世界一周物語第20話 〜サンティアゴ巡礼の旅〜
少年はインドを抜け、スペインの首都マドリードに到着した。
今ままで、少年は東南アジアを旅していた事もあって、
少年が入国したスペインは何だか今までの印象とは違っていた。
なんだか、綺麗な街。
整っている。
街も、人も、景観も。
すごく綺麗で、楽しい。
今ままでの東南アジアみたいに歩いているだけで、
ハプニングが起こらなかった。
1週間。
また1週間とスペインでの旅が過ぎていった。
サクラダファミリア。
ガウティーの建築群。
サッカー観戦。
バルめぐり。
それはそれで楽しいかった。
ガウディーの建築はガウディーが好きな人が見るべきものであって、
当時の少年にとっては価値を成さなかった。
当時言われた言葉がある。
若くて旅行するのもいいが、歳を取ってから旅するのもいいぞ。
若い時は、経験も少ないし、知識も少ない。
だから、何かを見ても、それに対する情報量が少ない。
歳をとって、自分の好きなものや、情報があると、
何かを見ても、若い時とは違う楽しさがあると。
少年にとって、観光名所を巡るのは、
スペインに来たからとりあえず行っとこか。
それぐらいのモチベーションでしかなかった。
ガウディーの建築を見たいからスペインに来た人
と
スペインに来たからガウディーの建築を見る人
とは
感じるものは全く違う。
そう、少年はここスペインにきて、
何か窮屈さというか、旅に対する飽きというか、慣れるというか。
日本へ出て、6ヶ月が経った頃だろうか?
そんな感情を抱いていた。
少年はある情報を聞きつける。
スペインには、サンティアゴ巡礼と言って、
1ヶ月、ただひたすらに歩き続ける道があると。
スペインとフランスの国境沿いのイルンという街から
サンティアゴという街まで東から西へ西へ歩くというもの。
何だか、少年はワクワクした。
心が高鳴った。
少年がスペインへ入国した時は、
11月が過ぎ、冬に近づいていた。
この巡礼道を歩くのは夏場がいい時期で、
冬に歩くのは寒いので、あまり良しとされていないらしい。
少年にとって、考えている時間はなかった。
今歩き始めるとギリギリ大丈夫だと思った。
善はイゾげという事で、
イルンへの電車のチケットを取って、
イルンへ到着。
観光センターで、カミノデサンティアゴの情報をもらいに行った。
そうすると、結構な山を登ること。
なにやら、アルペルゲと言って
巡礼者に開放している10ユーロ前後で泊まれる巡礼宿があるという事。
そして、手のひらサイズの小さな地図とアルペルゲ情報が
載った冊子をもらった。
という事は、
登山用の靴とベアスプレー(クマに遭遇した時にかけるスプレー)
が必要だった。
観光センターの帰り道にアウトドアショップへ行った。
そこで、サンティアゴ巡礼におすすめの靴をショップの店員さんに聞いて、
メレルというメーカーの防水の靴を買った。
2万円を超える買い物。
貧乏旅行をしている少年にとっては大きな買い物だった。
靴を買ったという事は、行かないとお金を無駄にする。
そんな訳で、少年の腹は座った。
そして、ナイフとまな板、ベアスプレー、
そんなものを買い足して、少年のサンティアゴ巡礼が始まった。
少年は三人兄弟の末っ子。
あまのじゃくというか、人と一緒が昔から嫌いだった。
中学生の入学と同時にみんなが買うシルバーの自転車。
自分だけ、車体がグリーンで、グリップが茶色のかっこいいやつ。
大学の入学の時買ってもらったスーツは1人灰色をチョイス。
小学校の時は、通学用に靴はみんな運動靴だったが、
自分はハイカットの何だかかっこいい靴。
みんながスポーツがりの短髪の中、自分はロングヘアー。
末っ子気質なのか、
よく分からないが、
人と一緒が昔からすごく嫌だった。
少年が選んだカミノデサンティアゴの道。
ほとんどの人はフランス人の道と言って、
スペインの内陸の道を歩くのが一般的。
しかし、
少年が選んだ道は北の道。
初めてサンティアゴ巡礼をする人はまず選ばない道。
何故か、人と違う道を選んでしまう少年。
カミノデサンティアゴ。
略してサンティアゴの道
少年の1ヶ月800kmの道を歩く旅がスタートしたのでした。