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映画<プリシラ>~所有される者の孤独~

ソフィア・コッポラの作品には醜いものが出てこない。
美しい俳優たち、風景、建物、さまざまな愛らしい色彩のアイテム。そんな世界の中にいる主人公は、ふんわりした孤独に包まれている。
「孤独」まで透明感のあるキャンディカラーな感じで。
そして、ソフィア作品に幾度も登場する、限定された空間に閉じこめられるヒロイン。
そこから出ていこうと思えば出ていけるかもしれない。
でもそこはあまりにも美しく心地の良い空間だから、出ていく必要もない…。
ましてそこは、夢のような初恋の相手の手の内にある空間なのだから。
エルヴィス・プレスリーの妻となるプリシラは、エルヴィスの邸宅「グレイス・ランド」の中の美しい調度品のひとつのように閉じ込められる。
初めてプリシラがエルヴィスと出会ったとき、エルヴィスはプリシラに「階段を上って右の部屋」で待っていて、と「部屋」の位置を指示するのだ。
プリシラがグレイスランドを初めて訪れたとき、エルヴィスのプリシラへの「部屋」の位置の指示(階段を上って左)がリピートされる。
プリシラが置かれるべき部屋はここ。プリシラはエルヴィスの愛らしい調度品のひとつのような存在で、プリシラ自身の部屋は登場しない。
光のあまりささない豪奢な装飾のエルヴィスの寝室の中に、プリシラは置かれている。
調度品として、エルヴィスの求めに従って、髪の色やメイクや服装を塗り替えていくプリシラ。
それは虐待のようなものではなく、ただ「所有するように愛する」という愛情のかたちが描かれている。
所有されるように愛される者の、幸福と絶望も描かれている。

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