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続・「食」の反科学陰謀論をまとめてみた~添加物スペシャル~



今回は前回に載せられなかった「食」の陰謀論である食品添加物について扱っていく。前回は食品添加物の代表例として一番叩かれている味の素を集中的に話したが、今回はそれ以外の亜硝酸ナトリウムやアスパルテームやポストハーベストや臭素酸ナトリウム等の食品添加物を精力的に取り上げていく。 




食品添加物陰謀論 ① 亜硝酸ナトリウム



トップバッターは嫌われている添加物代表である亜硝酸ナトリウムだ。この添加物は主に加工肉で使われている。添加物陰謀論者が嫌う理由は発癌性があるからで、曰く「WHOが『発がん性が強い』と警鐘を鳴らす添加物で、直腸がんのリスクを最大18%も高め、その他にも、乳がんや膀胱がん、肺がんや大腸がんまで多数のがんの原因になる!加工肉は癌の元!」だそうだ。 

他にも、糖尿病のリスクの増大メトヘモグロビン血症脳神経疾患のリスクの増大の影響があると主張している



無論加工肉においてこの添加物が使われているのは理由があり、それは肉のミオグロビンやヘモグロビンを固定して加熱や酸化による褐色化を防いだり獣臭さを消してハム・ソーセージ特有のフレーバーを付けたり細菌の増殖を抑える働きがあるからだ。

特に重要なのはボツリヌス菌の増殖抑制する作用があることで、ボツリヌス菌は土壌や海底堆積物に広く分布する嫌気性細菌かつ酸素に触れて死滅しても毒素は残り続ける厄介な性質を持っている。その毒素はボツリヌス症と呼ばれる神経症を発症させ、致死量は僅か1μgだ。



また、食品添加物の量は国際的な機関が無害と確かめた量の100分の1を毎日食べ続けても安全な量とした上で、この量よりずっと少なくなるように法律で使い方が決められている。亜硝酸ナトリウムを含めた発色剤の食品衛生法で食肉製品で用いられる亜硝酸根残存量は70ppm(1kgに対して0.07g)以下と人の健康を損なう恐れがない量の使用基準が定められいる



それでも亜硝酸ナトリウムを摂取するのが嫌だと言うのなら、薄切りのハムやベーコンは沸騰させた湯に15秒程、ソーセージや厚切りのハムやベーコンは2,3か所切れ目を入れて沸騰した湯に1分程、たらこやいくらなどの海産物は40℃くらいのぬるいお湯に1~2分程入れると抜けるのでやってからの方が良いだろう。

また以外かも知れないが、野菜に含まれている硝酸ナトリウムが肉や魚や口内細菌の影響で亜硝酸ナトリウムに変化する場合もあるが、危険性は低く野菜を食べることで良い効果を得ることができるため摂取基準は設けていない



他にも一部の週刊誌では、「ソルビン酸と亜硝酸塩について相乗毒性がある!」として食品健康影響評価書の内容を引用していたが、根拠とされる論文で確認されたソルビン酸と亜硝酸塩の反応生成物は通常の使用状況下とは異なる極めて限られた条件下で生成されたもので、食品安全委員会でも通常条件下ではヒトの健康に対する悪影響はないと結論付けている

その条件下とは亜硝酸ナトリウムとソルビン酸の相乗毒性の実験は亜硝酸ナトリウム溶液とソルビン酸溶液を混ぜて90℃で1時間湯煎したもので、週刊誌側が反論としてマウスの染色体異常を示す実験も、異常が出たという結果もあれば異常なしとする結果もある矛盾した結果と信頼できるデータではない


食品添加物陰謀論 ② アスパルテーム及びトレハロース



次に解説するのは人工甘味料であるアスパルテームだ。これも発癌性等の有害性があるとして嫌われいる。曰く「アスパルテームが安全だと言う論文は製薬会社の利権でその製薬会社は天下りだ!」だそうだ。



まず発癌性に関してはIARCのグループ別けでは前回解説したラウンドアップよりも低い2Bで、ワラビや漬物等と同等のレベルとなっている。また、IARCによる発癌性の区分は癌の進行度ではなく証拠の数なのは前回解説した通りだ。

