人気のない場所に、宝の種は眠っているらしい……
今日は「子育て経験」について書いてみたいと思います。うまくいったかどうかは分かりませんが、私自身が「苦手科目の克服」が嫌だったせいもあって、子供たちには「無理せずできることをやる」を実践してきました。
田舎育ちで塾には行かなかった……
うちには二人の息子がいて、転勤があったため幼少期はほぼ北海道で過ごしました。長男は小2から中2まで、次男は年中から小5まで。
札幌から転勤してきた人たちは教育熱心で意識も高かったのですが、ほとんどは地元で育った人たちばかり。
そんな環境だったので、最初はイジメられたこともあり、みんなと同じに幼稚園や学校でしっかり授業を受けた方がいいと、早期教育はしませんでした。
そもそも自分が親に勉強させられて嫌な思いをしたので、子供達には「苦手なことを無理してやらせない」と決め、これには夫も同意見。「得意」を伸ばそうと、計算が得意だった長男には無理に本は読ませず、カードゲーム好きの次男には毎週のように対戦会に連れて行きました。
どんな刺激でも脳は成長するので、好きをつきつめればいい。結局二人とも塾には行かないまま、長男は中2の終わり、次男は小5の終わりに関東へ引っ越すことになりました。
いざ、学力差のある関東へ
引っ越したらいきなり長男は中3で、しかも、一か月後には修学旅行がありました。友達が一人もいない状態で二泊三日の旅行なんて「行きたくない」だろうと思いましたが、長男は黙って参加。
「嫌なら休んでもいいよ、大丈夫なの?」
「うん、まあ平気」
知らない人と付き合うのは慣れているから大丈夫と言われ、引っ越しが多かったので子供なり学んだようです。
それより問題だったのは模試の偏差値。北海道の田舎の学力は関東では全く通用せず。まあ、当然ですけど。
「公立高校が難関校」というレベルの高さに驚き、「合格させます」という進学塾では「偏差値が50のお子さんはちょっと……」と断られました。
実は中1、2の間、塾には通っていませんでしたが、定期テストの時には私と一緒に勉強していました。仕事もせず家にいたので、そのくらいはしようと思ったのです。
教科書の要点をまとめ、参考書から単元の重要問題を繰り返し解けるようにコピーを作り、英語表現や熟語は文章ごと覚えるよう何度も繰り返し書くようにして。
そのせいだったのかどうか……
学年主任が「こんなに成績が伸びた子供は初めて見た」と驚くくらい、長男は中3で成績がグングン伸びました。もちろん塾にも通って入試問題を解いたのは本人の努力なのですが、私も少なからず役に立ったと思っています。
その後、無事に公立高校に進学。
ところが、本来怠け者なので高校に入った途端に部活に打ち込み、高3で塾に通ったものの映像授業は倍速で聞き流していたようで、その結果、浪人することになりました。
それなら「河合か駿台でしょ」
私自身は浪人して河合塾に通ったので、
「絶対に楽しいから!ライブ授業って最高だよっ」
私にとって勉強することが楽しいと感じたのは間違いなく浪人時代です。
授業は分かりやすいし、校則もなく自由で、喫茶店で友達としゃべりまくり。
仲間と通う予備校の楽しさを力説したものの、息子には一緒に学ぶ友達がいません。
「一人で大丈夫なの?」
「うん、まあ、何とかなるでしょ」
高校時代の友達とはLINEで繋がっていたようで何度か遊びに行っていましたが、基本一人で毎日予備校に通っていました。私だったらとてもじゃないけど耐えられないので、よく頑張ったと思います。
そんな息子の努力は成績にも反映され、低迷していた物理とイマイチだった英語が伸びていきました。
「私たちは国立大じゃなければダメだなんて言わないからね」
夫も私も、親にそう言われてツラかったことを未だに根に持っているので、
「得意科目で勝負できるなら私立大でもいいから」
そもそも
「私立大に絞ったら選択肢がせばまりますよ」
と渋い顔をしたのは息子の高校の担任です。
「頑張れば埼玉大や茨城大、群馬大も可能ですから」
そう言われても、重要なのは偏差値ではなく就職。国公立大の合格実績を少しでも増やしたい学校側の都合なんて知ったこっちゃないので、
