幽刃の軌跡 #18
第18話: 逆転への兆し
戦場は、激しい攻防が繰り広げられていた。朱留と竜馬の戦いは互いに霊域を駆使し、一瞬の油断も許さない。一方で、大森、那須、明菜の三者の戦いも、戦場の中心で壮絶な戦いを繰り広げていた。
竜馬と朱留は、互いの霊域を激しくぶつけ合っていたが、その戦いには妙な均衡が保たれていた。竜馬は冷静そのもので、どこか朱留との戦いを楽しむかのように振る舞っている。しかし、その顔に笑みはない。ただ冷徹な眼差しで朱留を見据え、その動きを完璧に捉えていた。
朱留は全力で竜馬に挑むが、その戦いは竜馬にとって「遊び」に過ぎないかのようだった。竜馬の霊域は寸分の隙もなく朱留を封じ込め、圧倒的な力を誇示している。
一方で、大森は那須と明菜を相手に圧倒的な防御力で立ち塞がっていた。那須の「神射一閃」が直撃しても、大森はほぼ無傷。圧倒的な防御力を持つ霊域が、まるで鉄壁のごとく彼を守っていた。
那須は息を切らしながらも、「くそ…鉄壁かよ」と呟き、再び矢を番える。一方、明菜は弁天の楽境で静かに戦況を見守っていた。
「大森の動きが遅くなってる…霊域を使いすぎてるわね。」明菜はその微妙な変化を見逃さなかった。
那須はその言葉に頷き、「よし、今がチャンスだ…奴の防御を突破する!」と叫びながら再び攻撃を仕掛ける。
大森の巨大な拳が地を揺らす中、那須は矢を放ち続け、明菜は冷静にサポートを行う。弁天の力が彼らの動きを支え、次第に大森の動きが鈍くなっていく。
「霊域をがいに使いすぎちゅう…やばいな…」大森は土佐弁で呟き、明らかに霊域の過剰な使用が彼の体に負担をかけ始めている。彼の巨大な霊域は揺らぎ始め、那須と明菜の連携が徐々に効果を発揮し始めた。
「今だ!」那須は叫び、最後の一撃を放つ。その一撃が大森の防御を貫くかに見えたその時、突如として霊域の空気が一変した。
竜馬は、朱留との戦いに一瞬の隙を見せ、遠くから大森の方を見つめた。
「大森ー。ちゃんとせえや。なにしてんや!!」竜馬の冷たい声が響き、大森はその声に反応する。しかし、竜馬は笑いもせず、ただ冷静に戦況を見守っていた。
そして、竜馬は軽くため息をつくと、「あれ出しますか…霊域解放…弐式…憑依。」と低く呟いた。
その瞬間、霊域の空気が一気に張り詰め、周囲の時間が凍りついたかのように静まり返る。竜馬が新たな力を解放する準備を始めたことに、全員がその異様な気配を感じ取った。