・成功を目的に行わない生活ができる。
・自分の楽しさの追究する研究ができる。
・好きの力で続けることができる。
・才能と収入は別であることを心に刻んでおく。
・研究内容と時間を記録することで、自分が研究生活を見える化する。
・自分のできることを見極める。
・優先権と独創性を失わない。特に先行研究を見落とさなかったり、交流を図り、情報管理を行い剽窃被害を避けたるする努力を行う。
・オンラインの検索を生かして、低コストの研究を行うことができる。
・引用の資料をコピーし、順番通りに束ね照合し、書誌情報の間違えを確認する。
・音読をすることで、校正箇所が見つかりやすい。
・在野は研究教育機関に就職できなかったかわいそうな存在として、腫物のように扱われることがある。
・学会の司会者は門外漢に的外れな質問をされることを懸念している。
・市民だけでなく、専業非常勤講師などが質疑に参加することを学会では想定してない
・同じ大学内でも研究分野の異なる者同士の間では、学問上の相互理解の欠けていることがある。
・地域おこし協力隊に入隊し、研究と合わせた町おこしプロジェクトを企画する。
・地域創生と学問の融合はできる
・若手研究者の支援のための賞金は、刊行ずみの論文も審査対象と可とすると応募しやすい
・講演などの地域住民へのメリットが生まれる。