朋有り、遠方より来たる-アトピーを通じて
「電話できる?」と連絡をくれたのは、中学からの同級生だった。
部活の集まりで年に一度くらいは会っているから久しぶりという感じはないけれど、最後に個別で連絡を取ったのは2018年だった。それも仲間内で飲みに行った帰りの生存確認のような連絡。
仲はいい、間違いなく。
でも1対1でじっくり話す機会はほとんどなかったような気がする。
そんな相手からの突然の連絡。
これは只事ではなかろうと、心して電話に出る。
「実は、うつになってさ
まさか自分がそうなるなんて思ってなくてどうしようかなって思ってて
前に会った時、朝日もうつで休職したって言ってたじゃん?
俺、アレすごいびっくりしてさ、まさか朝日がって思って
それで、ちょっと話聞いてみたいなって」
なるほどなるほど、うつね。
まずは俺の話を聞きたいわけね。
俺の場合は上司との関係で…
ストレス解消が暴飲暴食しかなくて何十年も…
今年に入ってからはアトピーがすごくて会社にも行けず…
で、母が亡くなって…
最近ようやっと元気が出てきて…
↑マシンガン
「ちょ、ちょっと待ってくれ。壮絶過ぎる!情報量が多すぎる!」
しまった、一気に話し過ぎた。
聴くモードになろうと気持ちを切り替える。
普段は少し離れたところに住んでいるのだが、いまは実家に帰ってきているらしい。
ならば会わない選択肢はない!と、集合場所を指定して電話を切る。時間は21時を回った頃だ。
最後に会ったのは昨年の秋、部活の仲間と会った日だ(母からステージ4の連絡を受けた日だ)。
最初会った時の印象は、「ふつう」。
少し落ち込みが感じられるが、言われなければわからない程度の状況と見受けられて、まずはほっとする。
そこから正味で4〜5時間だろうか?
夜の公園から始まり、彼の部屋に移動するまで、たくさんの話をできた。
かいつまむとこんな感じらしい。
仕事の影響でうつになった
昨年度、大変な部署に配属されたがすごくがんばって成果を出した
今年度は人員が1人減ってしまいリカバリに徹した
しかし、業績数字が振るわないと上司に責められる
それでもがんばったが、勤務中に2時間思考停止するなど不調に気づく
人事に相談し、「それ、うつじゃない?」と言われてはじめて自覚
本日通院し、うつ症状、の診断名と、休職指示を受ける←イマココ
なるほどすごい。
何がすごいって、そんなに頑張ってきてたことが何よりすごい。
ずっと、バランスのいいやつだなーと思ってた。
仕事に対して一生懸命、体力もあってどんなに働いても大丈夫だぜ!という感じで、30代前半から管理職を任されて信頼も得ていた。
自分自身は30代前半から心身不調を感じるようになっている中、世の中と真っ直ぐ向き合い、過ごしている彼の姿はほんとうにカッコよかった。
話してくれたことに、まずは感謝を述べた。
その上で自分の話もする。
上司に対して強く求めてしまうこと、合わないヒトには強いストレスを感じること、ストレスを暴飲暴食で誤魔化し続けてきたこと、その無理を十何年も繰り返してきた結果、自律神経や腸内環境が崩壊したこと、ここ半年間は節制を続けていたが、つい先月までは休職期間よりも辛かったが、本当に最近になって元気が出始めてきたということ、、
私は、不調自体は割と長年付き合って(というか捨てきれないがために、、)きているわけだが、彼も睡眠障害には悩まされてきたとのことをはじめて聞いた。
現在も睡眠薬のみの処方で、安定剤や抗うつ剤の投与はしていないらしい。
彼は目下、休職期間中にどう過ごすか?
仕事を離れるのが初めてということから、そのあたりが気になっているらしかった。
だから、早寝早起き、特に朝の運動と光合成、できれば自炊での食生活、湯船への入浴を欠かさないなど、私がしてきたことをもとにおすすめしてみた。
食材や薬物の話もしてみたが、当然といえば当然、怪訝そうな受け止めをし、それを口にもしてくれた、ありがたい。
きっかけは決してハッピーなことではないが、沢山の話をすることができた。
翌朝の私はたっぷり寝坊したが、彼は早起きして散歩に勤しんだらしい、頭が下がる、、そして、流石だ。。
「有朋自遠方来。不亦楽乎。 」
論語、学而より。
遠方より友が訪ねてくる、とても楽しいことじゃないか。
(本当は「学ぶということはそういう楽しみやで」ということらしいが)
彼と話した夜を振り返ると、孔子が残したこの一節に集約される気がする。
正直、ここ数ヶ月は本当につらかった。なんなら昨年からだがこれまでで最もつらかった。
しかし、そんな私にも友が訪ねてくるようになったのだ。
元気になってきたなー、と感じ始めたこのタイミング。
ずっと働き続けてきて、休職をするというこのタイミング。
たくさんの友人がいる中で、連絡してみるかと思ったのが私だったというタイミング。
あらゆるものが重なりあったメッセージとしか思えない。
彼にも直接伝えたが、いまのタイミングで不調をきたして休職となるのは、彼の身体や深層心理がそれを望んでいる、メッセージであると私は確信している。
そんな中だからこそ、私がしてきた体験が、少しでも彼のためになれば、こんなに嬉しいことはない。
しかし少し反省したのは、友人からうつになったという打ち明けをされたのであれば、ごく一般的にはもっと心配するべきだったのでは?と、、
「あ、そうなんだねー」くらいの、受入のスピードだった気がする。ごめんよ。
そして私自身、最近溜まった元気を、飲み会に費やしている自覚がある。
相まって、金曜、土曜、日曜と、朝の運動をすっ飛ばしている。
身体は正直だ。
気持ちへのもやのかかり方、さらにはかゆみ、強くなっている気がする。
夜の体操をしてみたら少し楽になった。
本当に身体は正直だ。
彼のためを思う、そのためにも、私は私を労わることを続けよう。