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大量の嘔吐と腹痛…胃腸炎だと思ったら腸閉塞?見過ごせない症状の違いと対処法

導入
突然の激しい嘔吐や腹痛に襲われたとき、多くの人は「胃腸炎かな?」と考えるでしょう。しかし、似たような症状を示す病気として「腸閉塞」があります。さらに、一見「胃腸炎」に分類されそうな「好酸球性胃腸炎」という特殊な病態は、腸閉塞に似た症状を引き起こすこともあります(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)。こうした違いを理解し、早めに対処することが健康を守るカギです。

1. 胃腸炎と腸閉塞、症状はどう似ている?
一般的な胃腸炎はウイルスや細菌などの感染、アレルギーなどで胃や腸が炎症を起こし、嘔吐や腹痛、下痢、時に発熱を伴います(1)(2)(9)。一方、腸閉塞は物理的または機能的に腸管内容物が先へ進めなくなった状態で、強い腹痛や嘔吐、腹部膨満、ガスや便が出ないといった症状が特徴です。しかし、初期段階ではどちらも「お腹が痛い」「吐く」といった点で似ているため、判断が難しい場合があります。

2. 好酸球性胃腸炎という特殊な病気
「好酸球性胃腸炎」は、好酸球と呼ばれる特定の白血球が胃や腸の壁に浸潤して炎症を引き起こすまれな病態です(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)。通常の胃腸炎のように嘔吐や腹痛、下痢がみられることもありますが、腸管壁が厚くなり狭くなることで、腸閉塞に似た症状を引き起こすこともあります(2)(4)(5)(6)(7)(8)(9)。これにより、患者は一見単なる胃腸炎と思っていた症状が、実は好酸球性胃腸炎による腸閉塞様症状だった、というケースもあるのです。

3. 見分けるポイントと注意点
胃腸炎の場合、多くは数日~1週間ほどで自然軽快し、水分補給や安静で回復傾向が見られます。一方で、腸閉塞や好酸球性胃腸炎による狭窄の場合は、下痢ではなく便やガスが出なくなり、腹部の極端な膨満や継続的な嘔吐が特徴です(2)(5)(6)(7)(9)。特に、激しい嘔吐が続き、腹痛が繰り返し波打つようにやってくる、あるいは何日も排便や排ガスがない場合は、早期に専門医を受診しましょう。

4. 医療機関を受診する目安
「また吐いた」「お腹が痛い」だけでは胃腸炎と信じ込みがちですが、
• 嘔吐が止まらない
• 腹部が異常に張っている
• ガスや便が全く出ない
• 激しい腹痛が繰り返し起こる
といった場合は、ただの胃腸炎ではない可能性があります。速やかに消化器内科や救急外来を受診することが大切です。画像検査(X線、CT、超音波)で腸閉塞の有無や、腸壁の厚みから好酸球性胃腸炎などを疑うことができます(1)(2)(4)(5)(7)(9)。

5. 治療法と予後
腸閉塞の場合、軽症例では腸を休めるための点滴治療、重症例では手術で閉塞を解除します。好酸球性胃腸炎が原因の場合、ステロイド治療や、必要に応じて狭い部分の切除で症状が改善するケースもあります(2)(5)(6)(7)(9)。早い段階での適切な治療が、その後の経過を大きく左右します。

まとめ
嘔吐や腹痛は、単純な胃腸炎だけでなく、腸閉塞や好酸球性胃腸炎による閉塞様症状など、多様な原因が潜んでいます。一見似た症状でも、長引く嘔吐や腹部膨満、排便・排ガス困難などがあれば、放置せず医療機関へ足を運びましょう。正しい知識と早期の受診が、大きなトラブルを回避する鍵となります。

引用文献一覧(文中で参照した文献番号)
(1) Steele R, et al. “Eosinophilic Gastroenteritis Presenting as Acute Intestinal Obstruction.” Scottish Medical Journal. 1983.
(2) Yun M, et al. “Eosinophilic gastroenteritis presenting as small bowel obstruction: a case report and review of the literature.” World J Gastroenterol. 2007;110Citations.
(3) Schulze K, et al. “Eosinophilic gastroenteritis involving the ileocecal area.” Dis Colon Rectum. 1979;32Citations.
(4) Amitha K, et al. “Eosinophilic Gastroenteritis Presenting as Intestinal Obstruction - A Case Series.” 2011;4Citations.
(5) Wig J, et al. “Eosinophilic gastroenteritis presenting as acute intestinal obstruction.” Indian J Gastroenterol. 1995;5Citations.
(6) Krishnan M. “Eosinophilic Gastroenteritis - A Rare Cause of Intestinal Obstruction.” University Journal of Medicine and Medical Specialities. 2017;0Citations.
(7) Agarwal I, et al. “Eosinophilic Myenteric Ganglionitis: A Rare Cause of Chronic Intestinal Pseudo‐obstruction: 236.” Am J Clin Pathol. 2018;1Citation.
(8) Al Maksoud AM, et al. “Obstructive eosinophilic gastroenteritis in a patient with rheumatoid arthritis.” BMJ Case Reports. 2015;1Citation.
(9) Ingle S, et al. “Eosinophilic gastroenteritis: an unusual type of gastroenteritis.” World J Gastroenterol. 2013;148Citations.
(10) Buhl MS, et al. “Enhanced recovery after surgery and intestinal obstruction: A scoping review.” World J Surg. 2024;0Citations.

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池原久朝 / Hisatomo Ikehara, MD, PhD
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