かって私はチェーンスモーカーでした
昔はスモーカーでした。禁煙挫折してました。
私は中年のおっさんだけれど、これでも若いときはありました。当たり前ですけどね。
成人する前からタバコは吸ってました。成人を機にやめてみようかと思ったりしましたけれど、その当時はやめれませんでした。
大学の時は1日1箱も吸わなかったけれど、しばらくして東京で暮らしているときは気が付くと1日2箱半は吸ってました。
歩きたばこはもちろんのこと、寝たばこもやってました。朝、目が覚めるとまぶしい朝日の中でまずはタバコ。そのまま寝てしまい、胸をやけどして目が覚めたなんてこともありましたよ。まぁ、チェーンスモーカーっていうんでしょうか。片時もタバコを持ってないときはありませんでした。ある時など、灰皿にタバコを置いたら前の火のついたタバコが置いてあったなんてこともあります。
禁煙はしょっちゅうです。1年の行事のように禁煙してました。そのうち「僕は禁煙のプロです。100回は禁煙してますから」というのが、定番のジョークでした。
たいていやめたと決めて、最後の一本を吸います。
そのうちイライラしてきて、挫折します。挫折しなくても、誰かに1本だけもらいます。これが最後と言いながら。次の日には、あれが最後じゃなかったのといわれるようになります。さあ、とか言って煙に巻くことをします。スモーカーだけに。
長くて1週間持ちませんでしたね。お酒の席とか誰かにねだったりして。
タバコを止めるサブリミナルテープを聞いたり、いろいろ試しましたが、うまくはいきませんでした。
狭いアパートの部屋は、気か付くと煙がたなびいて、雲を形作っている事すらありました。雷は鳴りませんでしたが。
これは、今思うと禁煙が目的ではなく「禁煙をしようとしている自分をアピールする」ことが目的だったように思います。そういう自分をかっこいいと思ってくれと思っていたのでしょうか。禁煙しようとしてないのだからできる訳はありません。
タバコをやめた方法
もちろん、私なりの方法です。誰かがまねしてうまくいくとは思いません。私が成功した方法をちらりと紹介します。
私はの方法は、何かの冊子で読んだ方法でした。それを独自に解釈して適当に実践したものです。
1, メリットデメリットを書き出してみる。
部屋が臭くなるとか、服が匂うとかそういうことです。女の子が嫌がるとかもいいです。
精神の安定とか、太らないなんてメリットは少なかったです。これをタバコを吸いながら書き出してました。これでなぜ禁煙するのか、理由づけをはっきりさせるには役立ちました。
2,お金の計算をしてみる。
たいてい皆やってますよね。吸わなかったらこれだけ残るとか。実際にはきちんと貯めないと残らないんですが、ちょっと現実を見てみるわけです。
500円×2箱×31日。1ヵ月31000円ですね。私の時はもっと安かったけれど。1年にして、372000円です。これで好きなもの購入できませんか? 現金として残んないので無理ですが。
3,すっぱりやめる。
ここまではタバコを吸いながらやってました。で、デメリットとかお金とかの計算を書いた紙をいつもぼんやりと見てました。禁煙の理由をはっきりさせます。それは誰のためなのか。理由をはっきりさせて煙草を吸わない生活という目的を作ります。まだ、喫煙者にとって肩身が狭い世界ではなかったですが、タバコをやめることのできる自分をアピールしたかったのかもしれません。
それから日にちを決めて、タバコを捨てました。一本しか吸ってなかったタバコをクシャってねじり、灰皿や集めていたライター類と一緒に袋に入れて、ゴミの日に出しました。
4,我慢するのは次の一本
吸いたくなって我慢するのは次の一本だけです。次の一本を吸わない。大抵失敗するのは、これを吸ったらやめる、ここまで我慢したので一本だけ吸う。これを考えてしまうから。
その次の一本だけを我慢します。これが意外にうまくいくコツだと思います。長いことは考えない。今だけ次の一本だけを吸わないと。次の一本だけと思うと意外と我慢できるんです。もし吸ったら今まで我慢したことが無駄になるよと思ったりもしました。
5,ご褒美をあげる
私は禁煙のご褒美を自分にあげてました。1日とか、3日とかはちょっとしたうまいもの。1週間でもあげてたな。
1ヵ月目でカメラを買いました。もちろん、禁煙するより高くつきましたけど。次の1ヵ月でレンズ。その次もレンズ。タバコを吸うよりもカメラ片手に街に繰り出して被写体を探してました。
そんなこんなで、私は禁煙の海に漕ぎ出したのです。
禁煙はうまくいくか
いきます。というか、かなり長い時間が必要です。指先のタバコのにおいはなかなかなくなりません。歯もすぐには白くならないのです。
1年たっても、3年たっても肺の中から突然タバコの匂いがよみがえってくる事があるのです。ああ、まだ肺は真っ黒なんだろうなぁと思ってました。
禁煙は一生禁煙状態のままだとずっと思ってました。それで次の一本を吸わないことだけを心に決めて過ごしてました。一本吸ったら禁煙は失敗し元に戻ると思っていたのです。
ある日、自主映画を撮っている知り合いから、撮影のオファーがありました。プロじゃなくアマで、たまに役者のまねごとをしてましたから。役はしがないタバコ好きの中年刑事でした。実はタバコを吸っていることが全体の肝になっている話でした。
私はタバコを長年やめていることを監督に話し、ふりだけすることになりました。本当に久しぶりにタバコをくわえて演技しました。タバコの煙を口に含み、ふうっと吐き出したりしてましたが、やはり多少は吸っていたのだと思います。
撮影は数日間の短い時間で終わり、監督も喜んでくれました。なまりがあるのはご愛敬ということで。
しかし、次の日から自分がタバコ臭くって仕方がなかったのです。びっくりしました。ほんの数本吸う真似をして、火を点けたりしていただけなんですけどね。
私はこれでタバコの習慣が戻っても仕方ないと内心思ってました。でも、タバコ臭くてそれが嫌でたまらず戻らなかったです。欲しいとも思わなかったです。
一本吸ったら禁煙は終わりか。いいえ、そのままでした。
吸う習慣がなくなった今は、タバコは欲しいものではなくなっていたのです。
親父は肺がんで亡くなりました。
亡くなる5年前位からは、タバコではなく禁煙するタバコもどきを時々吸ってました。それを医師に告げると、それでも駄目だそうです。
タバコで弱った肺の細胞は弱く、手術には耐えられないだろうとのことでした。歳も歳でしたし、苦しまないようにしながら亡くなりましたけど。
自分もそうなんだろうなぁと思ってました。
でも、今は肺からはタバコの匂いはよみがえってきません。どこからかぷんとただよってきたあの匂いはもうしません。
少しはましになっているのかなとふと思ったりもしています。