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【プチ研究】 組織のなかのシニア (5) リスペクトする対話スキル

資料(4)「年上の部下」をもったら読む本、濱田秀彦、2018

 相手をリスペクトする対話スキルを諸説から抜書してみました。特に資料(4)は、使える例文が豊富に掲載されています。

諸説の要約

 シニアの労働意欲は高いのだが、意欲が空回りするので、パフォーマンスに結びつかない。その原因は、シニアがフィードバック不足に陥っているからだ。(1)職場の先輩なので、周りも遠慮するし、本人も周りを見下す、(2)加齢によって変化適応力が低下し、頑なになっている、(3)ポストオフの喪失感を克服できず、ジョブ・クラフティングができていない、などの原因が考えられる。これらの悪条件に抗って「年上の部下」にフィードバックを届けるには、上司により細やかな対話スキルが求められる。

 ただし原因(1)の元凶は「上司先輩が横柄な態度をとり、部下後輩がへつらう」ことを放置する職場にある。だから、誰もが互いにリスペクトする職場に変えないかぎり、永遠に横柄な先輩社員の再生産が続く。ということは相手が誰であれ、細やかな対話スキルが求められる。

リスペクトする対話スキル

ボディーランゲージでリスペクトを伝える

  • 傾聴する: 適切な敬語も大事だが、調査によると「傾聴」のほうがはるかに効き目がある。丁寧すぎる敬語はかえってシニアに距離感を感じさせることもある。また、過剰な敬語は「横柄とへつらい」関係を肯定し強化してしまう。

  • 傾聴のテクニックを工夫する: 目の合わせ方、うなずき方、表情など。喋りにもその人特有のリズムがある。そのリズム感にこちらの喋り方や動き方を合わせる。目のあわせかたは難しいので、まずは肝心なところでしっかり目を合わせる練習をする。長い話のときはメモをとる、など。

  • 誰に対しても公平な態度を心がける: 先輩にも後輩にも公平に接し、誰に対しても横柄な態度を取らない。「年上の部下」にだけおもねると、つけこまれる。かといって横柄な態度をとることはできない(かえってこじれる)。だから、日ごろから「年上の部下」だけでなく「年下の部下」にも公平に丁寧な態度で接する。要は、声かけの頻度でも態度でも、年上と年下で格差をつけない。

  • 相手を理解しようとする: リスペクトすること、傾聴すること、相手を理解しようとすること、たぶんこれらはすべて同じことだ。相手を理解するとは、より具体的には相手の境界線をさぐることだ。「常識、非常識」「好き、嫌い」「得意、不得意」「価値を感じる、感じない」人それぞれ境界線が違う。さまざまな「IS(そうであること)」と「IS NOT(そうでないこと)」の境界線に好奇心を示す、これが相手を理解しようとすることの具体的ボディランゲージだ。

境界線: IS(そうであること)と IS NOT(そうでないこと)

リスペクトを込めて言うべきこと言う

  • 「意思を込める」ところと「任せる」ところを頭の中で整理して話す。仕事で意思を込める部分は、普通、「何のために、何を、いつまでに、どの程度(品質要求)」に集約できる。

  • クッション言葉の引出しを増やして上手に使う。まずは「相談があります」と「お願いします」を使いこなす。これでサンドイッチにして指示を伝える。

  • ほめるときは自分を主語にして感謝する。「こんなに早く仕上げていただき、さすがですね。助かります」これが「〇〇さんは仕事が早いですね」だけだと、上から目線で評価している感じに聞こえる。

  • 「もう先が長くないから」には「何をおっしゃいますか」と聞き流す。

  • ほめるときはみんなの前で、ネガティブな話のときは別室で。そのためにも定期的1on1をスケジューリングしておく。その場で意見する必要があるときは「ちょっと〇〇さんと打ち合わせがあるので」と声をかけて場所を変える。

  • ミスの指摘には「〇〇さんらしくないな、と思いまして」と付け加える。

  • 苦言の前に「〇〇さんも色々考えていると思いますが・・」「日ごろ、みんなにも言っているとおり・・」など、あなたひとりを責めているわけではないですよ、という感じを付け加える。

  • 相手が逆ギレしたら「そう思わせたことは申し訳ありません」「私の言い方が悪かったかもしれません」と仕切り直す。ただし、言い方を変えて主張すべきは主張する。

  • 人事考課は制度をしっかり理解して、期のはじめに部下と共有しておく。 考課への不服は、上司の主観で評価されているという思い込みから生じることが多い。だから、あらかじめ「基準は会社共通のものであって、上司はその運用者だ」という理解を共有しておく。もちろん上司は誠意ある運用には責任がある。

  • 若手が、シニアの会社批判に同調したり、「〇〇さんがやっているんだから、僕だって」と職場のルールをないがしろすることがある。若手のほうに「君は、〇〇さんのようになりたいの?」と問いかけ、さらに「では、将来どんな風になりたいと思っているの?」と問いかける。自分の未来を決めるのは自分であることをリマインドする。

  • 年下の上司にタメ口をきいたり、わざと不機嫌な態度で圧力をかけようとするシニアもいる。相手のペースに乗らず、冷静にスルーする。そのためにも、年上か年下かにかかわらず、日ごろから誰に対しても丁寧な口調を心がける。

 結局、やるべきことは普通のOJTと変わりはない。加えて(1)傾聴する、(2)「意思を込める」ところと「任せる」ところを頭のなかで整理して話す、(3)クッション言葉の引出しを増やして使いこなす、(4)根気よく公平に、言うべきことは言う。この辺をより丁寧にやる。

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