共感的映画論◦映画『ディア・ハンター』
1973年のベトナム戦争の終結後も、この戦争を扱った映画が、数多くアメリカで製作された。
その多くは、アメリカ側からの視点で描かれたもので、そのような指摘もなされた。
1979年に公開された映画『ディア・ハンター』もそのひとつだが、この映画を、登場人物のひとりである「ニック」という人物に焦点を当てて観てみると、そこには、そうした視点といったものを超えた、人間というものの悲劇が浮かび上がる。
「 ニック 」という人物をたとえば、彼が戦争で戦った北ベトナムの兵士に置き替え