「うちは東京の私立大を目指します!」
これは夫と私の共通の意見であり、「地方の国立大を出ても就職は有利にならなかった」という苦い経験から、「行くなら東京の有名私立」という思いがありました。
しかも東京の大学に通える場所に住んでいるのですから、こんなラッキーなことはありません。金額的にも、部屋を借りて国立大に行くのと同じくらい。
長男が頑張ったところで難関国立大に行けるはずもなく、それなら「就職のいい有名な私立大」を目指した方が絶対にお得です。
こうして得意教科で実力を出し切った長男は、なんとか第一志望に合格することができました。受験料に30万近く支払ったので、私立大は受験するだけでも相当な出費です。
合格すれば更に入学金と授業料もかかるし、コロナになって当然のように大学院に進学したので、もはや「おったまげ~」。
これで就職に失敗したら目も当てられないじゃんっ
全ては時の運
合格したとはいえ、長男が受かったのは学部の中でも一番偏差値の低い学科でした。かろうじて引っかかった感じです。
人気のない学科に行った長男はさらに、成績順で決まる研究室の選考にも第1志望に落ち、入ったのは第4志望。
「情報処理がやりたかったのに……」
そりゃそうでしょう、人気分野だもんね。
「おれ、成績は悪い方じゃないんだけど」
周りが優秀なんだから仕方ないじゃん。
「それで、何の研究をやってるの?」
「アナログ的なこと」
なるほど、地味な響きに人気がないのもうなずけます。
ところが、これが思いがけず大化けしたのです。
少ないからこその可能性
人気が無い=やってる学生が少ない
人気の情報系を目指したはずが、競争に負けて全く関係ないことを選ぶことになってしまった長男。
とはいえ、今の世の中、この先どんな分野が伸びるかという予測は毎年変わります。たった一年で企業の株価が上がったり下がったり。
「先輩たちがみんなすごいところに内定が決まった……」
大学院に進んで一年目、興奮したように長男が目を輝かせました。
企業のこれから力を入れたい分野とうまくタイミングが重なったようです。
その勢いに乗り、
「大企業に就職する」
と宣言してインターンに申し込んだところ、どこへ行っても歓迎されると喜んでいました。とはいえ、もともと「前に出るタイプ」ではないおとなしい性格ですから、先輩たちのように「みんなが知ってる有名企業」には就職できず、それでも自分が興味を持った会社から内定をもらうことができました。
「世の中ってタイミングなのかな」
未来は予測不能というか、何が吉と出るかわかりませんね。
あのまま現役で入れる大学に行っていたら、成績が悪くて第4志望の研究室に入らなかったら、今の結果はなかったわけで。
まあ、みんながやることに乗っからない方がいいとは思っていましたが、うまくいく保証がないのが悩みどころ。
それでも、無理して頑張る必要はない、これだけは間違いないと思います。全てを合格点にしなくてもいいんです。
世間は未だに「全てをまんべんなくできることが優秀」という考えが根強いですが、私は敢えて勇気をもって言います。
子供には、好きなことをやらせていればちゃんとなるようになっていく。
選択肢を広げるより、思い切って捨てた方がいい。
次男にしても、長男のようなラッキーはありませんでしたが、長男よりも成績優秀な彼は、浪人することなく志望校に合格し、小学生の頃からずっと言っていた「家に居たまま仕事できる会社に就職する」というぐうたらな夢を叶えました。
当時はみんな「なにを夢みたいなことを」と笑いましたが、コロナで在宅ワークが増えた今、ホントに起こってしまいました。
なので、必要なことは手助けしつつ後は本人に任せる、不安でも何でも最後は本人の力と、運をつかめるかどうかです。
無理に勉強させてもさせなくても子供はちゃんと伸びていくし、たとえ地味なところにいても、思いがけないチャンスがやってくることもある。
実際に子育てを終えた今、今度は自力で頑張ってくれよと思いながら、この先もしっかり生きて行って欲しいと願っています。