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「胃カメラで異常なしなのに痛い!」―“内臓痛”と“体性痛”が生む不思議な腹痛

はじめに
「上腹部が痛くて病院に行ったものの、胃カメラや腹部超音波検査では特に異常が見つからなかった」。そんな経験をお持ちの方は少なくありません。では、なぜ目立った病変がないのに、お腹が痛く感じることがあるのでしょうか?ときに慢性的に続き上腹部の痛みにより精神的に病んでしまうこともすこなくありません。そのメカニズムを解き明かすカギは、私たちが感じる痛みが「内臓痛」と「体性痛」という2つのタイプに分かれることにあります。

内臓痛(ビスセラルペイン):ぼんやりとした痛み
「内臓痛」は、胃や腸、肝臓などの内臓から発生する痛みです。実は内臓からくる痛みは、脳がその場所を正確に特定しにくいという特徴があります。胃や腸などの内臓には、皮膚のように細かく区別された「痛みセンサー」の地図がありません。
そのため、内臓でトラブル(炎症や刺激など)が起こったとしても、脳は「このあたりが痛いような気がする」という、あいまいな信号しか受け取れず、“お腹のどこかが痛い”程度に感じられます。例えば、虫垂炎が初期に起こると、実際には右下腹部に異常があるのに、最初はみぞおち(上腹部)まわりに痛みを感じることがあります。これは典型的な「内臓痛」のあいまいさによるものです。

体性痛(ソマティックペイン):はっきりとした痛み
一方、炎症が進んで虫垂の炎症が腹膜と呼ばれるお腹の内側の膜(特に壁側腹膜)まで達すると、痛みは“体性痛”に切り替わります。壁側腹膜には皮膚と同様に、きめ細かく分布した痛みの受容体が存在し、ここが刺激されると「右下腹部が痛い!」といった、はっきりとした位置が分かる痛みになります。これが内臓痛から体性痛へ移行した状態です。

異常なしなのに痛い:過敏な内臓神経が原因?
では、胃カメラで異常が見つからない場合、痛みはどこからくるのでしょう?
原因のひとつは「内臓神経の過敏化」です。ストレスや生活習慣などで神経が敏感になると、わずかな刺激でも内臓痛の信号が強く脳に伝わりやすくなります。結果として、検査では特に炎症や潰瘍が見つからなくても、「なんとなく胃あたりが痛む」といった内臓痛を感じることがあるのです。腹膜まで炎症が及んでいなければ、体性痛ほど明確な痛みの位置は特定されません。

まとめ:痛みは必ずしも目に見える異常と一致しない
私たちが感じる腹痛は、内臓痛と体性痛という2つのメカニズムが組み合わさっています。内臓痛はぼんやりしていて原因箇所が特定しにくく、体性痛は腹膜まで刺激が及ぶことで初めて「ここが痛い!」と明確になります。
もし検査で「異常なし」と言われても、内臓神経の過敏化などによって痛みが生じることがあるのです。こうした痛みの仕組みを知っておくと、「なぜ痛いのか分からない」という不安が、少し和らぐかもしれません。

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