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広島お好み焼き屋【皐月】の看板娘のリムは実は竜の姫巫女様でした! 第4話 リムのお家は、広島お好み焼き【皐月】(1)

#創作大賞2023
#お仕事小説部門

 第4話 リムのお家は、広島お好み焼き【皐月】(1)

(はぁ~、今日もしでかしちゃったな)と嘆き。

(ああ、またみんなに迷惑をかけちゃったよ。本当にどうしよう)と。

 自身の肩を落としつつ。

 今日の放課後の出来事を自戒しつつ。

 リムは家の玄関ではなく。

 お店の扉を『ギィ~』と鈍い音をだしながら開けると。

〈ガラン、ガラン〉と。

 鈴の心地良い音が。

 落ち込み、俯く、リムの耳へと聞こえてくる。

 そう家のお店広島お好み焼き屋【皐月】へと。

 ほら、お客様が来店したよ!

 ほら、おいでなさったよ! と。

【皐月】の店内にいる者……。

 お店の店主へと知らせれば。

「いらっしゃいませ!」と。

 店内の奥から大変に明るく。

 そう威勢がよく。

 そして涼やかな気持ちよい声音での掛け声がリムへとかけられ。

【皐月】の店内へと響き渡れば。

〈ジュ〉

〈ジュ、ジュ〉と。

 肉、玉子、キャベツにもやしと青ネギ。

 そしてそば麺、うどん麺、ピリ辛麺と。

 広島を代表するお好み焼きソースなどが、香ばしく炒め、焼かれる音と共に。

〈ブォーン!〉と激しい音──。

 そう換気用のダクトが回る音も聞こえるから。

 リム達、竜神一家が経営する【広島お好み焼き屋皐月】の店内で。

 大変に香ばしく、美味しい香りと、が。

 お店の店主の掛け声と共に。

 リムの耳へとピクピクと聞こえ、鼻の鼻孔を刺激するけれど。

 リムは今日、中学校の放課後に。

 学級委員長の理香ちゃんを驚愕させた失態があるから。

 只今リムは自戒中なので。

 大変に元気なく、気落ちした声音で。

「パパ~、ただいま~」と。

 リムが声を漏らせば。

「……ん? あっ! リムか、お帰り」と。

 リムの大事なパパから言葉が返ると。

「リム~、お帰りなさい~」と。

 リムのパパ以外の女性の声も聞こえてきたから。

 今まで俯き、力無く歩いていたリムだけれど。

 慌てて自身の頭を上げ。

「あれ? 母上、今日のお仕事は早く終わったんだね?」と。

 そう、リムのパパ……。

 みんなも覚えているとは思うけれど。

 リムの父上、竜神さまカイトの転生者……。

 この世に生まれ変わった、現代の竜神さま竜田海斗の横に並ぶ、銀髪に金色の瞳を持つ、麗しい貴婦人は、リムの母上であり。

 竜神さま海斗に代わって桃源郷……。

 この世界の物の怪と呼ばれる。

 妖怪達が住む世界を収めている太后陛下さまなの。

 だから家への帰宅はいつも遅いのだけれど。

 今日は早く帰宅をされているから、リムが正直驚いていると。

「リム、どうしたの? 今日は何だか元気がないけれど」

 店の奥……。

 それもお店の厨房の奥にあるテイクアウトコーナーから少女の声……。

 そう、以前みなさんも見たことがあるとは思うけれど。

 黒髪に紅玉の瞳……。

 容姿端麗で才女……。

 次期リムのパパと仲良く肩を並べ。

 リム達竜の姫巫女達を束ねる太后陛下となられる。

 リムの姉上からも声がかかるから。

「あれ? 姉上も高校生なのに。中学生のリムよりも早く帰宅が早くできたんだね」と。

 リムは自身の首を傾げながら姉上へと問いかける。

「うん、今日からね、試験週間だから、学園の方も早く終わったのよ。リム」と。

 姉上は、リムへと笑みをくれながら告げてきた。

 でも日本の学生の試験週間と言えば。

 大半の人達が自身の部屋に篭り。

 自分の苦手教科を克服するために。

 勉強に明け暮れる一週間だから。

「姉上~、お店のお手伝いなんかしていて大丈夫なの? 部屋に入って試験勉強をする方がいいんじゃないかな? ここは。お店の方の手伝いは。今からリムがするから。姉上はお部屋に戻って試験勉強をした方が」と。

