幽刃の軌跡 #34
第34話 平場宮殿での緊迫した会議
王都、平場宮殿の会議室は重い空気に包まれていた。平場王こと平政丸が玉座に座り、目の前に平真男と藤原真彦が深刻な表情で向かい合っている。誠範隊長の暗殺という重大な事件を前に、平場国の命運が揺らいでいた。
「この度の事件について、各自調査内容を報告せよ」と、平場王が重々しい声で命じた。
真男が先に口を開いた。「はい、俺からお伝えします。各隊員から聴取したところ、八番隊長の平誠範については、九国との繋がりが深いことが確認されています。我々が九国との関係性を疑っていることがどこからか漏れ、それが誠範の暗殺につながった可能性が高い。また、その暗殺には隣地配備隊の七番隊が関わっているという話も……ないわけではありません。」
次に、藤原真彦が報告を続けた。「こちらの情報では、この暗殺事件は平場国内でのものではないかという見方が強いです。平誠範自身、隊内で九国との関わりを調査していたようですが、八番隊内では特に不穏な動きは確認されていません。」
この報告を受けた瞬間、真男が苛立ちを隠せなかった。「真彦、お前は何も分かっていないな。平家は忠誠心が強い。我々の家系に裏切り者がいるなんて考えられない。九国が何かを企てており、その首謀者は牛若だ!」
藤原真彦は冷静さを保ちながら反論した。「平家の忠誠を疑うつもりはないが、家系の誇りに囚われて周りが見えなくなるのは危険だ。証拠もなしに誰かを犯人と決めつけるのは、あまりに軽率だろう。」
真男は声を荒げた。「何を言うか!俺は真実を見ている!牛若が犯人だ。それに、九国との関係は誰よりも深い!」
真彦も譲らず言い返した。「木を見て森を見ずのような判断は危険だ。現実を見て、冷静に考えるべきだ。証拠を基にしなければ、国を危険にさらすことになる。」
二人の口論は激しさを増していった。ついには平場王が手を挙げ、静かに命じた。「お前たち!落ち着くのじゃ。今は調査を進めるべきではないのか?」
しかし、真男は納得しなかった。「父上、そんな悠長な時間はないのです。誠範が暗殺されたのは重大な問題です。至急、隊長陣を集め、指示を出すべきです!」
「指示とは一体何をするつもりだ?」真彦が鋭い視線を向けた。
「決まっているだろう……犯人をあぶり出すんだよ!」と真男は勢いよく言い放つ。
平場王はしばらく考え込んだ後、静かに頷いた。「まあ、真男に一存する。」
真彦は驚きを隠せず、「政丸様まで……」とつぶやく。心の中で「これはまずい……内乱に発展しかねない」と焦りが募っていく。
真男は嬉しそうに言った。「ありがたきお言葉!真彦、見ておれ。俺が正しいことを証明してやる!」
緊迫した空気が会議室を包み、物語はますます不穏な方向へ進んでいく。