認知症と体の衰え(フレイル)
認知症と体の衰えの深い関係
認知症は、体の衰えととても深い関係にあります。アメリカの研究で、運動不足は認知症の大きなリスクとなることが分かりました1)。運動不足の人は1.82倍も認知症になるリスクがあるのです。
「フレイル」という状態を
ご存知ですか?
「フレイル」という言葉をご存知でしょうか?
フレイルの語源は「frailty(虚弱)」です。フレイルは「加齢に伴う予備能力の低下のために、様々なストレスに対する抵抗力・回復力が低下した状態」とされています。つまり、高齢による体の衰えと弱まりということですね。超高齢社会の日本でフレイルは重要なキーワードです。
フレイルとして現れる体の状態は主に次の5つです。
フレイルの特徴
1.からだの縮み(体重減少)
2. 疲れやすさ
3. 身体活動量の低下(活動の少なさ)
4. 歩行速度の低下(動作の緩慢さ)
5. 握力の低下
認知症が重症化
それと同時に体の衰えも重症化
脳解剖の検査(病理検査)をしたところ、認知症の症状が現れていても現れていなくても、高齢者のアルツハイマー型認知症とフレイルは関連していたという研究データが発表されました2)。
また、認知症とフレイルは、進行度合いもリンクしている可能性があります。病理検査でみた時のアルツハイマー型認知症の重症度とフレイルの重症度合いの間には相関がみられました2)。アルツハイマー型認知症が重くなっている人では、フ体の衰えや弱まりの度合いも大きいのです。
フレイルによる体重減少は
アルツハイマーの予兆!?
体重が減ってフレイルになることは多くありますが、その後に認知症になる、ということがしばしばあるようです。
体重減少とアルツハイマー型認知症との関連を調べた研究では、アルツハイマー型認知症を発症した人は、その約 1 年前に、体重減少率が 2 倍になったというデータが報告されています3)。しかもそれは「除脂肪体重(体重から脂肪を引いた値。筋肉・骨・内臓・血液などで構成され、50%程度を筋肉が占める)」だというのです。
つまり、老化により筋肉の量が減って体が弱くなった状態=フレイルになった後に、アルツハイマー型認知症を発症した人が多くいたということになります。
要介護になる前に
フレイルや認知症の進行を食い止めろ!
高齢で要介護状態となると基本的には元の健康状態には戻りません。一方、フレイルは要介護状態となる手前の段階で、健康な状態に戻ることができる段階です。
運動不足を解消して、フレイルや認知症を予防することが健康寿命を伸ばす秘訣です。
でもフレイルや認知症にならないためには、何の運動をどのくらいすれば良いの? この点についての科学的な研究は別の記事で紹介します。
1) Barnes et al. Lancet Neurol. 2011;10(9):819-28.
2) Bushman AS et al. Neurology. 2008 ;71(7):499-504.
3) Johnson DK et al. Arch Neurol. 2006 Sep;63(9):1312-7.
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