更にWHOとFAOが合同で設立した食品添加物についての専門家会議であるJECFAでも体重60kgの人が毎日2400mgのアスパルテームを一生涯摂取し続けたとしても健康への悪影響は出ないということを示した。

日本でも厚生労働相がADIを40mgに指定したが、そもそもアスパルテームは砂糖の200倍の甘さを持つ甘味料なので、多く使うとむしろ食味が損なわれる為大量摂取には不向きな食材である。その為摂取量はADIの0.3%程度にとどまっている



似た様な事例にトレハロースに関するデマがある。この物質は自然界に存在する糖類で特にキノコに多く含まれているが、1990年代初めに日本企業の林原に所属する研究者がでんぷんから生成する微生物を見つけ、関係する酵素を同定するまでは高価で実用的ではなかった

日本では1995年に認可されており、主に蒲鉾や菓子で高い保水力を活かしてでんぷんの老化防止やたんぱく質の変性防止に用いられている。特に餅菓子や団子では硬くならずに翌日も柔らかく食べられているのはトレハロースの作用だ。

だが、2018年1月にアメリカ・ベイラー医科大の研究者はネイチャーにて「強毒タイプのクロストリジウム-ディフィシレ(CD菌)は遺伝子の変異によってトレハロースを代謝し栄養源にできるようになっており、マウスを用いた実験と考察も踏まえトレハロースの使用が問題だ」と言う論文を発表しSNSは騒然となった。

だが、CD菌のアウトブレイクが目立った2000年代の欧米は林原のトレハロースはあまり売れてなく特許技術を用いてトレハロースを製造販売している企業もなかった

また、当時のアメリカ人が食べていたトレハロースの量は食事の中でやキノコや小麦製品に含まれる天然由来トレハロースの100分の1程度だった。

この論文は一部の科学者から問題が指摘されており2019年4月でのイギリスの研究グループの結論と2020年1月にはアメリカの研究グループの結論では、強毒化したトレハロースの遺伝子とネイチャー論文との関連性が不明瞭と判断されている。


食品添加物陰謀論 ③ ポストハーベスト



続いて解説するのは農作物の防カビ剤や防虫剤として使われいるポストハーベストで、陰謀論者曰く「(輸入レモンに関して)日本では禁止農薬だが、アメリカが禁止農薬をかけたときには食品添加物という文字に換えている!こんな危険で食べられない!」だそうだ。



まず、厚労相のQAを確認してみるとそもそもポストハーベストは添加物に該当しており食品衛生法第10条の規定で指定されていない添加物を使用する食品の輸入、使用、販売等が禁止されいる一方、日本では農薬登録はされていない。つまり「日本では禁止農薬」は間違いなのだ

また日本の農薬取締法や残留農薬基準では収穫の前か後かというような使用時期による農薬の区別はないが、国際規格コーデックスなど海外の規定では「ポストハーベスト農薬」として使用が認められている等、国によって定義が異なるのを陰謀論者が逆手にとって誤情報を拡散しているようだ。



また、ポストハーベストの人体への影響に関してADIを大幅に下回るように使用基準が定められ安全性が確保されている。また、一部の生協は独自に基準を設け検査室にて理化学検査を行い、問題がないことを確認し商品を企画している



そこまでしてポストハーベストが徹底されているのは、されてない作物が輸入した際にカビや虫によってダメになったり、厄介な外来種が侵入する可能性があるからだ。特にカビ毒は植物病原菌や貯蔵穀物などを汚染するカビが産生する化学物質で、人や家畜の健康に中毒症状等の悪影響を及ぼす。 



その原因としてはカビ毒に汚染された農産物や食品を食べる直接摂取の他、汚染された飼料を食べた家畜を経由して乳や肉などの畜産物に移行しそれを食べることで摂取する場合もある。症状も長期間摂取した場合に肝障害、腎障害、消化器系障害などを起こす可能性がある



また、中毒を起こすカビには複数の種類がある。例えば穀物や豆や乾燥果実に発生し高い発癌性を持つアフラトキシン類麦類や豆類に発生し1950年代の日本や1940年前後に旧ソビエト連邦で発生した中毒事故の原因であるトリコテセン類が挙げられる。

