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ダイシ哲学の限界と突破に必要なピース(プレミアリーグ第12節ブレントフォード戦レビュー)

11月24日に行われたプレミアリーグ12節、エバートン対ブレントフォードの試合。序盤はカウンターや大きなサイドチェンジを駆使しながらブレントフォードゴールに迫り、エバトニアンも二試合ぶりの得点を今か今かと待っていた。さらに前半41分、ブレントフォード6番のノアゴールがピックフォードへの足裏タックルにより、VARの介入もあり退場となった。この時点でエバートンの勝ちを確信したエバトニアンも多いだろう、しかしこの退場はむしろ向かい風となってしまった。この試合で浮き彫りになったエバートンの攻撃時の課題について今回は紐解いていく。


ノアゴール退場前の攻撃

エバートンはボール保持時、4-2-3-1で攻撃を組み立てていく。今期のエバートンに見られるビルドアップの例としては、ミコレンコからルインへ当てる縦パス、タルコフスキから両ハーフへのロングパスなどの長距離パスを多用したものだ。
相手陣内に押し込んだ後の攻撃は、ドゥクレが中盤の位置からボックス内までポジションを上げ、サイドからのクロスをルインと共に狙う、というのがチーム全体として用意された形なのだろう。実際、第7節のニューカッスル戦では右サイドでボールを持ったガーナーのクロスからドゥクレがヘディングで合わせ、ネットを揺らしている(VARによってオフサイド判定)。
問題は、これ以外の明確な戦術が見えないことだ。インディアイのドリブル、マクニールのミドルシュート、ゲイエの攻撃参加、いずれも魅力的で期待感があることに変わりはない、しかしどれも個人の力量頼みでチームプレイではないのだ。

(左)基本フォーメーション4-2-3-1
(右)右サイドでボールを保持する際の一例

ノアゴール退場後の攻撃

ブレントフォードが10人になり、いわゆるドン引き状態になった。クロスを上げる戦術をとるエバートンにとって、これほど相性の悪い戦術はないだろう。ノアゴール退場前と違い、リンストロムやインディアイ、さらにはサイドバックであるヤング、ミコレンコまで高い位置でボールを持てるようになった。ただ、ボックス内でクロスを要求するのはルインとドゥクレの二人のみで、ドン引いた状態のブレントフォードの選手にとってマンマークで対応することは簡単すぎた。クロスを上げては弾かれの単調で、低クオリティの攻撃はハーフタイム後も続いた。
そんな攻撃にアクセントを加えたのは72分にマンガラと共に投入されたギニアビサウ代表ベトだ。

ベト

この投入によって、フォーメーションはルインとベトを2トップとした4-4-2に変更され、攻撃にもリズムが生まれた。私はベトの特徴として抜け出しの上手さを上げる。特にディフェンダーの視界外からのダイアゴナルランに関しては一級品だ。右サイドにポジションを移したマクニールの左足からのスルーパスにベトが抜け出す、この形はこの試合を通して2,3回は見られ、相手にとって脅威になっていた。しかし得点と言う成果は得られないまま試合終了の笛は鳴り、グディソンパークはブーイングで満たされた。

マクニールのパスとベトの抜け出しの図

ダイシ哲学の証明に必要なピース

ダイシが就任してから2年が経とうとしている。先ほどは今回のような展開の試合が今までになかったかのように書いたが、就任初期からエバートンの試合を見ているエバトニアンにとって、このような展開は見飽きてると言っていい。このような試合を見るたびエバトニアンはこう思っている。クロスを上げられる選手がいればな、と。「クロスを上げられる選手?ヤングやゲイエがいるじゃないかと!」そう反論するプレミアリーグのファンはいるだろう、しかし私が言いたいのはそういうことではないのだ。
かつてエバートンに所属していたディーニュやハメス・ロドリゲスのような、「この選手にクロスを上げられたら確実に決定機を作られる!」そう思わせるパススキルを持つ選手がダイシフットボールには不可欠だと考えている。
再び彼らのようなクオリティのパスを出せる選手が必要とされている。私は何も彼らに戻ってきてほしいなどと言いたいわけではない(もちろん帰ってきてくれればそれが1番いいのだが)。今いる既存の選手、サイドバックであればミコレンコやパターソン、中盤であればマクニールやガーナーなど、若い選手がこれから伸びてきて、彼らのような絶対的な選手となってくれる可能性を私は信じている。

(左)最近フランス代表として直接FK沈めたリュカ・ディーニュ
(右)エバートン時代のハメス・ロドリゲス

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