広島お好み焼き屋【皐月】の看板娘のリムは実は竜の姫巫女様でした! 第5話 お好み焼き屋【皐月】の宅配は全国可能! (1)
第5話 お好み焼き屋【皐月】の宅配は全国可能! (1)
〈ピロリン!〉
「あっ! 鳴った!」
「……ん? どうした、リム?」
「パソコンへと注文が! 宅配の注文が入ったみたいだよ、パパ!」と。
リムはお店ではなく、住居スペースの玄関の手前の廊下で。
ノートパソコンの画面を観つつ、パパへと声を大にしながら呼ぶように叫び。
パパへと注文がきたと告げると。
パパはこちらへと直ぐに移動──。
広島お好み焼き屋【皐月】と、住居スペースとを仕切っている扉から。
こちらを覗き込むように顔を出して。
「そうか? リム、場所は何処だ?」と。
リムに問いかけてきた。
「う~ん、えぇと、えっとねぇ……」と。
リムは呻りつつ、ノートパソコンの画面を見ながら。
右手でマウスを動かし、注文先──。
宅配注文をくれたお客さまの住所は何処だろうか? と。
リムは検索を始める。
すると直ぐにお客さまの住所が特定できたから。
リムはパパへと。
「パパ~、場所はねぇ。岡山県は、岡山市のようだよ」と告げる。
「そうか、宅配場所は、岡山県の岡山市なんだな……。でっ、リム。お客様からの注文は何だ?」
リムがパパへと、宅配希望のお客さまの住所を。
リム達が暮らす広島県の隣の県の街、岡山市だと説明をすれば。
パパは今度は、お客さまのからの注文は何だ? と。
リムに訊ねてきた。
だからリムはパパからまたノートパソコンの画面へと視線を変え。
「う~ん、えっとねぇ、パパ? お客さまからの注文はね。お好み焼きの肉玉そばのダブルが二枚みたいだよ」と。
リムはパパへと説明をする。
「そうか、リム、分かったよ。ありがとう」
パパへとリムが説明をすれば直ぐに言葉が返ってきたの。
だからリムもパパへと「うん」と頷き言葉を返す。
「リム、悪いんだけれど。お客様の名前と住所。それと電話番号をメモしてくれるかな?」
頷き言葉を返したリムへとパパが嘆願をしてきた。
でもリムも、パパの妃であり。
この広島お好み焼き屋【皐月】の女将の一人なのだから。
パパに指示を受けなくても、お仕事の手順は全部理解をしているつもり。
特に今でこそ、大変な賑わいを見せる。
広島のお好み焼き屋さんの中でも、行列ができる流行りのお店の一つとなった【皐月】なのだが。
みなさんも覚えているとは思うけれど。
リムが竜の神具の一つである《《青銅製の合わせ鏡》》を使用してパパの許へときた時は。
この【皐月】は《《閑古鳥が鳴く》》ほどお暇なお店でね。
パパはお店の住宅ローンも滞り。
【皐月】の売却もしくは、お店の中を改装してテナントとして貸し出すかの選択に。
パパは迫られている最中だった。
そんなどん底になっているお店を最初はリムと姉上の二人が必死に切り盛りをして軌道に乗せ。
その後、母上や伯母上達もパパのことを現竜神さまと認め。
暇があれば【皐月】の女将として店に立ち。
広島お好み焼きを、心を込めて焼き、お客さま達へと出し。
その味が良いからと。
日替わりのように美人女将が変わる店だと。
広島市内で、密かにSNSなどで話題となり。
広島のフリーペーパーのリ〇ング新聞に記載され、更に話題……。
その後広島のテレビ局の方へと耳に入り。
母上や伯母上達の美人姉妹……と言うか?
