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あの夜のこと③

救急車の中、わたしに今までの症状を確認した隊員の方が電話をしている
「おそらく解離・・・」の言葉が聞こえる
なかなか受け入れ先が見つからない
家からさほど離れていない場所に停車しながらの連絡

どうも3か所ほど電話をしているようだが、どこも無理っぽい
隊員の方が運転者に向かって、
「仕方がない、いずれにしてもこの症状やったら○○しか無理や」
「ダメもとで○○に向かえ!」と指示を出している

すぐに救急車は動き出し、すぐに高速に乗った

パパは相変わらず苦しそう
負けず嫌いなパパは、苦しいこと、痛いことが悔しいのだろう
「痛い、くそーー!痛い、くそーーーー!」と言い続けている
やはりだるいのか、体制を変えようとするが、なかなか難しい
隊員の方が体を支えてくれて何とか上半身を起こす
「だるいんか?皆さんがちゃんとしてくれてはるで!!」と
わたしはパパの足をさすりながら、言い聞かせるように語り続ける

高速走行になって、隊員の方が再びわたしに聞き取りをする
「いつも飲んでるお薬はありますか?」
「なにか変わった様子は?」
「帰ってきてからどんな感じでこうなりましたか?」
それぞれに質問に答えていくと、隊員の方が
「おそらく、解離かと思います。大動脈解離」とおっしゃった
わたしは静かに深く息を吸い、静かに吐き出しながら
「だと思います」とうなずいた

隊員の方が再び電話をする
「はい、はい!ありがとうございます!実はもう5分もかからないところまで来ています!すぐ到着しますので、お願いします!」
すごくほっとしたように電話を切ると、わたしに向かって
「もうすぐ到着します」と伝えてくださった

わたしはパパと離れることを覚悟し、また彼の足をさすりながらゆっくり話しかける
「痛いか?うん、もう病院に着くって。すぐにようしてくれはるからな(良くしてくださるからな)」

そして顔をぐっと近づけて、聞こえているのか、理解してもらえるのかわからないけれど、
「パパ、大好きやで。。。」と伝えた
呼吸を助けるマスクがなければキスもできたのに。残念やったな。。。

そこからはアッと言うまに救急車は病院に到着
隊員の方、わたしの順に降車し、そしてパパがストレッチャーで降ろされる
「ご家族の方はこちらに!」病院の係りの方に別室に促される
パパの乗ったストレッチャーが反対の方向に素早く押されていく

(ああ、これでおしまい?ここでサヨナラなん?)
(なんかあっけない。。。)
(もう一度会えますように。。。)
きっと望みが薄いことをわかりながらも、目を閉じて万に一つの可能性を全力で祈った

でも、、、、
動いて意識のあるパパの姿は、この時が最後だった

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