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【全16話・完結】蜘蛛の手を掴む

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立木陵介の妻、菜緒が失踪した。誘拐されているかもしれない。おそらく殺されている、菜緒を誘拐した方が。 菜緒は、日本国・諜報部・武威裁定Q課、通称ブサイクに所属する捜査員。あらゆ…
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記事一覧

【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第十六話・エピローグ>

エピローグ:武威裁定Q課って 実谷は後処理に追われていた。 「ちょっと、音丸・明日彌、手伝…

塩かげん
3か月前
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【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第十五話・最終話>

菜緒が掴んだ手 菜緒の手刀は呪現言語により硬質化した。菜緒と俊也の距離は二メートル、ツー…

塩かげん
3か月前
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【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第十四話>

千堂寺穣一の生きる道 立木陵介の父、俊也は新興宗教・九十九呪現の創設者。九十九の語呂から…

塩かげん
4か月前
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【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第十三話>

立木陵介のプロポーズ 菜緒が瞬間移動した先にいたのは、横たわる立木陵介。舌がねじれ、声が…

塩かげん
4か月前
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【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第十二話>

もう一人の立木陵介  菜緒は施設で育った、五歳のころ、両親が謎の死を遂げた。二人とも脳溢…

塩かげん
4か月前
9

【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第十一話>

大儀見鷲子の電話とヒラカタの真相 音丸は着信をうまく取れない。両手が左手に、しかもどちら…

塩かげん
4か月前
15

【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第十話>

『ザ・フライ』の呪い  明らかに海水、しょっぱい水だ。音丸はふ頭管理事務所から、そばの海へと瞬間移動していた。    音丸が放った瞬間移動の呪現言語は、一度身体を分解し、所定の場所まで跳ね飛ばす。その後、元の記憶に従って再構成。音丸でさえ試したことのない初めての呪現言語だった。    父親が映画好きだった分、昔の映画はよく観ている。『ザ・フライ』、科学者のセスが物質転送装置を発明する。転送装置の中に紛れ込んだ一匹のハエ。転送前に身体情報が分解され、転送先で再構成される。ハエと

【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第九話>

立木陵介の予約 窓の外からまっすぐに淀みなく、一直線に傘が飛ぶ。傘は的確に獲物を捕らえて…

塩かげん
5か月前
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【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第八話>

目覚めていた音丸慎吾 嵯京湾・海浜倉庫五十二区画の管理室の手前、10トントラックが行きかう…

塩かげん
5か月前
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【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第七話>

特別潜入捜査員、実谷重綱の耳 死んだ男の世話に忙しい女が二人。男は呪現言語師だったことは…

塩かげん
6か月前
15

【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第六話>

音丸慎吾の尻ぬぐい 音丸と二人、菜緒は三角ラトイと泉岳イミズの行方を捜した。当てはないが…

塩かげん
6か月前
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【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第五話>

アイスクリームとラクトアイスの違い クーラーが必要以上に効いた部屋で、菜緒は二個目のアイ…

塩かげん
6か月前
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【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第四話>

千堂寺譲一は見逃さない「ここにいたのは、全員呪現言語師ですか?」 「ひとりか、ふたりか、…

塩かげん
7か月前
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【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第三話>

 澤登高一郎の舌先三寸※描写の中に一部残酷な表現があります。  菜緒は、無言で澤登が拘束されているベッドに向かってゆっくりと歩いて行った。風が吹いていない、閉ざされた空間のはずが、菜緒が通ると風がふわっと吹き抜ける。長い髪がなびく。澤登は菜緒をじっと見ていた。次に殺すなら、こんな女がいい、澤登は自分の底から湧き上がる欲求に我を忘れていた。  菜緒は澤登の右側に立った、明日彌は左側。 「先輩、どうして」 「だって、アスミン、殺しちゃうでしょ。コイツ」 「かもしれないけど」