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「犯罪者を作る」無人販売
①何のための無人販売?
最近動画やニュースなどで無人販売店の防犯カメラの画像が流され、お金を払わず商品を盗む人を追いかけて捕まえるシーンを見ました。
犯人がわざわざお金を入れるふりをしたり、味を占めて何度も盗みに来るようになり、経営者が防犯カメラをチェックして捕まえようと待ち伏せする様子を見て、「これはいったい何をやっているんだろう?」を思いました。
私から見ると盗ませるために無人にして、わざわざ手間をかけて捕まえて犯罪者にしているようにしか見えなかったからです。
②「お金をいただかないとお客様をドロボウにしてしまう」
私の会社では特に代金の回収に力を入れているのですが、その際に社員に伝えるのが「お金をいただかないとお客様をドロボウにしてしまう」という言葉です。
お金をいただければ「お客様」としてサービスができ、ありがたい存在なのですが、いただけなければ商品を盗んでいるだけのドロボウです。
法律的には違うのでしょうが、わたしはそう考えて社員に発破をかけています。
「あなたはお客様をドロボウにするつもりですか?」
③人間は弱い…
私の会社は田舎にあるので、当然私も社員もお客様もみんな田舎者です。
どうしてもいい意味で優しい、悪い意味でだらしない人が多くなります。
私もだらしない方なのですが、実家の経営が厳しくなり立て直しで戻った時に代金の回収状況を確認してさすがに愕然としました。
月商の1.5カ月分の代金を回収できておらず、更に最大で10年近く一度も支払いをしていないお客様が何人もいたからです。
社員に聞くと「いくら請求しても支払ってくれない」、お客様に聞くと「請求されてないから払う必要がない」、再度社員に聞くと「請求書は入れた」、するとお客様は「言われてないから払わないでいい」…
結局社員は回収しなくても自分に損が無いから気にしないし、お客様も払わないでいい理由を探してしまう状態で、それを長い間繰り返して会社を倒産寸前まで追い込んでいました。
残念ながら経営者が一番悪いのですが、みんなが誰かのせいにして悪い状況を放置して、悪化しまっていたのです。
④人間は軽い気持ちでルールを破るもの
結果として、社員には顧客単位で回収を厳しく指導して、お客様には最低限の支払いが無いと商品の提供をしないという対応を徹底することで、代金回収問題を解消させていきましたが、貸倒処理を含めて20年の時間を浪費してしまいました。
「額が小さいから」「言われないから」「商品の提供が止まらないから」と、お客様のハードルを下げ続けた私たちが悪かったと反省しています。
同じように社員に対しても、社内の回収ルールを破っても放置していたために経営者として反省しています。
おかげで「人間は軽い気持ちでルールを破るもの」だと、分かっているようで理解できていなかったことを、本当の意味で理解できるようになりました。
⑤無人販売はモラルハザードを生む仕組み
昔の無人販売とは余ったものを少しでもお金にしたり、ダメにするくらいならあげるといった趣旨であったと思いますが、それでも「盗む人を作る」と好きな考え方ではありませんでした。
しかし今流行っている無人販売はただ「人件費がかからなくて儲かる」という理由で増えています。
そして盗む人がいたら防犯カメラで撮影して捕まえればいいと。
防犯カメラによる抑止効果もあるとは思いますが、基本的に対面に比べ盗むことへのハードルが低く、心の弱い人や余裕のない人が「魔が差し」やすい状況だと思います。
どんな人でもちょっとしたズルで得をしたような「負の成功体験」を持っているものです。
無人販売はこの「ちょっとくらい」を増幅させるイヤな仕組みだと思います。
「ルールを破ったやつが悪い」という考え方は当たり前ですが、同時に「ルールに無いことはしてもいい」という考え方を助長するものでもあります。
横領などの不正に対してもそうですが、まずは誰かに犯罪を犯させないための「いい意味での性悪説」に基づいた仕組みを持たないといけないと思います。
その方がみんなが幸せになれる気がします。