至高の煎餅のお話

煎餅が好きすぎて息子に千兵衛と名付けた。
それが元で女房に三行半突き付けられた。
当然親権は向こうに行った。
煎餅の所為で、愛する女房と千兵衛を一遍に失った。
そんな事情で私の傍らには、愛する女房と千兵衛はもう居ない。
しかし私は大丈夫。
何故なら煎餅があるから。
私の許には何時も煎餅が有るから。
大好きな大好きな煎餅が、私の許には何時も有るのだから。
だから、私は大丈夫なのである。
なんなら、全然平気である。
もっと言えば、私には女房も千兵衛も不要だったのだ。
扶養だったが不要だったのだ(そしてこのくだりも不要だ)。
在っても無くても良かったのだ。
煎餅があれば良かったのだ。
私は煎餅が有ればそれでいい。
私はそういう人間だ。

どうもです。
はい。そんな感じで今日は煎餅ね。
以前、醤油好きを思わず吐露して仕舞いましたが、今日ここに新たに吐き出します。
上に書いた通り、実は私部類の煎餅好きでもあるのです。
てめえが何好きだろうがこちとら知ったこっちゃねえよ、て話しでしょうけど、まあ、適当に話していくんで、良かったご覧ください。

煎餅と醤油。
最高の相性、つまり醤油煎餅こそ至高。
そんな醤油煎餅の中で、これぞ至高て言う逸品が当然有る訳よ。

お醤油屋さんのつけやき

もう、これ一択。
関口醸造ていう醤油屋が出してる、正に夢の様な煎餅。
美味しくない訳がない。
名前見ただけで垂涎、食うと実際、すげえうめえ。

味わい方がある。

まず、外袋から小梱包の袋の一枚を取り出す。
この袋の上から、一枚の煎餅を六つ程度に割る。
袋から皿に開ける。
要はこれらをチマチマ食っていく訳だ。

そこから、徐にひと欠けを摘まむ。
摘まむ指は好きにしろ。
だけど、行き成り口に放り込むなよ。
鼻先に持って行け。

先ず、鼻で味わう為だ。
鼻腔を最大限に広げろ。
香ばしい醤油の香りを肺いっぱいに送り込め。
軈て嗅覚神経は活性化し、頭蓋は溢れ出たドーパミンで満たされ、脳味噌はその海に溺れる。
前後不覚に陥った頃合いで、口に放り込め。
放り込んでも、直ぐには噛み砕くなよ。

次に、舌で味わう為だ。
その舌で、そのひと欠けの表面を覆う醤油を舐(ねぶ)り尽くす可く、ベロンベロンに舐め回して、存分に醤油を堪能しろ。
そうして、徐に歯を立てろ。

最後に、歯で味わうのだ。
ガリガリボリボリ噛み砕いて噛み砕いて噛み砕いて噛み砕け。
歯はその硬度に抗い、歯頚はその硬度に刺激され疼き出す。
そうしてそれが繰り返されて、軈て巌は細石より細かくなる。
それを合図に一気に嚥下、胃へ流し込め。

膝がガクガクと震えているな、立って居られないのか?
口が半開きのまま閉じないようだな、涎が溢れて口角からだらしなくダラダラ垂れているぜ。
潤んだ瞳は空ろで、何も見えていないようだな。
至高の醤油煎餅を飲み込んだお前は今、至高という快楽に飲み込まれたのだ。
そうしてお前の指は、最早お前の意識を離れ、勝手に次のひと欠けを摘まむ。

これが至高の醤油煎餅の至高の味わい方だ。
是非ご賞味あれ。

なお、この note は案件でもなんでもありませんので、悪しからず。

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