松ちゃん

福井県在住。福祉職員 もとデザイナー兼ライター。主な著書に『萬福そば天国』福井新聞社刊 があり、企業や協会関連の50年年史などの作成・歴史部分の文筆に携わる。カメラをもってバイクでツーリング、地元周辺の温泉巡りが趣味。

松ちゃん

福井県在住。福祉職員 もとデザイナー兼ライター。主な著書に『萬福そば天国』福井新聞社刊 があり、企業や協会関連の50年年史などの作成・歴史部分の文筆に携わる。カメラをもってバイクでツーリング、地元周辺の温泉巡りが趣味。

最近の記事

誰かが体験した奇談。其十二『ふふっ』

友人が語る『ふふっ』 ずいぶん前になるけど、週に一回マンガを読みに小さな喫茶店に通っていたんだ。 本当に小さな喫茶店で、夜に客が2、3人という事もあった。照明は明るくなくて、テーブルは3つ、あとは大きな一枚板のカウンターがあって、なじみの客はそこで軽いお酒やジンジャエールなんか飲んでたな。 どちらかと言えばアルコールが似合っていたお店かもしれない。僕はコーヒー一杯で3冊くらい週刊誌を読んでたけどね。 ある日、黒いドレスのようなものを着ている女の人と、普通にジーンズをはいて

    • 誰かが体験した奇談。其十一『顔』

      友人から聞いた話『顔』 昔は、第五の壁と言われるくらいテレビはとりあえずつけているなんて家庭は多かった。我が家も昔はそうだったんだが、今は消えていることが多いな。 うちの息子なんか、テレビなんて全く見ようともしない。 大学生にもなって勉強どころかパソコンでゲームをしてるよ。ヘッドホンとマイクをつけて朝まで騒いでるなんてことがしょっちゅうだった。 聞いてみると、誰だか知らない人とオンラインゲームしてるそうだ。年上だと思っていた人が、実は中学生だったりしたなんて話も聞いたよ。

      • 誰かが体験した奇談。其十『墓場その3』

        『A町Nにある墓場その3』 下着泥棒の話がでるずっと以前の話。 A町Nは、田舎だけあって夜に出歩いている人はめったにいないという。東京の夜を考えてはいけない。田舎の夜は街灯も少なく、本当に暗いんだと、古い友人が言った。 この友人は、深夜に地方銀行の支店の横でぷんとお線香の香りをかいだひとりだった。 そういえば、君もあの墓地で車の電気が消えたことを忘れていたんだよね。僕も、君に言われて線香の香りを思い出したよ。と、話す。どうして忘れていたんだろうね。 それでいとこの話を思

        • 誰かが体験した奇談。其九『墓場その2』

          『A町Nにある墓場その2』 その墓地は広域農道の近くにあり、正面の道はA中学校の正門の横につながっている。墓地を通る道はどこかにちゃんとつながり、昔は町はずれにあったものが今は町の中に組み込まれている。 しかし、昔は中学校は違った場所にあり、墓地は町はずれに位置していた。 農道から曲がれば墓地に出るが、道は墓場の周りにあるだけで、道はコの字型となっていた。つまり、農道から入ると左手に墓地を見ながら進むと道が途切れ、左に曲がらなくてはならない。でも、そこはちょっとした近道でも

          誰かが体験した奇談。其八『墓場』

          『A町Nにある墓場』 本当は、私が体験した話のほうに書くべきだったのだと思う。しかし、どういうわけかこの墓地の話はすっぽりと記憶から抜け落ちていた。 元同僚と話していて、突然記憶の底からよみがえってきた話なのだ。同僚が広域農道で、人をはねた話の時だ。 昔の彼女から聞いた『いわく話』 その墓地のことを聞いたのは昔の彼女からだった。 もとはある町のはずれにある墓地だったという。町も発展し、大きな道路もできて人口も増えたころの話だ。 町はずれにあったはずの墓地もまた、町の発展

          誰かが体験した奇談。其八『墓場』

          誰かが体験した奇談。其七『人心事故』

          元同僚が語る『人身事故』 「ずいぶん前の話なんだが」 元同僚にちょっとした用事で会うことになり、ファミレスで食事しょうということになった。彼は今や優秀なホテルマンになっている。その時、私が最近は奇妙な話などを投稿していると話すと、彼は何か思い出したようだった。 「結構昔の話なんだけど、合併前のA町の広域農道の墓地を知ってるだろ。君がまえに怖い目にあったってはなしていた所」 「その話は、そういえばまだ書いてないな」 「あの話を聞いていたとき思い出したことがあるんだ」 F県旧

          誰かが体験した奇談。其七『人心事故』

          誰かが体験した奇談。其六『ドッペルゲンガー』

          友人が語る『ドッペルゲンガー』 中学生の頃の話なんだけどね。 友人がコーヒーを飲みながら話す。 世の中には7人の自分と似た人がいるって話があるでしょ。そんな話なんだけど。 僕の知り合いに、ある宗教の若い人たちのグループを一生懸命に作っている奴がいたんだよ。まぁ、その宗教の事はどうでもいいんだけど。 中学生のころ、そいつが熱心にあるグループに参加しないか、お茶を飲んで話したり、たのしくキャンプするんだと誘われたんだ。 女の子もいるってことに反応はしなかったんだけど、あんまり熱

          誰かが体験した奇談。其六『ドッペルゲンガー』

          誰かが体験した奇談。其五『以心伝心』

          ライダーが語る『以心伝心』 昔はよく野宿したね。キャンプじゃなくて野宿。 ライダーは走ることが目的だから、キャンプは意外とどうでもいいやって奴はいるんだよ。 だいぶん前だけど、静岡方面の山の中を走り回っていた時があった。 あんまり人の来ないところで、テントを張ってね。朝から走るの、山の中を。 で、同じようなライダーが、たまたま出会って同じ場所でテントを張ることがある。 その日も、俺がテント張ってたら、そいつが来たんだよ。同じようなオフロードバイクで走っている奴。 隣いいで

