幽刃の軌跡 #22
第22話「天狗の意志」
朱留の身体が崩れかけ、意識が薄れた瞬間、心の奥底で交わした天狗との契約が現実のものとなる。朱留の身体がピクリと反応し、空気が一変した。霊域とは異なる、凄まじいエネルギーが身体中に広がり、黒い煙のようなオーラが朱留を覆い始める。
天狗「ククク…これで久しぶりにこの世に出てこれたわ!ようやくこの“シャバ”の空気を味わえる!」
天狗の声は朱留の身体を通じて響き渡り、周囲を包む。霊域の力とは異なる、その圧倒的な存在感に場の空気が一瞬で張り詰めた。
竜馬と那須、明菜、大森の表情が険しくなる。彼らは朱留の異常な変化を肌で感じ取っていた。
竜馬「なんじゃこれは…霊域とは違うぞ!一体なにが起こっとるんじゃ…」
竜馬は不気味なエネルギーに顔をしかめる。彼の周りで緊張感が高まり、那須がエネルギーの膨大さに驚愕している。
那須「このエネルギー…尋常ではありません!霊域のものではない、まさか、これは…」
明菜も冷静にエネルギーを感じ取るが、その禍々しさに眉を寄せる。
明菜「これは霊域ではありません。この禍々しさ…もしかして…」
大森も竜馬に向かって、危険を察知したかのように静かに言葉を漏らす。
大森「竜馬殿…いやな予感がしてなりませんわ…」
場面は変わり、平安軍第一軍が大和国との国境から備前港へ急行している場面へ。平安国第一軍長、源尊。彼もまた、異様なエネルギーの変化を感じ取っていた。
第一軍長補佐「源尊様…このエネルギー、ただ事ではありません。急がなければ、間に合いません…」
源尊は冷静に前方を見据え、苦笑を浮かべる。
源尊「フッ、感じたか…これは厄介な戦になるやもしれん。全軍!!全速前進!!急げ!!」
第一軍は号令とともに、一斉に進軍を加速させた。
再び場面は朱留へと戻る。朱留の身体に天狗のエネルギーが絡みつき、彼の姿が変わっていく。黒いオーラが朱留を覆い、彼の顔に冷酷な笑みが浮かぶ。もはや、朱留は意識の奥底に沈んでおり、代わりに天狗がその身体を支配し始めていた。
天狗「久しぶりのシャバじゃ!!八洲の地の空気はやはり美味い…」
天狗は朱留の口を通じて高笑いをあげ、その声が戦場に響き渡る。
天狗「馬鹿な小僧め…これでわしも復活じゃ!さあ、暴れてやろうか!!」
天狗の狂気に満ちた笑い声が轟き、朱留の身体は完全に天狗の手中にあった。戦場に広がる凄まじい圧力、そして次なる戦いの幕開けが予感される。