食品添加物陰謀論 ④ 臭素酸カリウム



最後に解説するのはコンビニやスーパーで売られているパンに使われている臭素酸ナトリウムで曰く「不燃性かつ強力な酸化剤で他の物質を酸化させる作用があります。このため、第1類危険物に指定されている!」だそうだ。



この添加物は小麦粉処理剤として厚労省が使用を認めており、作用としては生地の中で臭素酸とカリウムに分離しその臭素酸から酸素が発生して小麦中のたんぱく質を酸化させグルテンとの構造が良くなり完成したパンは水分が保たれキメが均一で柔らかくシットリとした食感が長く続くパンになる

日本では1953年に認可され町の小さなパン屋でも普通に使われていたが、70年代に発癌性が疑われ反対運動が激化した結果、殆どの業者が使わなくなった

しかし残留しなければ人の健康への悪影響はない為厚労省は1982年に「使用した場合は残存してはならないというルールを設定し、多くの業者が使用を再開した。

1992年FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が「小麦粉処理剤としての使用は適切ではないとの見解を示したのを受け国内メーカーは使用を自粛したが、山崎製パンは2004年には使用を再開した

日本では2003年からパンに臭素酸が0.5ppb(パン1kgあたり0.5μgの臭素酸がある濃度)残っていれば検出できる方法残存の有無を確認している。

山崎製パンは臭素酸カリウムの高精度の分析法の研究をFDA等と共同研究を重ね国際的にも貢献していたが、2014年には使用を中止した。これは「躊躇わずに添加物を使う悪質企業」や「ヤマザキのパンがカビないのは臭素酸カリウム使っているため等のデマに屈した訳ではなかった

本当の原因は調達が難しくなったからで、国内唯一臭素酸カリウムを製造していた企業が製造を取りやめたのだ。そこで海外の企業から調達を検討したが、当時は同社の基準を満たす企業・製品が無かったので、一旦使用を取り止める代わりに、他の原材料・添加物で機能を代替させる為様々な改善を重ねた

そして、ヤマザキ側が要求する高いレベルで臭素酸カリウムを製造供給する企業を改めて探し、「これなら」という品質の臭素酸カリウムを海外で見つけたので、2020年3月から臭素酸カリウムの使用を再開した



余談だが、山崎製パンは「イーストフード、乳化剤不使用を強調したパンに関しても鋭い突っ込みをしている。実は、その様な食パンや菓子パンは似た機能を有する代替物質を使用して製造されており、添加物表示義務は回避できるが、従来のパンと特に変わらない事が判明した。


最後に 添加物陰謀論の2人の火付け役



今までは食品添加物の陰謀論を語っていったが、最後に食品添加物陰謀論のパイオニアの2人について語る。まずは1人目は食品ジャーナリスト兼一般社団法人加工食品診断士協会の代表理事である安部司氏だ

安部氏は大学卒業後に食品会社でミートボールを製造していたが、自宅の食卓に自分が開発に関わったミートボールを発見し、自分の子供たちに食べさせたくないものを自分が作っていたということに初めて気がつき、ほどなく会社を退職し反添加物陰謀論者になった



その後安部氏は代表作となる「食品の裏側 みんな大好きな食品添加物」 が東洋経済新報社から発刊しそれがテレビ・新聞・雑誌等で大いに取り上げられ、グルメ漫画だが作者の思想から出てきた数々の問題描写を産み出した美味しんぼにも好意的に取り上げられていた



安部氏の思想の根底は前述の著作内にある「食の乱れは食卓の乱れ。食卓の乱れは家庭の乱れ。家庭の乱れは社会の乱れ。そして社会の乱れは国の乱れ。」や彼が代表理事を勤める食品診断協会のスローガンである「守るべきは子供たちの健康・価値観・そして家族の絆、そして日本の食文化」を見るに極端な伝統主義が見え隠れする



安部氏はこの書籍で味を占めたのか反添加物陰謀論記事を多数の週刊誌に投稿したが幾つかの問題ある記事も出た。例えばデイリー新潮での記事では安部氏が体に悪いと判断した様々な食品を実名で晒しているが、これは食品を作っている企業の努力を嘲笑っている事に他ならない


