Jerry Christmas Everybody(中)

(中)
薄暗がりの私の部屋のサンタクロースは、窓からの雪明りに照らされた椅子に腰かけ、両ひざに手を衝いてガックリと頭(こうべ)を項垂れた。
そうして、参ったなあ、参ったなあを頻りに繰り返すのだった。
何をそんなに困っているのか、どうしてクビなのかと問う私に、彼は顔を天井に向け、はあ、と一度深く溜息を漏らした。

君はサンタクロースの実在を信じるかい?

そう言って私に顔を向けたサンタのその顔貌は、薄暗がりの中にも老人には見えなかった。しかしその恰好は正にサンタクロースそのものである。

あなたがそうでしょう?

子供らしい純真さからか将又幼稚で無知な盆暗故か、ベットから出てその端に腰かけ、彼に向き直りそんな暢気な返答をした。

少年、私はパートタイム・サンタなんだよ。
本業サンタはもう居ない、数百名のパートタイマーが聖夜に世界中を飛び回っている。

聞けば、彼はこの後2時までこの地区を回り、その後は他のパートタイマーに引き継ぐのだと言う。
そして就労規則の条文中に「決して誰にも姿を見られないこと」というのがあり、違反した場合は、例えそれが止むを得ない事情であるにせよ、雇用契約の解除となる、詰り、首を切られると言うのだ。
更には、給料が受け取れない許りか、この間の記憶は全て抹消されるのだと続けた。
知らなかった事とは言え、幼心に私の目を覚ましたのがとても申し訳なく思えた。私は、そんな罪悪感から彼に深く頭を下げ、ごめんなさいと詫びた。

君は、悪くない。全て私のしくじりだ。

彼は、右手に嵌めたグローブを外し、その手で私の頭を優しく撫で、その親指で私の眼頭に溜まった涙を拭った。
給料も出ない記憶も消されるで余りに癪だから、ここで君に秘密を暴露したい、聞いて欲しいと彼は幼い私に懇願した。
そして、彼は自分がパートタイム・サンタクロースになるに至った顛末を私に告白した。

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