タイ 駐在員が通う料理店 その二
前回に引き続き、小ぎれいな店を綴ってみよう。バンコク スクムビット通りのSio55にあったトンクルアン、今はSoi49に移っているが以前の店の思い出がとても強い。現地の人々が家族連れで利用する、庶民の店である。
昼前に周囲を少し散歩して、ちょっと遅い昼食に訪れる。強い日差しのもと汗ばんだ身体を店の中庭、風通しの良い木陰のテラス席へ。定番のガイヤーン(トリの丸焼き)と地元のシンハービールを注文する。現地の人はビールに氷を入れて飲む人も多いが、駐在員は馴染みのスタッフに”よ~く冷えたヤツ”をと頼んで氷は無し。
焦げ目のついた熱々のトリの身を骨からむしり、ピリ辛のソースにつけて食べると指がトリの脂とソースまみれになる。その指はどうするか? カオニャオ(蒸したもち米)をその指で丸めて口に放り込むと、もち米に程よい味がつき更に指もきれいになるよ。
合間に食べるのがガイサームヤーン、生姜・マナーオ(青い小振りの蜜柑)・干しエビやピーナッツなどに少量のプリック(青唐辛子)を掌で混ぜて口の中へポイ!スッキリして食もビールもドンドン進むこと間違いなし。このつまみはタイ料理の傑作のひとつと信じる。
もう一軒は、スクムビットSoi36辺りの奥にあったバーンラオ、イサーン(タイの東北地方)料理の店。高床式の小屋に上って食事をすることができ、長閑なタイの民族音楽と蚊取り線香の香りが混ざった夜風に吹かれながら、のんびりとメコン(ローカル ウイスキー)のソーダ割りを楽しむ。
典型的なサラダ、青パパイヤの千切りを青唐辛子やパクチーなどを加えて叩き(タムの意)、干しエビやピーナッツを混ぜ小さな沢蟹を砕いて入れることもあり、つまみとして最適だが、やはりプリックの地雷には要注意。
”サイグロー”と聞こえる定番のソーセージで、甘いたれや辛いたれをつけて食す。発酵させた豚肉などを詰めたものだと聞いたことがあるが、詳細は不明。イーサンでは森や川辺の昆虫も食べると言われているので豊富な蛋白源であることは間違いない。
ちょいと高めの窓から外を眺めていると、一日の仕事を終えた人々が街灯の下で休憩しているのが見えた。すると、そこへ自転車に乗ったメコン売りがやって来て、ウイスキーを量り売りしてビニール袋に入れて渡す。
暫くすると、またまた自転車に七輪の様なものと手回しのプレスを乗せたスルメ売りが到着、つまみを所望する人に供給して去って行く。そして、その次に絶妙なタイミングでタバコのばら売り屋が現れて、”飲んべー”の欲求を満たす一連のサイクルが完結する。
タイの月夜の下、この3人の連携はそれぞれの需要が無くなるまでエンドレスに繰り広げられるのだろうな・・・と思いながらイサーン料理を楽しんだ。