後ろを振り返らない夫、引き離される距離

このお正月、久しぶりに家族一緒にお店で食事をしました。
お腹いっぱい食べて、駅までの帰り道は１キロちょっと。

冬の夜道を夫が次男と並んで足早に歩いて行きます。
ちょっと離れて長男、私は歩幅が違うので彼らのペースにはついていけません。どんどん引き離され、やがてその姿が見えなくなってしまいました。

どうして振りかえってくれないの？
知らん顔で置いてけぼり？

冬の夜空の下、マクスでくもるメガネの向こうに信号機の赤い光がぼんやりと滲んで、たまらずくるりと向きを変えてしまいました。
こんなの家族じゃないっ

感情を抑えたくても、腹立たしくて悲しくて、どうしても気持ちがおさまりません。音がすると嫌なのでスマホの電源を切り、そのままどんどん駅から遠ざかるように、もと来た道を引き返しました。

大晦日の冷たい風が吹きつける中、頬がピリピリするのを感じながら、ぐるぐると頭の中を駆け巡るのは夫や息子たちに対する不信感。

単身赴任になってからの夫は、なぜか一緒に住む話を避けるようになり、
「このままでいい」とか、キレ気味に「何が？言ってる意味がわからない」

子ども達にしても、気遣いのある優しい家庭を作ってきたつもりが、驚くほど個人主義に育ってしまい、何よりも自分が大事、なぜそうなったのか。

努力したのに、明るく優しく夫婦喧嘩もせず頑張ったのに、
何がどう間違っていたの？

今までずっと「人生はつらいもんだ」と思ってきたけれど、夫も子供たちも死にたいとか言わずにそれなりに楽しく生きているわけで。

勝手に我慢して、家族に見返りを期待して。
どうぜ最期は独りなんだし、だったら家族をあてにしないよう、自分が強くなるしかないじゃんっ

体が冷えたおかげで少し気持ちが落ち着いてきました。
立ち止まって深呼吸。
「そろそろ引き返そう……」

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駅前の信号までたどり着くと、明るい看板の下でスマホに耳をあてながら立っている夫の姿が見えました。

「大丈夫？心配したよ」
「うん、途中でちょっと胃が痛くなって」

何もなかったかのように会話しながら、それでも心のモヤモヤは消えません。
夫が単身赴任になってから４年、今や恋愛感情もなく知り合いのような関係。最初は夫の気持ちが分からずあれこれ気を使いましたが、今では夫がどうのというより、自分はどうしたいのか……

一緒に暮らしたい？
いや、無理。
夫に離婚する気はなさそうだし、このまま別居の方が楽でいい

夫はここ数年、怒りっぽくて気まぐれで、あからさまに嫌味を言うようになりました。このまま一緒に暮らせば被害者になってしまいそうです。こうなったら、自分がしっかりするしかありません。

相手の言動を気にするより、自分の気持ちを優先して行動できるようにならなければ。

まあ、夫とはあまり体の相性も良くなかったし、何でも話せるから好きだったけど、それこそが甘えだったのかも。

これからは、夫にすがらなくても堂々と生きられるように強くなろう。

結婚して２７年、最近は熟年夫婦の離婚が増えているそうですが、私も新年早々、そんなことを考えたのでした。