竜の女神さま達姉妹がテレビに映った訳だから大騒ぎ。
中国地方、五県の男性達が一度は見てみよう美人姉妹の麗しい容姿を言った感じで詰め寄せるようになり。
今のような流行りのお店へと変わった。
でも、流行りのお店になる基礎を作ったのはあくまでも、リムと姉上の姉妹だからね。
パパ、竜神さまにそんな指示をリムは受けなくても。
「はい、パパ。もうリムがメモをしたから大丈夫だよ。ほら、これ……」と。
リムはパパとの会話の最中に、ノートパソコンの画面を凝視しながら。
小さなメモ用紙に宅配の注文をしてくれたお客様の名前と住所、電話番号を記載したから。
リムはパパへとメモした紙を手渡すの。
「パパ~。今回の宅配は、岡山市だから近くてよかったね」と。
微笑みながら告げる。
「うん、そうだな、リム。今回はお隣さんで助かったよ」と。
パパはリムから手渡しされたメモ用紙を見て、苦笑いをしながら言葉を返してきた。
だからリムは「うん、そうだね」と。
パパに頷きながら言葉を返すと。
「先ほどのお客さまは、北海道の札幌市だったから。距離の方も結構あるから疲れたでしょう。復だから」と。
リムがパパへと問えば。
「うん、北海道はわりと距離もあるから疲れた」と。
パパはリムの問いかけを聞けば。
苦笑いを浮かべつつ、頷きながらリムへと。
少しお疲れモードだったと告げてきた。
だからリムはパパの身体……。
自身の主の身体を心配した顔へと直ぐに移り変わってしまう。
パパがまた他界した父上のように病魔に侵され早死にしたらどうしよう? と。
リムは思いつつ、自身の顔色を変えながらパパの様子を窺い始める。
「リム、そんなに俺の身体を心配した顔をするなって。北海道だと言っても。俺が竜化して飛べば。ものの数十分もあれば到着するし。帰宅の途は、お客様のお好み焼きを持っていない状態だから。俺自身も全力で飛べるから。ここまで、ものの数分で帰れるから問題はないよ」と。
パパはケラケラと笑いながらリムに大丈夫だ! 心配するな! と告げてはくれる。
でもやはりリムはパパの身体が心配……。
また遙か遠く。
この世界の紀元前と呼ばれた太古の時代……、
まだこの世界に、人間達が物の怪、お化け、妖怪、化け物と呼んでは忌み嫌い。
恐れ慄く。
魔力の強い伝説の精霊達も地上で暮らしていた頃に。
病魔に侵され他界をした父上のように。
パパも披露を蓄積させ、疲れが抜け切れず。
流行り病に倒れ、病魔に侵されて他界をしたら嫌だから。
いくらパパが張り切り。
「よーし! お好み焼きが、焼き上がり次第。俺が岡山市まで一飛びしてくるよ」と。
リムにパパが気丈な様子を見せてくれも。
リムはパパの娘ではなく妃だから。
陛下の身体が心配で仕方がない。
「パパ~?」
だからリムはパパへと声をかける。
「……ん? リム、どうした?」
お店と居住スペースとを繋ぐ扉を閉め、厨房──。
お好み焼きや焼きそば、焼きうどん、そば飯、焼き飯、鉄板焼きなどのお肉を焼く。
作業用の大きな鉄板の前へと戻ろうとしていたパパなのだが。
リムに呼ばれ、閉めかけた扉を開き──。
扉から、自身の顔をヒョイと出し、首を傾げるから。
「パパ~、今回の岡山までの宅配はリムがいこうか? パパは先ほど北海道まで飛行をするのに。魔力を結構使用したと思うし。疲れもまだとれてはいないと思うから。岡山までならばリムが飛行してもそんなに時間もかからないし。危険も少ないから、リムがいくよ」と告げる。
「ん? う~ん。良いよ、リム。俺が行くよ。もしもリムに何か起きたら大変だから俺がいくよ。だからリムはお店の手伝いの方を頼む……」
でもリムのパパはこの通りでね。
自身の身体よりも、リムの身を案じてくれる。
だからリムは嬉しいなぁと思う気持ちもある。
だけどリムはパパの妃だから。
陛下の身体の方も大変に心配で仕方がない。
だから嬉しい反面、困ったなぁ、とも思うから。
リムは自身の顔色を変えながら。
「パパ~。リムの方は大丈夫だよ。リムだってパパの妃なのだから大丈夫……。それにリムもドラゴンなのだから。もしも自身に厄災がふりかかれば。直ぐに自分で対処できるから心配はないよ。それにちゃんとスマートフォンのナビシステムを使用しながら。お客さまの家を探すから問題はないし。この宅配システムに応募できる人は。常日頃から大変に素行がよく。他人のためになにかしら。お役に立つことをした人にしか応募ができないようになっているから。女の子のリムがお客さまの家に商品を届けても。何の問題も起きないから大丈夫。大丈夫だよ。パパ……」と。
リムはパパの説得を試みるの。
本当に陛下の身体が心配で仕方がない。
だからリムは悲痛な表情でパパへと訴えかけた。
う~ん、でもね、リムのパパは頑固者だから。
リムの嘆願を聞いても、自身の両眼を閉じ、両手を組んで。
「う~ん、う~ん」と。
パパは唸り声を漏らしながら考える人へとなるだけでね。
中々リムの意見、嘆願に対して、
『よし! 分かった!』と了承をしてくれない。
だからリムは、自身の顔色を変えながらパパの様子を窺いつつ。
恐る恐るとパパの返事を待ち続ける。
「ようし、分かった! リム! 今回の岡山市への宅配はリムにまかせるよ。そして俺は、リムの優しい言葉に甘えて休ませてもらうね。リム本当にありがとう」
リムがね、(どうだろう? どうだろう?)と思いつつ。
パパの様子を窺っていると。
パパがね、リムに。
岡山県、岡山市への広島お好み焼きの宅配の件は任せたと告げてくれた。
それにお礼も言ってくれたの。
だからリムは本当に嬉しくて歓喜するから。
自身の顔色も、声色もね。
自然と楽しそうな顔と、楽しそうな声色変化をし。
リムの心も弾むから。
「うん。パパ~。ありがとう。リムは頑張るからねぇ。パパは家でゆるりとして、休んでいてね」と。
リムは弾んだ声音でパパへと告げるのと。
リムが説明をしたところで。
この物語を見て、読んでいる人達。
お客さま達は。
『……ん? あれ?』
『可笑しい?』
『どう言うこ?』
『何で他県からの注文が、皐月へとくる訳なのだ?』と思ったに違いなと思う。
(カクヨム)
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