見出し画像

パパのいない朝がきた①

元いた小部屋に息子たちと3人で座る
パパを連れて帰るための準備が整うのを待つ

今どきの葬儀屋さんって24時間ダイヤルなんてあるんだね
(留守電だけど)この度初めて知りました!
留守電に入れておくと、始業時間になると連絡をくれるらしい

その間にざっくり思いつくまま連絡を始める
家に置いてきている義両親に伝えてもらえるよう、パパの兄弟に連絡をする
わたしの兄、姉に連絡をし、母にも伝えてもらうように頼む

そんなもろもろのことをしながら、息子たちともいろいろ話す
彼らも動揺してるだろうし、声を上げて泣きたいだろうに、わたしを気遣ってくれる

しばらくすると看護師さんが来て、家につれて帰るための寝台車の手配が9時ごろになると伝えてくれ、それまで別部屋でお待ちください、と

裏口に近い、診療室を抜けた先、静かな小部屋に通される
パパが寝台に横たわっている
うん、ほんとに静かなお顔。
いつも真上を向て眠るパパだったが、今の様子はホントに眠っているときと寸分も違わない
息子たちも、「いつもの格好とおんなじやな」と言っている

椅子に三人並んで腰かける
目の先にはパパの寝顔
パパを入れて4人だけの静かな時間

パパは田舎の長男。家に戻ったら、怒涛の3日間が始まるだろう
村の風習や親族のなにやらで、すぐにバタバタの時間になって、家族だけで過ごせるこの静かな時間はきっとすごく貴重なものだと思った

「家族だけ、4人で過ごせる時間はホントに今だけかもしれんから、どうかこの時間を覚えててほしい」と息子たちに話しかけた

わたしたち夫婦のことを、長男は「めっちゃ仲良しやな」と思っていたらしいが、次男は思春期の出口で「ふたりは熟年離婚するのでは」と思ってたらしい
あらためて「パパとお母さんは50代夫婦としてはおそらく気持ち悪いレベルで仲良しだったこと」をふたりに告げた

わたしとパパのこと
息子たちへの愛情
パパのこと
ポツリポツリといろんな話をして、時に泣いて、
わたしは良い母ではないけれど、かなうことならまたふたりのお母さんになりたいし、またこの4人で家族になりたい、、、なんて話をしていた

それぞれがひとりでパパと話す時間の提案する
ホントにきっとこの静かな時間はもう来ないと思ってた
結果的に、やはり家に帰り、通夜、葬儀と進む中、パパと別れるその時まで、この時間だけが私たちだけの時間だった

交代交代、パパとふたりきりになってお話をする
あとのふたりは廊下で待つ
病棟の中心のほうが、朝の始まりなのか少しにぎやかになり、朝食のにおいが漂ってくる

息子たちが何を話したのかは聞いていない
記憶にとどめていてくれるといいな。。。
わたしはいっぱいお話をしたし、いっぱいキスもした
まだ柔らかさの残るパパのくちびるの感触をいつまでも忘れたくない

しばらくすると、寝台車の準備ができた
白い布に包まれたパパが寝台車に乗せられる
わたしはパパと一緒に乗ることをやめて、息子たちとタクシーで自宅に戻ることにする

タクシー乗り場で初めてまちをながめた
夜中に救急車で来たまちは、どこかわからなくて、通勤や通学の人やバスや車が行きかう様子を見て、朝がきたんだな~って思ってた
わたしと(おそらく息子たちも含めた3人と)町との間に薄い膜のようなものを感じた
パパのいない朝がきた
たった数時間で、わたし(たち)の世界はかわってしまった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?