自己理解にハマる人が増えるワケ
地方公務員から転職した、キャリアコンサルタントのじゅんです。
新潟に住みながら「キャリア」と「公共」の2軸で活動しています。
相談実績300件以上の経験をもとに、独断と偏見を付け足して、
20~30代の公務員に関するアウトプットを続けています!
「転職」「キャリア」「自己分析」「やりたいこと」・・・
こんなキーワードでgoogleさんと会話したことがある方は、
少なからず自分と向き合おうとした経験があるのではないでしょうか。
自分は何がしたいんだろう。私は何者なんだろう。転職すべきなのか。
キャリア支援的な文脈でいうと「自己理解」という最初の壁にあたります。
キャリア形成は、以下の流れで進んでいきます。
自分を知ろうとするのは、とても良いことです。
でも、僕自身はキャリアコンサルタントとして活動するなかで、
自分を知りすぎても良くないのでは?と思うことが増えてきました。
今回はそんな「自己理解の沼」「自己理解神話」を掘り下げます!
なぜ自己理解の沼にハマるのか?
そもそも、自己理解にハマる人は結構な割合で存在していると思います。
では、なぜ自己理解の沼にハマるのでしょうか?
冒頭で少し触れましたが、
キャリア形成のファーストステップは紛れもなく「①自己理解」です。
そして次のステップが「②仕事理解」。
①自分を知る ⇒ ②仕事を知る ⇒ 2つの要素をマッチングさせる。
これがキャリア形成であり、そして転職活動とも言えます。
ライフラインチャートとか、ライフキャリアレインボーとか、
就活やら新卒研修やらでやりませんでしたか?
もしくは、30歳も近くなってきて内省の機会が増えた途端に、
ストレングスファインダーをオススメされませんでしたか?
(僕も、ちゃっかり受検した記事はこちら)
これらは全て「自己理解」の領域です。なんだか身近に感じますね。
加えて、厚生労働省が言っているだけあって、
世の中のキャリア形成支援は、だいたいが自己理解から始まります。
これらを簡潔にまとめると、自己理解は以下2つの特徴があると言えます。
①キャリア形成の1丁目1番地であること
②理論や分析ツールが広く知られていること
言い換えると、「キャリアに悩んだら最初に取り組む領域であり、かつ、取り組みやすい領域である」です。
誰もが通る道だし、通りやすい道だし、なんなら楽しいです。
だから必然的に、沼りやすいです。自分に酔いやすいです。
ここでは「自己理解は、キャリア形成のプロセスとして沼りやすい位置づけであり、それを助長するように各種ツールが存在している」というポイントを抑えて欲しいです。
・・・では、沼にハマらないためには、どうすればいいのでしょうか?
僕が現実的にオススメしているのは、以下の2つです。
脱出策① 求人を見て、現実を知る。
特に転職活動をする人は、このポイントを最初に伝えています。
①自己理解 ⇒ ②仕事理解 という順序ではなく、
①仕事理解(浅く) ⇒ ②自己理解 ⇒ ③仕事理解(深く)という順序を意識すべきです。
具体的には、ハローワーク・リクルート・dodaあたりで転職先の地域を検索すること。解像度は低くて良いので、求人の量や質を見ておくこと。
これらをするかしないかで、沼にハマるかハマらないか、転職活動の納得度が高くなるか低くなるか、が決まります。
例えば僕の実体験を挙げると、始めて求人を見始めたのは転職活動の中盤でした。先に自己分析を始めて、職種や業界を調べて準備万端、いざ求人を見た時に、期待していた求人は本当に指で数える程度でした。
「え、新潟市の求人って、こんなに少ないの?」
「政令指定都市なのに、みんな年収低すぎじゃない?」
これがリアルな感想でした。そりゃ東京に行くよね、と感じました。
逆に、地方公務員がめっちゃ恵まれていることにも気づけました。
僕は30歳前半で年収600万円ほどでしたが、民間の求人を見渡すと、同水準の年収はコンサルタントかインセンティブが高い営業職しか無かったです。
30歳前後で家庭を持った公務員が、
「これまでの事務スキルを活かして、民間企業へ転職したい!」
「でも家庭もあるから、年収は維持したい!」というケースは多いです。
こんな期待を胸に転職活動を始めるも、求人を見た瞬間に理想の未来を諦めてしまう方もいます。
言い換えると、転職を考えたときに最初にやるべきなのは、
現実的な選択肢を念頭に置いたうえで、自分と向き合う。
自分と向き合う前に、自分に酔わないようヘパリーゼを飲んでおく。
最終的にどうなりたいのか考える。
今回の転職活動で、どこまでを実現できるのか理解する。
このような、建設的で逆算的な思考が大事です。
脱出策② 職種は絞り、業界は幅広く。
もう1つはテクニック的な論点です。これもオススメの手法です。
まず前提として、業界と職種の違いをサラッとお伝えします。
業界とは、会社が扱う産業のことです。