 

この様な記事に反応したのが同じ週刊誌にしてライバル関係である週刊文春だった。文春は前述した食品安全委員会や東京大学名誉教授の唐木英明氏が代表を務める食品安全情報ネットワーク等の関係者の意見を元に新潮の記事の不備を指摘した

例えば前述した亜硝酸ナトリウムの相乗毒性や発癌性等は食品安全委員会や農水省のデータの一部を意図的に引用していた事、MGSと酵母エキスとタンパク加水分解物が味覚破壊の原因と判断されかねない書き方だった事等を問題視している。



 一方で新潮側は「文春も相乗毒性や発癌性等の食品添加物陰謀論を拡散しており、それなのに新朝を叩くのはご都合主義に他ならないと痛い所をついていた。これに関してはその通りだと思いつつもそれを理由に食品添加物陰謀論を拡散する免罪符にはならないと私は思った



2人めは環境及び消費に関するジャーナリストである船瀬俊介氏だ。この人物は筋金入りの陰謀論者として知られており食品添加物陰謀論以外に反ワクチン、反農薬、反ウクライナ、電力利権等節操がない後述するが、肝心の内容も胡散臭い物ばかりだ



船瀬氏の作品で有名となったのは「買ってはいけないシリーズ」だ。この本は週刊金曜日と呼ばれる左派系の週刊誌が連載していたコラム及びそれをまとめた書籍で、主に飲食物や化粧品の添加物や農薬や電磁波等の危険性を解くのが中心となっている



この本の問題点はミミズバーガー(ファストフードである使われるパティに食用ミミズが入っている都市伝説)や味の素に関する謎の逸話等憶測経口摂取の保存料をマウスの体内への注射や致死量を遥かに越えたイーストフードを犬に経口摂取させる等用途及びADIを無視した内容になっていることだ

例えば粉末出汁であるほんだしに対して「化学調味料(MGS)が 25.4%糖分が27.8%食塩29.5%も含まれていた!」とイチャモンをつけた上で、「鰹節を作る過程で出た廃液に砂糖と塩と味の素と鰹節の匂いを加えた物をほんだしとして大々的に広告宣伝してきた!と言う憶測を吐き捨てた



しかも理由は「大量の廃液をタンクローリーで回収していくので用途を聞いても『これから先は、言えませんやネ』 と笑ったから」とお粗末なものだった。執筆当時は兎に角、現在は公式サイトや動画でほんだしの作り方が公開されていてちゃんと鰹節を使用している



その結果「買ってはいけないを買ってはいけない」や「買ってはいけないは嘘である等の反論本が現れた程だった。他にも都知事選挙に出てきた反ワクチン医師の内海聡氏と共に「血液の闇なる本を出版する等他の陰謀論者との繋がりも強い 


おまけ ククリーナに突如コメントされた話




今回のおまけコーナーは私が数ヶ月ぶりに投稿した記事に唐突にある人物がコメントと反論する記事を飛ばした件に関する感想及び突っ込みだ。そのコメントの主は私にとっては毎度お馴染みククリーナ氏だ。ククリーナ氏はこんなコメントを投稿した


けものフレンズ、政治、Vtuber等界隈を引っ掻き回した挙句にnoteから著作権侵害で処罰された夢月ロアファンにして迷惑投稿者であるアッキーさんお久しぶりw

また陰謀論者の陰謀論を展開していますかぁ?w

「食品の検査基準を整備しろ」で済む話を水増し長文とか流石にセンス無さすぎw

味の素が伝統食品wwwww

伝統のハードル下げ過ぎのお前は味の素陰謀論者からのスパイかぁ?w

だから夢月ロアのファンではないんだが!?


