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なんにもできなかったあの子がついにっ!男になった話しっ!激アツ胸アツ!
愛媛県松山市の小さな港町・三津(もしくは三津浜)。
松山の玄関口だったこの町で、芋の子洗うほどの人でごった返していた景色はもう今昔物語。
それでも店主の個性がきらり光る一品がそろう三津浜商店街は、週末になると人もそぞろそぞろ。
その商店街の一本南の辻にあるのが茶舗de la música (チャポデラムジカ)。
常識を身に纏う人には見えないお店。
冒険したい人や遊び心がある人しか辿り着けないお店。
そんな不思議なお店に、今日も彼奴らがやってきた。
そう…
私の獲物たち…( ̄∀ ̄)
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我が家は家兼雑貨屋。
そして店の真ん中には近所の子供達に懇願されて、駄菓子部門『銭天堂』がある。
その銭天堂には店主Naomi✴︎キャンベルさえもの常識をぶっ飛ばす子供がちらりほらり集まる。
「この子… ヤヴァイな…」
そう感じたのは
「今日は、は、あ、に、200円持ってきましたッ‼︎」と言ってチャラ〜ンと出したお金が
5円玉2枚…。
10円のガムひとつ出し、「これしか買えんよ。」と無情な声で彼(小2)に伝えた。
すると彼は
「えっ((((;゚Д゚)))))))」っという顔になった。
この瞬間
『あ、マジのやつや。これはヤバイ。』と察知。
以来、彼(小2)が来るとまず、持ってきたお金を確認。
だいたい100円を持ってきている。
そしてその100円を預かり、こちらから10円を9枚、5円を2枚揃えて出し
「これ全部でいくら?」と計算させる。
「こ、こんなのカンタン!」
と10,20,30…と数える。
そして90円まで数え、5円玉2枚を指差して
「80,90,90,… …に ひゃく…エン…?」と泣きそうな顔で私を見る。
5円玉2枚が合体して10円になる事を教えて
「10円はどれ?」「これ。」「はいじゃぁ、最初から数えて。」つって。
10円9枚と5円2枚合わせて100円だという事を理解させる。
そして計算したお金から10円の物を買うと10円引かせ、20円の物を買ったら20円引かせる。
彼(小2)が100円の物を買うまで実に20分の時間を要する。
そしてこの作業は
なんと
彼がくるたび
毎回行われている。
ぜんぶ
忘れるのだ。
それでいいのだぁ〜♪
それでいいのだぁ〜♪
じゃねえわ!
彼(小2)の兄(小6)に「計算教えとけっ!」と言うが「こいつに教えても無駄」とハッキリ答えられて終了…。
それでも私は彼(小2)がくるたび毎回毎回10円玉9枚5円玉2枚を出して計算させる。
ある日、彼(小2)がお母さんと一緒に来た。
どうしよう〜…。
と瞬間悩んだけど…。
いつも通り10円玉9枚5円玉2枚を出し計算させ、購入したものも計算させた。
いつも通りの私と彼(小2)のやりとりだった。
次の日。
彼(小2)の兄ちゃんが手に何か持ってやって来た。
「これ、お母さんから。」
マジィ〜〜‼︎
ドラゴンフルーツ‼︎
こんなん絶対買わんし〜〜‼︎
美味い〜〜‼︎
超絶あまい〜〜‼︎
嬉しすぎなんじゃがぁ〜〜‼︎
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そんな嬉しいこともありながら彼(小2)とのやりとりは1年半ほど続いた。
そして
パタリ…。
彼は来なくなった。
元々どこか、なにかあったんだろう彼は小学校を転々としていた。
子供達の間でもあまり受け入れられていなかった彼だけれど、私は面白がって道路にチョークで絵を描かせたり彼が語る空想の武勇伝を聞いていた。
パタリ…と来なくなった数年。
すっかり彼の事なんかを忘れていたある日。
「今晩わ。」と店から声がする。
見ると小5になってずいぶん背も伸びて、目の焦点も合うようになった彼がいた。
「お〜!久しぶりじゃん!元気〜!」
と別段なんて事ない声をかけた。
すると彼は
「はい。元気です。」
と言った。
ちゃ、ちゃんとしたお返事できてる…。
「お菓子買いに来ました」
と言うので
「いくら持ってきたの?」と言うと
「150yenです。兄ちゃんも150yen」
その受け答えから、もう10円玉や5円玉を出す必要が無くなった事を察知した。
そして彼(小5になった)は駄菓子を買い始めた。
「え〜と、これが10円。これが20円だから全部で30円で、あとこれ買える?」
すっ…!すげぇ…!
頭の中で暗算が出来るようになってるっ!
「暗算が出来るようになってるやん!凄いやん!」
と大喜びの私。
彼は得意そうにこう言った。
「いま分数の計算も出来るんよ。超簡単!前もテストで5点とった!」
「何点満点?」
「20点満点!」
…。
オチにしちゃぁ
弱いな…。
もうちょっと頑張ってもらわんとな…。
せめて
2点だった
とか…。
最近学童とかに通い始め、子供がぱったり来なくなり駄菓子部門に力を入れる事を諦め始めていたけど。
また彼が来るかもしれないと、今日は久しぶりに駄菓子を仕入れに走った。
すると…
財布の中に1,500yenしかなくがっかりしていると駄菓子卸しの店主様が
「今度キャンベルさんが出る演劇のチケット買いましょうか?そしたら駄菓子買えますよね?」
とおっしゃってくださった。
今年2月に伊予市にて旗揚げ公演が行われ、それに出演する事になった。
ゲストに竹中直人氏も出てくださる事になり、愛媛がざわついている。
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駄菓子も買えてチケットも売れた。
あとはまた、彼が来て私を楽しませてくれたらそれでいいかな。