 リムが自身の顔色を変えながら姉上と告げ。

 自身の部屋に戻るようにと急かすと。

「レビィアさん、リムの言う通りで。試験週間ならば部屋へと戻って。試験勉強に集中した方が良いよ」

 家の大黒柱であるパパがリムの意見に賛同。

 だから姉上は素直に。

「はい、旦那様が、そうおっしゃるのならば。私は部屋に入って試験勉強をしますね」と。

 姉上がパパへと竜姫の笑みを浮かべながら言葉を返すと。

「うん」とパパは姉上へと頷き。

「レビィアさん試験勉強頑張ってね」と。

 パパは姉上のことを鼓舞すれば。

 家の姉上は、パパに対してメロメロだから。

「はい」と嬉しそうに言葉を返す。

 それも姉上は、急にお尻をフリフリして御機嫌よく。

 店内と家の玄関を繋ぐ扉へと向け。

「フン、フン、フフフ~♪」と。

 鼻歌交じり向かい始める。

 だからリムは、姉上の可愛らしい様子を見て。

「あっ、ははは」と苦笑いを浮かべる。

「あっ!」と。

 リムが御機嫌麗しい姉上の後ろ姿を凝視しつつ。

 苦笑いを浮かべていると。

 姉上が急に声を漏らし、立ち止まるから。

 リムはギクッ! だよ。

 リムはギクッ! と驚愕しながら。

(ま、不味い。姉上のことを嘲笑ったから叱られるかも?)

 リムは自身の脳裏で思いつつ。

 ドキドキ、ハラハラしていると。

「旦那様~?」と。

 姉上は踵を返し、後ろを拭かり返り、美人の微笑みを浮かべると。

「夕飯の準備だけは、私がしておきますね」と。

「ふっ、ふふふ」と嬉しそうに微笑みながら。

 姉上はパパへと告げると。

「うん、ありがとう。レビィアさん。楽しみにしておくよ」と。

 パパは姉上の手料理が多分、一番好好きなのかな?

 だってパパはいつも姉上が用意をしてくれる手料理を食べては。

『美味しい!』、

『美味い!』、

『レビィアさんが作ってくれる料理が一番だ!』と褒め称え。

『レビィアさんの料理が我が家。竜田家の味だ』と絶賛までするから。

 その都度リムは余り面白くない。

 だから自身の頬をプゥ~と膨らませながら。

「リムがパパへと作る手料理だって美味しいもん」と。

 リムが不貞腐れた顔でパパへと不満を漏らせば。

「あっ! リム、ごめん。ごめん。リムが作ってくれる手料理も美味しいよ」と。

 パパはとってつけたようにリムのことを褒めるだけだから、悔しくて仕方がない。

 だからリムもスマートフォンの料理レシピを見ながら、日夜和食の研究はして努力はしているけれど。

 姉上のパパへの愛情を込めた手料理の味には、リムは中々及ばないのだ。

 だって姉上のパパへの愛妻手料理は、長らく宮廷料理ばかりを食べてきた母上や伯母上さま達も絶賛する味だからね。

 中々リムの思い通り。

 思惑通り。

 リムの最大のライバルである、次世代の太后陛下へとなられる姉上を蹴落として。

 パパからの寵愛をリムが一心に受けると言うのは及ばないと言うか?

 パパが只今嬉しそうに母上と肩を並べ《《広島お好み焼き》》を焼いている姿を見れば。

 リムのライバルは姉上だけではないよね。

 家には天界の男神達が、自身の顔を緩ませ、目尻を下げ、鼻の下を伸ばし、羨望の眼差しで見詰める容姿端麗……。

 麗しく、艶やかな粒ぞろいの竜の姫巫女さま達がいるから。

 リムのライバルは姉上だけではなく母上、伯母上さま達もいるから気が重たい。

 だからリムは、「はぁ~」と大きく嘆息をもらし。

(ああ~)と自身の脳裏で嘆くしかない。

「姫様~」

「レビィア様、お疲れ様です」

「御学業ー」

「お勉強の方を頑張ってくださいね」と。

 家の姉上を鼓舞する男性の声がするから。

 リムは(あれ?)と思いつつ、声がする方へと視線を変えれば。

 大変に大きな中年の男性の姿……。

 それも彼らは、いい歳をしているのにヲタクなの? と。

 リムが思わず思ってしまうような容姿……。

 そう、彼ら四人の姿を見て確認してもらえればわかる通りでね。

 四人は、この日本の、大化の改新ぐらいの男性の文官服もしくは?

 大中華の宮廷に勤める文官の人達が着衣をしていそうな、ノスタルジックな衣装を着衣した様子でお店の座敷……。

 一番奥の座敷から、リムの姉上へと四人におじさん達が微笑みながら声をかける姿が。

 リムの碧眼の瞳に映るから。

(きていたんだ)と。

 リムが脳裏で呟けば。

(カクヨム)
(9)

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