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続々・「食」の反科学陰謀論をまとめてみた~コオロギ編~




今回紹介する「食」に関する反科学陰謀論は反コオロギ食で、恐ろしい事にひろゆき氏やリュウジ氏などその様な事例には否定的なタイプの人物でもこの陰謀論に好意的な対応をしている

特に後述する学校給食にコオロギが使われていた事が発端で反コオロギ食陰謀論が一部の右派政治活動家、SDGsアンチ、時事系投稿者を中心に拡散されたが、それ以外にもbotによる投稿も37%余りあったようだ。

最近は全盛期程ではないが、それでも未だにコオロギを含めた昆虫食に対してデマを撒き散らかす陰謀論者が多々いるのが現状だ。 そんなコオロギ食を含めた昆虫食陰謀論界隈を解説していく




反コオロギ食の歴史~コオロギ食はグローバルサウスの陰謀!?~



陰謀論を語る前にまずは何故去年から爆発的にコオロギ陰謀論が噴出したのか、それを振り返っていく。そもそも昆虫食はマスメディアで注目される前から一部の陰謀論者が既にネタにされていた。

そんな状況下でマスメディアによって未来に起こる食肉不足の解決策としてコオロギミートや食用コオロギ報道が活発となると、「コオロギを食べさせようとするな!否定的な声が多くなる



そこを上手く利用したのが後に日本保守党を結成する有本香氏だ。有本氏は全盛期にて「コオロギ食べない連合」なるハッシュタグを結成してコオロギ食に対して支持者と共にネガキャンを繰り返していた

また、有本氏はイベルメクチンを推していたり、「北海道の山を外国勢力が買っている!と言う誤情報を支持者を中心に拡散する等、元からこの手の陰謀論を布教に熱心な人物でもあった。



更に徳島県の高校でコオロギを使った給食に関するデマがこの騒動を悪化させた。元々は生徒同士が食用コオロギを食べるゲームをしており、教師が美味しさに驚き環境を考える契機として給食導入を試みたのが切っ掛けだった

そして、食物科の生徒らが「かぼちゃコロッケ」を考案し、在校生のうち約170人が試食に加わった無論食べるか否かは自身で選択可能で、アレルギーについても生徒に説明済みだった。

問題だったのは一部のサイトにて高校側の諸々の事情を割愛されて伝えた結果、「子供達に昆虫食を押し付けようとしている!」と解釈した人々が陰謀論者に取り込まれた事だ。



給食デマで勢い付いた陰謀論者の次なる標的は、Pascoで有名な敷島製パンだった。ここは2020年から大学発スタートアップ企業の「FUTURENAUT」と共同で「Korogi Cafe」シリーズを展開していた

そこでは主にパンやフィナンシェ等にコオロギパウダーを配合し通販限定で販売していた。しかし今回の騒動で飛び火すると、陰謀論者による真偽不明な情報を基づいた電凸や不買運動に見舞われる様になった

敷島製パン側は、「原材料のコオロギは専用の農場で大豆やトウモロコシから作られた餌を厳密な管理下で与え養殖されており、調理も専用の施設で製造している」事を回答している。

そしてこれ以上風評被害をした場合は顧問弁護士を通して法的処置を行う事を言及したが、陰謀論者からは「逆ギレ」と捉えられた



更には元日本第一党で日の丸凱旋倶楽部なる極右組織のリーダーである渡辺賢一氏が反昆虫食デモを宣言していたが、彼らをウォッチしている人物によると数はそこまで多くはなかったようだ。



最近だと、コオロギ食を推していたベンチャー企業クリケットファームの母体でたるIT事業会社インディールペット餌向きのコオロギをコオロギ研究所の破産等に対して「自分達の主張は正しかった!」と勝利宣言をしていた


陰謀論①~コオロギは日本では食べない!?~



ここからはコオロギ食で良く言われているデマを紹介していく。1つめは「日本の伝統食にコオロギ食はない!というデマで、昔は新潟県、長野県、福島県、山形県等少なくとも一部の地域では普通に食べていた

例えば長野県では炒ったり、煮付けや佃煮にしたり、味噌と混ぜたりして食べていた現在では余りメジャーではないのはイナゴや蜂の子やザザムシと比べると一か所で採種できなかったり、動きが素早い為捕るのが難しかったからだろう。

また、バッタ目の中では、コオロギは世界中で最も消費されているようで、地域ごとで食べられているコオロギの種類の数を見るとアジア 41 種、アフリカ 26 種、南北アメリカ 5 種、ヨーロッパ 4 種、オセアニア 4 種 のようだ。

