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プリセールスによく見られる事象

 幸か不幸かSaaSベンダーの多くは案件に恵まれ、営業やプリセールスが多忙を極める状況になることは多く見られます。そんな中で下記のような事象は起きていないでしょうか?

・案件数に対して要員が不足している
・案件が特定メンバーに偏る
・マネージャーも担当案件を持ってマネジメント業務が出来ない

 これらを解決する特効薬は無いものの、状況改善のために最も重要なのは会社トップの状況理解と営業マネジメントの協力を得ることでしょう。いきなりハイレベルすぎると思われるでしょうが、トップとして会社資源の最適化をどう考えるか(リソースとコスト)と、営業マネジメントとして数字を最大化させる為の最適解は何かをプロセールスのマネジメントと腹を割って話せる環境を作ることが必要です。なぜなら、これらは会社としての市場へのアプローチのやり方にそのものだからです。
 とは言いつつも一つ一つ考えてみることにします。

案件数に対して要員が不足している

 これを考える場合に、本来プリセールスが行うべき対応の範囲外の負荷が掛かっていないかを確認する必要があります。技術的な質問の対応の為、取り敢えず会議に同席して欲しい、目的がはっきりしないデモの準備の依頼(取り敢えずデモを見せて欲しい)、初回訪問への同席などなど、営業段階で行なっておくべきタスクが完了していない段階で案件への参画依頼が増えていないか見直しても良いかも知れません。
 順調にACVが増えていてなお忙しい場合は、もちろん追加の採用を判断するタイミングかも知れませんが、一方で案件の勝率が下がっていて対応件数を増やさないと目標を達成出来ない負のサイクルにハマっている可能性もあります。この場合は勝率を上げるための施策を実行する必要があります。
 この2点を確認しても案件数が多いのだとなれば、営業、プリセールス共に採用を進めるべきでしょう。

案件が特定メンバーに偏る

 どうしても得意分野や経験、安定性などの理由で特定のプリセールスメンバーへの依頼が偏る場合が多くあります。これは営業からすれば信頼出来るメンバーに頼みたいと言う当然の期待値なのです。この場合は、プリセールスマネージャーが勇気を持ってリソースの平準化を意識したアサインをし、フォローする事で徐々に改善して行くのが王道です。経験値をチームとして増やし、全員がレベルアップをしてこそチーム力が向上するからです。
 一方で忙しい中でも提案パーツを整えることで、誰でもある程度の品質を出せるようにすることも重要です。チーム内での提案事例の共有やコンテンツの整備に時間を割けるよう強制的な作業時間(半日)など取る事も良いかも知れません。

マネージャーも担当案件を持ってマネジメント業務が出来ない

 これは将来を考えた場合に由々しき事態と言わざるを得ません。即刻マネージャーは自分に何を期待されているか上位のマネージャー(場合によってはカントリーのトップ)に確認し、将来に向けた投資として採用を急ぐべきです。会社立ち上がりの初期段階ではもちろん現場兼務は当たり前ですが、将来の成長を考えた場合に採用を増やすべき段階であると言えます。

考えの背景

 会社の立ち上がりの段階、まだ組織が安定していない状態では、トップの考え方として、目先の数字達成はもちろん重要ですが、会社をどのように成長させるか、成長させる為の優先順位をどうするか考える必要があります。SaaS製品を販売する会社を考えた場合、製品が売れても導入やサポート、CSMの体制がきちんとしていないと、結果として後工程がボトルネックとなって販売を加速することは難しくなります。逆にそれらのチームが安定していれば、営業は自信を持って販売し、販売後の営業に掛かる工数を削減することができます。
 これはプリセールスも同様で、現状の営業+プリセールスの体制で、どのようなテリトリーでどの程度の顧客をどの程度の勝率で捌くことが出来るか、それらを基盤としてどのような成長曲線を書けるかをトップ、営業マネジメント、プリセールスで同じイメージを持てているかが重要です。とは言っても、幸いなことに市場の反響が大きく、営業案件が豊富に飛び込んでくる場合、営業は切り捨てることは難しいので、全て対応する方向に動きます。まずこの時点で、冷静に上記の実力を見て優先順位をつけて展開のマイルストーンを一つ一つ進められるか、予定以上の負荷が考えられる場合は追加の投資をしてでも採用を加速すべきかの判断が必要です。但し、初期の段階での増員は経験者を探すことになるので、採用のハードルはかなり高くなります。つまり、タイムリーに増員できないと言う課題が残ります。

 プリセールスの負荷の問題は会社が成長を続ける限りずっと続きますが、考え方の軸を置いて会社トップや営業マネジメントと合意を取りつつ最適解を探すしかないものです。充足されたリソース状態を作れるのは成熟した会社の状況になってからになるです。その時には今の頑張ったメンバーはリーダーとして大きな責任を負っているでしょう。

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