(例)メーカー、小売、金融、官公庁など
職種とは、仕事内容や役割のことです。
(例)事務、営業、マーケティング、エンジニアなど
転職活動では「業界や職種の選定が大事だ!」と言われます。
就職活動でも、これらの選定には覚えがあるのではないでしょうか。
(僕は公務員1本だったので覚えはないです)
僕がお伝えしたいのは、職種こそが本質であり、業界はサブ要素だということ。並列に捉えるべきではない、ということです。
例えば「言葉で論理的に説明するのが得意!」と自己理解できた場合。
この場合、職種である「法人営業職」は向いてそうですね。
個人ではなく会社に買ってもらうには、社内稟議を通すためのロジカルな説明が必要だからです。売るモノが機械だろうが食品だろうがアプリだろうが、ある程度は論理的に説明するシーンがありそうです。強みが活きそうですね。
逆に、業界から考えるとどうでしょう。
業界である「教育業界」は言葉で論理的に説明するイメージがありますね。生徒や保護者相手に説明するシーンが該当しそうです。
ただ、教育業界の中にある仕事について解像度を高めると・・・
事務、経理、エンジニアなどなど、強みが活きなさそうな職種がたくさんあります。個人的な特性と業界は、あまり関係がなさそうです。
業界は仕事の種類ではなく、仕事が存在しているエリアでしかないです。
自己理解や適職とは、本質的な関係が薄いとも言えます。
コミュニケーションが得意なんだね!じゃあアメリカで仕事しなよ!
と言っているのと同じです。
つまり、自己理解と結び付けるべきは職種です。
「自己理解して、業界と職種を選びましょう!」というキャリア支援は、
どこかズレていると感じます。
今回は焦点を当てませんが、業界をしっかり考慮すべき人はいます。
公務員であれば「公共」という業界のプロフェッショナルを目指すことが、結果的にキャリアアップに繋がりやすいだとか、社会貢献自体にやりがいを感じやすいとか、そういった要素は大いにあります。
ここでお伝えしたいのは、
〇〇には、自己理解の沼が存在しない。
ここまで書いておきながら、逆のことを言います。
現実として、自己理解をスタート地点としたキャリア支援は世の中にたくさん存在しています。そして、効果的だと言われています。
僕は、効果的じゃないと思います。
なぜこのような食い違いが起きるのでしょうか。
・・・それは、地域の差です。
東京には、自己理解の沼が存在しません。
答えは簡単で、
①自己理解 と ②仕事理解 が釣り合うだけの仕事があるからです。
自分に合う業界と職種が多すぎて、逆に自己理解をガッチリやらないと、転職軸がブレて何も進みません。東京はそれだけ、仕事の量も質も、他の地域とは圧倒的に多く高いです。
そして、世の中の多くの人は東京に住んでいます。
だから、自己理解から入るのがスタンダードになっています。
東京ではこのやり方が正解なんだと思います。
問題なのは、同じやり方を平然と地方へ横展開することです。
zoomを始めとしたオンライン環境が整備されたことが、横展開に拍車をかけています。東京での正攻法を、オンラインを通じて地方でも実施する。
自己理解までは上手くいくけれど、なぜか仕事理解からは歩みが止まる。
そして、やむなく転職活動を諦める。または諦めきれずに上京する。
そんなキャリア形成が、全国で生まれ始めているのではないでしょうか。
仕事を求めて地方から東京へ転職することは、僕は素晴らしいと思います。
むしろ「人口流出を防ぐために、地方で就職・転職してもらおう!」という行政の動きは、個人の自律的キャリアを踏みにじる考えだと思います。一度きりの人生を「生まれ育った地域」という外的要因に左右されるのは、僕は違うと思います。
ここで伝えたいのは、キャリアにおいて、
最初から東京でしか叶えられない可能性のある自己理解手法を取るのは、
気を付けた方が良いということです。
東京には存在していない自己理解沼は、地方に多く存在しています。
どんなキャリア支援がクライエントにとって最適なのか、
常に考え続けながら、手法を模索していきたい。
いちキャリアコンサルタントとして、日々こんなことを思っています。
今回は自己理解について、普段モヤモヤしていたことをnoteに書いてみました!
実は記事のきっかけは、キャリアコンサルタント仲間と雑談するなかで、ふと同じモヤモヤを抱えていることに気づいたことでした。
自己理解って楽しいし取り組みやすいけど、結果に繋がらないこともあるよね。なんでだろうね。と会話するうちに、東京or東京以外という要因がシックリ来ました。
対話ってとても大事ですね。
内省や言語化のきっかけは、いつだって対話だと感じました。
最後まで読んでくれてありがとうございました!
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