またコオロギが食べられている国の数では、アフリカが25カ国と最も多く、続いてアジアが13カ国南北アメリカが5カ国ヨーロッパが4カ国オセアニアが2カ国とされている。


陰謀論②~コオロギを食べると不妊になる!?~



2つめは「中国の医療書『本草綱目』に『妊婦は禁忌』と書かれている!というデマで、中国ではコオロギ同士を戦わせる闘蟋の影響で養殖が盛んなので普通に食べられている食べ方としては下準備として腸内洗浄と足の切除をした後油で素揚げして塩で味付けした食べる



また、その本に書かれている昆虫はコオロギではなくカマドウマであることが発覚したカマドウマとコオロギは同じキリギリス亜目に属しているが、上科レベルで違っている。これは類人猿のヒトと狭鼻猿上科のニホンザルが違うのと同じレベルの話と思ってよい。



因みにこの本には馬肉が毒とも書かれている。何故かと言うと食べると体が冷えてしまうと考えられていたからで、一応煮て食べれば問題なしとも書かれているが、馬刺の様な生で食べるのは推奨されていない

その影響か現在でも中国では東北部の少数民族は馬肉を食べるが、中国の主要民族である漢民族は基本的には食べない。しかし何故かコオロギの時の様に「だから馬肉を禁止にすべき!という声を聞いたことがない


陰謀論③~コオロギを食べろと聖書の記述が捏造された!?~



3つめは「2017年からコオロギは食べてよいと聖書の記述が書き換えられた!」というデマで、これはレビ記と呼ばれる旧約聖書の内容がヘブライ語の為翻訳者によって解釈が変わるのが原因だ。

指摘されている新日本聖書刊行会版1970年からコオロギと書かれておりイギリスの改訂版聖書(1885年)やアメリカの標準版聖書(1901年)でも同様だが、日本聖書協会ではイナゴのみと違っている



似た様な事例として宗教改革で有名なマルティン・ルターはドイツにはいない岩狸ことハイラックスをウサギと誤訳した。因みにハイラックスはウサギでもタヌキでもネズミでもなくゾウやカイギュウ(ジュゴンやマナティーの総称)やツチブタ等と同じアフリカ獣類だったりする。


陰謀論④~コオロギ事業に6兆円も支払われた!?~



4つめは「コオロギ事業に6兆円も使われている」でこれが切っ掛けでこの陰謀論は大きく盛り上がったが、勿論デマだ。これの元の情報はSDGsアクションプラン2021にある予算総額でこの中にコオロギ食は無い

最近のデータだとムーンショット型農林水産研究開発事業では土壌微生物、細胞培養、牛でメタン製造を含めて1億6千万円と思ったより低い



また、これの亜種として「コオロギ食を進める企業は補助金目当てだ!」というデマがあったが、これは認定農業者になっただけというオチで、これは米農家や畜産農家でも同じだ。

確かに補助金や有利な融資などのメリットはあるが、経営規模拡大などの目標達成が義務付けられる為需要が読みにくいコオロギ養殖でそれをやるのは難しいようだ。


陰謀論⑤~コオロギ由来の添加物でもアミノ酸表記!?~



5つめは「コオロギ由来の成分を食品に添加しても『アミノ酸』と表記される!」で、これを取り上げているRAPT理論韓国のキリスト教系カルト教団が母体の組織だ。

彼らは主に人工地震やケムトレイルや反ワクチンを提唱している他、ヴィーガンやLGBTや皇室を悪魔崇拝者呼ばわりする等問題発言も目立っている

これに対して消費者庁の見解では「(コオロギ由来の成分を「アミノ酸」と表記するのは)食品衛生法に抵触する可能性がある」そうなのでこの理論は無理だと思われる



また、これの亜種として「人間はコオロギを消化する酵素を持たない!というデマを吹聴する人物も出たが、それは食物繊維の一種「キチン質」を指しているようだ。

キチン質は甲殻類や軟体動物やキノコに含まれる物質脂肪吸着・代謝上昇・血流促進の作用があり、体内で合成出来ない貴重な栄養素と真逆だっだ。


陰謀論⑥~コオロギにはプリン体が多く含まれている!?~



6つめは「コオロギにはプリン体が多く含まれている!」というデマで、その量はあん肝の10倍のプリン体があるらしいプリン体は細胞数の多い魚卵、細胞分裂の活発な内臓、乾燥によって細胞が凝縮された干物等に多く含まれており過剰に摂取すると痛風なる事で有名だ。



