R.E.M. / Green
日付変わって、今日5/4(火、祝)はみどりの日。
「緑」にちなんだアルバムということで、R.E.M.の『グリーン』を取りあげたいと思います。
R.E.M.にとって通算6枚目、ワーナー移籍後初のアルバムで、1988年11月にリリースされています。
正直に言うと、私、この時期のR.E.M.の作品の中で、一番印象が薄いのがこのアルバムです。
なぜかと考えてみたのですが、リリース時期を考えると理由は単純明快で、大学受験の直前だったからですね。年が明けて間もない1/7に昭和天皇が崩御され、元号が平成に変わった直後に「共通一次試験」(「センター試験」ではありません(笑))を受けました。あれから32年かぁ...
このアルバム、今聴くと、色々と試行錯誤している作品という印象を受けます。実際、マンドリンを導入したり、担当の楽器を持ち替えてみたりと、これまでにない試みが多くなされています。
アルバムのオープニングは「Pop Song 89」。
歌い出しがドアーズの「ハロー・アイ・ラヴ・ユー」にちょっとだけ似てる(?)この曲、3rdシングル(US86位)となりましたが、そのMVにはちょっとしたエピソードがあります。
ヴォーカルのマイケル・スタイプと女性3人が、全員上半身裸で曲に合わせて踊るという内容なのですが、さすがにこのままでは流せないと思ったのか、MTVから「女性3人の上半身に検閲バーを重ねるように」との指示が入ります。これに対し、マイケル・スタイプは自分も含めた4人全員の上半身に検閲バーを重ねることで対応します。
最近のYouTubeで用いられている「AI判定」を、30年以上前から、すでに意識していた、かどうかは定かではありませんが、なかなかのユーモア・センスだと思います。(問題のMVはこちら)
2曲目は、4thシングルとなった「Get Up」。
間奏でオルゴールのような音がいくつも重なるところが、何とも不気味で印象的です。
ちなみに、この曲は、レコーディング中、良く居眠りしていたベースのマイク・ミルズに対して、「起きろ!」というメッセージを込めて、マイケル・スタイプが書いたそうです。
4曲目は、2ndシングル(US6位/UK48位)の「Stand」。
メンバー曰く、60年代のバブルガム・ポップを意識して書いたとのことですが、ナンセンスな映像が流れるMVも、そんな雰囲気をうまく表していると思います。曲の最後、転調してキーが上がっていくところも、子供向けの曲でよく用いられますね。
B面の1曲目は「Orange Crush」。
曲のタイトルは、ヴェトナム戦争で用いられた枯葉剤「Agent Orange」から取られています。モノクロのMVからも、そんなシリアスな雰囲気が伝わってきます。
この曲、アルバムからの1stシングルとしてプロモーションされたのですが、USではシングルとしてリリースされていないため、チャートインしていません(UKは28位)。もったいない...
続くB面2曲目は「Turn You Inside-Out」。
「あれっ、どこかで聴いた気が…」と思った人は正解!
この曲、前のアルバム『ドキュメント』の「最高級の労働歌」にそっくりです。特に、ギターのリフは、ほぼそのまんま。何を思ったんだか...
最後の曲(11曲目)は、ジャケットにも記載されていない、シークレットトラック。
どことなくほんわかとした、良い感じの曲ですが、ドラムを叩いているのは、本来のビル・ベリーではなく、ギターのピーター・バック。なるほど、絶妙の「ユルさ」はそこから来ているのでしょう。
このアルバムの最高位は、US12位/UK27位。
前作『ドキュメント』の最高位がUS10位/UK28位なので、ほぼ横ばいですが、前作はインディのI.R.S.からリリースしているのに対し、本作はメジャーのワーナーからリリースしていることを考えると、セールス的には大成功と言えないかも知れません。
ただ、メジャーレーベルに移籍したからと言って、お行儀のよい音作りをするのではなく、むしろこれまでよりも自由なアプローチで音楽を制作するというスタンスをここで確立したことが、その後、重要な意味をもちます。
次作の『アウト・オブ・タイム』を皮切りに、5作連続でUSアルバムチャートのTop3入りし、R.E.M.はアメリカを代表するバンドとしての地位を確立します。
そういう意味で、このアルバムは、バンドにとって絶対に必要な「回り道」のような存在だったのかも知れません。
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