Lee Morgan / Candy
音楽レビューの方が、若干間隔があいてしまいました。
そして、1/5のMonk以来、Jazzのアルバムを取りあげていないことにも気づきました。
ということで、今日はBlue Noteの1590番、リー・モーガンの『キャンディ』です。
「トランペットの天才少年」リー・モーガンは、1938年生まれ。
1956年、Blue Noteより初のリーダーアルバム『Lee Morgan Indeed!』をリリース。当時まだ18歳という若さ。
1964年リリースの『The Sidewinder』は、8ビートを取り入れたタイトル曲のヒットにより、「ジャズ・ロック」のはしりとなります。
1972年、出演中のジャズ・クラブで、愛人(内縁の妻)に撃たれ死亡。享年33歳。
15年くらいの間に数多くの作品を残しており、凝縮された『濃い』演奏キャリアと言えるでしょう。
『キャンディ』は1958年リリースで、Blue Noteでは6作目となります。また、モーガンにとって唯一のワン・ホーン作品です。
個人的には、モーガンに対して、年上のテナー(orアルト)奏者を挑発するかのごとくアドリブ・バトルを仕掛ける、生意気なク●ガキ天才トランぺッターという、勝手なイメージをもっていますが(なんという偏見...)、この作品での彼は、実に素直に、かつ優雅に吹いているのが印象的です。
そもそも、ワン・ホーンなので、バトルする相手がいないのですが。
アルバムのオープニングは、スタンダードナンバーの「Candy」。
アート・テイラーによるイントロの軽快なドラムから盛り上げてくれます。最初のテーマの後のソニー・クラークによるピアノは、まるで音がコロコロと転がっているようです。
そして、いよいよモーガンのトランペットが登場。ですが、ゴリゴリのハードバップを吹く時の彼とは違って、どことなく音が柔らかに聴こえます。多分、曲がスタンダードだからなのでしょう。
3曲目は「C.T.A.」。このアルバム唯一の、スタンダードではないナンバー(ジミー・ヒース作)です。
「C.T.A.」、しかもBlue Noteのトランぺッターとなると、マイルスの「1501番」と比較してしまいますが、当時のマイルスが麻薬による低迷期ということを考慮しても、モーガンに軍配を上げたいところです。
やっぱり、ジャズメンのオリジナル曲だと、華やかに吹きたくてウズウズしているのが、音に表れていますね。
4曲目は「All The Way」。前年にフランク・シナトラがヒットさせたナンバーです。
20歳にして、これだけ情感豊かに吹けるあたりが、天才の天才たるゆえんでしょう。
自分が20歳の頃といえば、パンク・ロックのコピー・バンドとかばっかりやっていて、優雅さとは程遠かったことを思い出すと、悲しくなってしまいます。ま、それが普通なんですけどね。
最後の曲は「Personality」。
ここまでの曲よりも、トランペットのトーンが、ちょっとだけ華やかに聴こえるのは気のせいでしょうか。(録音時には曲順は未定だとは思いますが)
もう一つの聴きどころはソニー・クラークのピアノ。彼の少しダークなトーンのピアノには、こういうゆっくり目なテンポの曲の方が、ばっちりはまっているように感じます。
この曲を録音した約2か月後に、あの『クール・ストラッティン』を録音するわけですが、そういえばタイトル曲もゆっくり目なテンポでした。
『キャンディ』の後、モーガンはジャズ・メッセンジャーに参加し、花形トランぺッターとしての地位を確立します。
『キャンディ』は、やんちゃな天才少年から卒業し、大人のプレイヤーとして歩み始めた、言わば「助走期間の最後を締めくくる作品」と言えるかもしれません。
モーガンに限らず、Blue Noteって、こういう記念碑的な作品が多いですよね。
こういうところにも、1作1作に明確なコンセプトをもってプロデュースしていた、アルフレッド・ライオンの凄さを感じます。