基となった論文を昆虫食専門企業TAKEO ONLINEが調べた結果、「肉と比べてちょっと高く、レバーと比べて当程度となる可能性が高い」との結論がでた。実はコオロギのプリン体に関する論文にはカラクリがあったのだ。


尿酸・・・!圧倒的尿酸・・・!(カイジ風)


それは一番多かったのは尿酸だった事だ。論文でのコオロギのプリン体の量は100g中3141.93mgとなっていたが、その内尿酸は2218.8mgだった。同じ手法だと卵白は22.22mg中131.34mg鶏胸肉は1074.84 mg中263.63 mgと充分多く含まれている

また、別の論文だと湿重量換算で100mg中323mgとなっており鶏レバーの湿重量より若干高い程度となっている。

専門企業も痛風や高尿酸血症患者への影響は今後の研究が待たれる為自分達も注意しているが、気にする方は食べないほうが良いかもしれないと明言した上で「いずれにしても結局は食べる量の問題です。」と締めた。



これの亜種として「コオロギには酸化グラフェンが含まれている!」と言うデマも散出てきたそれだけでもかなり胡散臭いのに、派生として「電池人間に変えるのが目的!」だの「コオロギは食べるワクチン!」等と更なる荒唐無稽なデマも散見している

どうもCVD法という電子部品などの基材・基板の表面にあたる薄膜を作る技術ココナッツの殻とコオロギの脚を用いてグラフェンの合成させたのを食用コオロギとこじつけたのがオチのようだ。

 

陰謀論⑦~コオロギよりも農業や酪農を重視しろ!?~


7つめは「先に減反政策や酪農問題を解決すべきなのにコオロギ食に現を抜かしている!」と言うデマだ。最早「それって貴方の感想ですよね」案件だが、既存の農業問題の話と昆虫食などの将来に向けた未来への研究投資の話は全く別の話だろう。




特に酪農に関して言えば国がコオロギ以上に苦労しているのが現状だ。ただ、今回はコオロギに関する話が目的の為、内容を詳しく話すと本題から連れるのでへんないきものチャンネル氏の「牛乳・バターが安くならない理由」にて詳しくまとめられているのでおすすめする。



これの亜種として「コオロギの餌であるおからを人間が食べるべきなのにコオロギに食わすのは利権だ!と言う最もらしいデマを主張する者もいるが、産業廃棄物として存在するおからを食料への再利用は既に存在している

というか、普段はヴィーガンなどの菜食主義者を「押し付けるな!」と否定している人達に寄り添う陰謀論者昆虫食の話題になるとこぞって植物性タンパク質のおからを「コオロギに食べさせるな!」と持ち上げるのは本末転倒ではないのかと私は思う。


陰謀論⑧~河野太郎大臣はコオロギをゴリ推ししている!?~



8つめは「河野太郎がコオロギを激推ししている!」というデマで、一時期河野大臣のWikipediaに対して「コオロギ太郎」と揶揄する名前に変える等かなり悪質な行為を行っていた。これに関しては河野大臣本人がX上で否定している




それよりも前から右派系陰謀論者にとって河野大臣は「中国と繋がりのある売国奴」「女系天皇を推進している!」等と嫌われいた。ただ、それに関する陰謀論に関する話は長くなるのと余り関係ないので、PULP氏と呼ばれる陰謀論ウォッチャーが多く纏めている為見て欲しい


ヘ・・・・・ヘイトスピーチ・・・・・・


コオロギ太郎と呼ばれる様になったのは、2022年のベンチャー企業発表会にてコオロギを食べていた事がこのデマの発端らしい。質が悪い事にコオロギの頭に河野大臣の顔を付けるヘイトスピーチ認定されかねないコラージュを作成しているやからもいた



何故ならヘイトスピーチの定義としては特定の民族や国籍、宗教、性別、職業、身分に属する個人や集団に対して、憎悪を剥き出しにした極端な悪口や中傷、脅迫的言動、侮蔑的言動の事で、その中には昆虫を含めた動物に例えるものも含まれているからだ。


陰謀論⑦~食品安全委員会はコオロギの危険性を認めた!?~



最後に「食品安全委員会が注意喚起した!」というデマで、その情報の大本は欧州食品安全機関(EFSA)のヨーロッパイエコオロギに関するリスクプロファイルの様だが、リスクを除去できると言い切れないまたはデータ不足と判定されたに過ぎず危険と結論付けた訳ではない