          誰かが体験した奇談。其五『以心伝心』

          誰かが体験した奇談。其四 『心霊写真』

          友人が語る『心霊写真』 いまさらいう事でもないけど、僕は写真が趣味だ。沼っていう言葉があるけれど、まさにそれだ。若いころから、ボディだなんだと言い出して、レンズにまで凝るようになっちゃうと本当に金食い虫だよ。 昔は、フイルムでの撮影が主だったからお金がかかったね。リバーサルフイルムというのがあって、スライドで見れるから気に入った奴だけ焼いて何とかや安く済まそうと涙ぐましい努力をしてたよ。 そうそう、心霊写真。今はもうデジタルの時代だから枚数を気にせずにとっているけれど、一

          誰かが体験した奇談。其四 『心霊写真』

          誰かが体験した奇談。其三 『怪談の正体』

          叔父が語る『怪談の正体』 叔父は昔、児童文学の作家たちと親しくする機会があったそうだ。児童文学といってもどちらかというとSF寄りの話を書いている作家たちだったということだ。 そんな叔父に怖い話ないかと聞くと、にやりと笑って怪談の正体を知りたくないかと話し出した。 叔父は語る。 昔は、週刊誌のマンガの本には読み物があった。 マンガも好きだったが、そういう読み物も好きだったんだ。 夏になると、いつも怖い話が載っていてね。 全国各地の怪談というものも載っていた。私が住んでいたと

          誰かが体験した奇談。其三 『怪談の正体』

          誰かが体験した奇談。其二 『お台場』

          東京の友人のひとりが語る『お台場』 変わった話と言えば、こんなことを思い出しました。 よくある話かもしれませんが。 今なら東京のお台場と言えば、大きなテレビ局もあり、ちかくには東京ビックサイトもあるし、豊洲なども近くにある東京の名所の一つにもなっているのでは思います。 私がよく行っていた頃は、まだレインボーブリッジが作られている頃で、何もない所でした。それでもお台場海浜公園をたまにデートしたものです。人があまりいないことが気に入ってました。 第三台場の跡が海の中にあって、

          誰かが体験した奇談。其二 『お台場』

          誰かが体験した奇談。其一

          ある女性が語る。『鏡』 それはずっと昔の話です。お断りしておきますが、それほど怖い話ではありませんよ。 でも、あなたは奇妙なことというのは日常で気が付かないほどだとおっしゃるのですから、そういうものかも知れませんね。 私が中学生の頃で話ですから、もう何十年も前の話です。今はすっかりおばぁちゃんですけどね。 私が通っていたのはS市にあるC中です。今でこそ落ち着いた街ですが、昔はS市の中でも振興住宅の多い新しい街でした。 物の怪が住むような伝説の森などもありましたが、新しい

          誰かが体験した奇談。其一

          私が体験した奇妙な事。其七

          十年前の私が語る。『おい』 十年ほど前の事だった。そのころの我が家は、全員で食事をする習わしだった。別に強制ではないが、親父を中心に食事をするのが当たり前だった。 ある日の事だった。 親父は正面からテレビが見える特等席に座っていた。好きな日本酒をちびちびとやりながら家族そろってバラエティ番組を見ながら食事をするのだ。私の席は親父の左隣だった。 おふくろもいるし、小さな子供もいる。嫁さんは、私の顔を見るとご飯をよそい始めた。 いつものなごやかな風景。 私が座ろうとしたとき

          私が体験した奇妙な事。其七

          私が体験した奇妙な事。其六

          ライダーの私が語る。『後ろからくる車』  ずいぶん前の話だ。  私の住むF県は北と南が峠でつながっている。その昔、汽車は峠を避けて海岸近くの線路を走っていたという。今は、長いトンネルが出来てその峠の下を快適につなげているのだが。  海岸線ちかくの線路は、やがて道路になり、たくさんのトンネルがある道となった。それでも、大きな道路とは離れているので通る人はめったにいない。その道路に出るだけでも、迷子になりそうなくらいだった。  そこにあるトンネルの一つは、細くて車一台しか通れな

          私が体験した奇妙な事。其六

          私が体験した奇妙な事。其五

          ライダーの私が語る。『鎮守の森』  東京にしばらく住んでいたことがある。移動には込み合う電車よりバイクのほうがいいとバイクに乗っていたが、性に合っていたらしく、やがてオフロードバイクでテントを持って近くの山に出かけるようになった。  キャンプと言えば聞こえはいいが、昔風でいえば『野営』。走るために目的地まで行ってテントを張り寝るだけ。朝には林道を走るのだ。目的は走ることであり、とにかく眠るところがあればよかった。    都内を離れ、近くの県にあるK湖にはよく出かけて行った。

          私が体験した奇妙な事。其五

          私が体験した奇妙な事。其四

          大学生の私が語る。『どくろ』  私は大学の時、音楽系のサークルに所属していた。自分で歌を作ってライブで発表したり、楽しいサークルだった。  夏には合宿があった。  昼間は、まじめに練習などをしているのだが、夜は怪談サークルとなる。毎夜怖い話を語り、肝試しをするのが毎年の恒例だった。  今思えば、『てけてけ』の原型となる『カシマレイコ』のそのまた原型となる富山の滑川の踏切事故だという『きじまさんの話』などが語られていたのを思い出す。体験談も多くけっこう本格的だったのだ。  

          私が体験した奇妙な事。其四