The Kinks / Something Else By The Kinks
ちょっと前に「連鎖反応」の方でキンクスを取りあげたので、久しぶりにアルバム何枚かを、通しで聴いてみました。
その結果、やっぱり『サムシング・エルス』がマイ・フェヴァリットだと再認識しました。
このアルバムは、キンクス5枚目のオリジナルアルバムで、1967年9月にリリースされています。
一言で言えば、「デヴィッド・ワッツ」に始まり「ウォータールー・サンセット」に終わる、キンクスの「いかにも英国」な部分が凝縮されたアルバムです(一言で言ってないですが)。
しかし、ビートルズが『サージェント・ペパーズ』をリリースした3か月後という「サマー・オブ・ラブ」真っ只中にあって、このサウンドはあまりにも地味で古臭い『時代遅れな』音楽として受けとめられたのでしょう。UK35位/US153位という低調なセールスに終わっています。
しかし、地味ながらヴァリエーション豊かな収録曲は飽きることがありませんし、レイ・デイヴィスの弟、デイヴ・デイヴィスが書いた3曲もいいアクセントになっています。
1曲目は「デヴィッド・ワッツ」。
この曲は、The Jamがカヴァーしています(『All Mod Cons』収録)。
アレンジ、ほとんどそのまんまです。
誤解のないように書いておくと、私、The Jamは大好きです。要は、キンクスのヴァージョンに対して敬意を表しているということだと思います。彼らの場合、ザ・フーのカヴァーでもそうでした。
2曲目はデイヴ・デイヴィスが歌う「道化師の死」。
この曲はキンクスのメンバーで録音されたにもかかわらず、デイヴ・デイヴィスのソロとしてシングルリリースされ、UK3位のヒットとなっています。
ちょっと不思議な気もしますが、例えて言うならば、AKB48から柏木由紀がソロシングルをリリースするようなものでしょうか(だいぶ違う気がする...)。
5曲目の「ハリー・ラグ 」は、一転してロックっぽくないサウンド。
ミュージック・ホール風とでも言うのでしょうか、独特のリズムが印象的です。『ペパーズ』の「…ミスター・カイト」も同じ雰囲気を感じます。おそらく、日本人の演歌・民謡と同様に、英国人の体に染みついている音楽なのでしょう。
10曲目は「アフタヌーン・ティ」。
たとえ世の中がサイケデリック・ムーヴメントの真っ只中にあろうとも、俺は「午後の紅茶」のことを歌う。そんな頑固な英国人気質をレイ・デイヴィスは見せてくれます。
そしてラストは名曲「ウォータールー・サンセット」。
ロンドン最大のターミナル駅でのテリーとジュリーの出会いを歌ったこの曲、レイの当時の妻であるラサ・デイヴィスのコーラスも実に美しい、ちょっと神がかり的な曲です。
UK2位と、惜しくもNo.1には届きませんでしたが、ローリングストーン誌の「Greatest Songs of All Time」では42位と上位にランクインしています。
ここで取り上げていない曲も、ボサノヴァ風あり、バロック・ポップ風ありと、魅力的な曲が並びます。ピアノでニッキー・ホプキンスが参加していることで、サウンドの幅が広がっているのが大きいと思います。
キンクスのファン以外の方にも、ぜひアルバム通しで聴いてほしい、そう思います。
そして、この時代のキンクスの曲で、ぜひとも紹介しておきたい1曲が「Autumn Almanac」。
結構複雑な構成の曲なのですが、それを感じさせず、UK3位のヒットとなっています。レイ・デイヴィスのソングライティング力の見事さを見せつけた曲と言えるでしょう。
もう1曲、デイヴ・デイヴィスの2ndソロシングルとしてリリースされた「Susannah's Still Alive」(UK20位)。
Fender Electric XIIを弾く姿がカッコいい!
UK4大バンドの中で、何となく一番地味な位置づけとなっているように感じるキンクスですが、個人的には2番目に好き(B、K、W、RSの順)なバンドですので、その魅力を紹介すべく、これからも取り上げていきたいと思います。
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