例えば「好気性細菌数が高い」は加熱していない全ての食品群に当てはまるが、コオロギは乾燥したものを加熱するので問題ではない。「加熱処理後も芽胞形成菌の生存が確認される」でもレトルト食品の条件(120℃以上で4分間以上の加熱)であれば、芽胞形成菌は死滅するが、そんな加熱をしていない食品は多数ある

昆虫及び昆虫由来製品のアレルギー源性の問題」は後述するコオロギ普及のネックだった点で解説するのでおいといて、「重金属類(カドミウム等)が生物濃縮される問題」に関しても他の生物同様に餌や環境によって変わると結論付けられた



何より2022年からEUでも規定の基準や条件を満たす限り食べても安全だと判断し、ゴミムシダマシの幼虫であるミルワームイナゴに続き、コオロギを3番目の「新規食品(Novel Food)」として正式に承認した。栄養価が高く境負荷が低いので、そのままスナックとして食べたり菓子に加えたりするようだ。


コオロギ普及に関するネック~アレルギーと飼育難易度~



最後に解説するのはコオロギ普及に関するネックについてだ。先ずはアレルギーで、昆虫は甲殻類に近縁の為甲殻類アレルギーが発祥する事が知られている。具体的な例としては、2021年にコオロギを食べた地下アイドルメンバーの1人が強いアレルギーを発症した事件があった。



当初は余り注目されなかったが、今回の陰謀論騒ぎで注目され、「コオロギを食べた地下アイドルが入院!等と陰謀論者の憶測をまとめサイトの拡散が切っ掛けでネットで話題になったが、コオロギを食べた地下アイドル本人が否定した。

曰く「罰ゲームとは言え普通に美味かったんで自らバクバク食べていた」「夕方頃から息苦しさを感じ、夜には喘息、蕁麻疹の症状が出た」「調べてみたらオロギでも甲殻類アレルギーが発症するのはわかった」「その後はアレルギーの薬飲んだら落ち着いた入院はしていない」との事だ。



もう1つのネックである飼育難易度の高さに関しては、そもそも家畜にすると為には過密な環境下での生活を余儀なくされる。だが、コオロギは共食いをしまくる上に湿度管理をミスると気門が塞がり窒息死する等意外と繊細な生き物なのだ。



その結果1kg1万2000円程の超高級品となっており、陰謀論者が良く使う「食べ物の中にこっそり入れている!なんて事ができそうにないのは明白だ。ただ、このままだとコオロギは金持ちが食べ貧乏民はステーキを食べる暮らしとなるだろう。



それはコオロギパウダーを扱っている会社も認知しているようで、へんないきものチャンネル氏がFUTURENAUTに訪ねてきた際には「共食いに関しては栄養価の高い餌や飼育密度である程度コントロール可能」「温度や湿度は養殖に適した温度は30℃なので、エアコンで調節している」と解答した。

おまけ~上野の昆虫展にて各種昆虫食を購入してみた~ 



ここからは、私が上野国立科学博物館で7月後半~10月中頃まで行っていた特別展「昆虫MANIAC」の帰りに複数の昆虫食品を購入し、その後実食した感想を語っていく。私は普段は特別展の図録を買う位しかしないが、興味本位で幾つかを購入した。

具体的にはローストコオロギに調味粉をかけた物コオロギパウダー配合のスナック菓子やクッキーや煎餅コオロギの出汁とツクネを使った和風カレーと和風リゾットタガメを使った炭酸飲料を購入した

実食した感想は、まずローストコオロギは一部の味を除くとコオロギ特有の焦げたエビの尻尾の様な苦味が残りやすいので耐性の無い人は難しいと感じた。

一方、スナック菓子や煎餅やクッキーはコオロギの味が全くせず普通のお菓子を食べているのと変わらないと感じた。それはカレー及びリゾットほぼ同じだが、優しい味をしており食べやすいと感じた。

また、タガメを使った炭酸飲料も当初は余り期待していなかったがいざ飲んでみると以外にも独特の甘さが病みつきになり、今まで食べてきた昆虫食で一番美味しいと感じた



なお私は昆虫を食べたのはこれが初めてでははい今から6年前の2018年の昆虫展にて出品されていた昆虫食品を購入したその時買ったのはローストコオロギとチーズ味のスナック菓子が一緒に入っている菓子だった

味に関してはスナック菓子のチーズ風味とコオロギの苦味がマッチにて美味しかった。今までの流れを総括すると、私が思うに昆虫食を始めるならタガメサイダーやコオロギパウダー配合の菓子や惣菜から始めるのをオススメする


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