相変わらず人を煽るのに長けた人物だ。それにしても毎回思うが、けものフレンズ、政治、Vtuberを引っ掻き回しているのは寧ろククリーナ氏ではないだろうか。また後述するが、味の素伝統食の部分は私が言い始めたことではない



しかもそれとは別に前回の記事に関する記事を作る始末だ。ここからはククリーナ氏の記事に関する感想と疑問点を語っていく。



1つめに「『僕の気に入らない人たちが安全な科学的事実に対して何が何でも叩くんですぅ!』と恥知らずな風説を垂れ流している記事」の部分だが、この記事を書く切っ掛けになったのはリュウジ氏に関する誹謗中傷を行った連中の中にQAJFが混じっていたからだ。

しかもそのやり口が悪意あるコラージュの作成や根拠の無い陰謀論の拡散等私が今まで見てきた陰謀論を垂れ流していた連中と行っていた行為に似ていた。故に前回の記事を書いたのだ。

2つめに「遺伝子組み換え陰謀論界隈の~遺伝子組み換え・化学薬品側の敗北を書いている」の部分だが、ククリーナ氏は恐らくちゃんと記事を読んでいないのだろう。

セラリーニ氏が行っていた実験は癌が出やすいマウス等の不備があった実験で、その後世界中の公的な安全性審査機関による実験によって健康へのリスクは確認されなかった。



ラウンドアップ訴訟に関しても、IARCの分類は飽くまで癌の論文があるだけで、癌の強さではない。また、この訴訟のやり口も法律事務所側によるある種の訴訟ビジネスだったりする
 

3つめに「科学が万能という狂信を心理とするデマ」及「むしろ科学に万能無で常に欠陥を警戒するぐらいの品質管理こそ高い品質を保つのに必要な心構え」の部分に関してだが、私は科学が万能とは言っていていない

私が言っていたのは、「味の素は遺伝子組み換え神経毒!」やら「ラウンドアップは枯葉剤と同じ成分!等の陰謀論の展開及びそれを擁護する連中に対しての反論だ。

4つめに「食の安全基準を世界規模の統一と透明性を含む全世界共通の検査基準を確立して全世界の国民に徹底周知する方法をみんなで考えよう!」の部分だが、アイデア事態は素晴らしいとは思う。

ただ、世界規模の統一及び世界共通の検査基準は何処の国をモデルにしていくのか、尚且つラウンドアップの発癌性の時みたいに一部の環境保護団体や弁護士が政治利用するのではないかと言う懸念点があるだろう。 



最後に「明治に造られた科学調味料の味の素が伝統食と呼ばれても~洋食全般も伝統食と言い切るだけの信念はあるんだろうなぁ?」の部分だが、ここと私に非がある。実は集英社が発行した「味なニッポン戦後史なる書籍を参考にしたのだ

この書籍ではうま味→塩味→甘味→酸味→苦味→辛味→脂肪味の順で、戦後日本における食の嗜好の変化が書かれているその中のうま味の章では、「伝統」がテーマとなっている

例えば、合わせ出汁は江戸時代から使われていたが、北前船の流通や水が軟水だったからなのか主に京阪地域が中心で、尚且つそれらの料理書はプロ向けが大半だった。

明治時代から家庭向けの料理書に出汁の取り方が掲載されたが、鰹出汁が大半だった。昆布出汁の取り方は大正時代末期から幾つか確認できる程度で浸透してなかったようだ。

その昆布出汁の取り方も水から煮るのではなく煮たせた湯の中に昆布を入れるバラエティーに富んでいた。また、単にうま味のある液体は出汁、煮て作るのは煮出汁と区別されていた
 
それが変化するのは高度経済成長期頃で、懐石料理店や割烹料理店出身の著作の合わせ出汁を重視した料理書やNHKの「きょうの料理を中心とした料理番組によって合わせ出汁が一般化した

一汁三菜の起源は室町時代で武家の持て成し料理である本膳料理で、茶の湯の懐石料理や江戸時代の会席料理に引き継がれたが、それらは特別な料理だった

当時の庶民だけでなく大名でも一汁二菜もしくは一菜が日常的だった。面白い事に庶民的な一汁三菜の原型は百貨店の食堂で、洋定食との対で出されていた。 

それが家庭に普及したのは昭和50年頃で、米の摂取量が適度に減り、乳製品が加わった事で「油脂が少なく栄養バランスが取りやすい基本形として注目されたのだ。

その中で作者の「明治時代に生まれ100年以上使われている味の素が伝統とは決して言われないが、一部の地域や階層に受け継がれていた文化を国全体の伝統として流布していく。という部分を参考に味の素は伝統云々を言ったのだ。



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