【連載小説】蜘蛛の手を掴む<第三話>
澤登高一郎の舌先三寸※描写の中に一部残酷な表現があります。
菜緒は、無言で澤登が拘束されているベッドに向かってゆっくりと歩いて行った。風が吹いていない、閉ざされた空間のはずが、菜緒が通ると風がふわっと吹き抜ける。長い髪がなびく。澤登は菜緒をじっと見ていた。次に殺すなら、こんな女がいい、澤登は自分の底から湧き上がる欲求に我を忘れていた。
菜緒は澤登の右側に立った、明日彌は左側。
「先輩、どうして」
「だって、アスミン、殺しちゃうでしょ。コイツ」
「かもしれないけど」