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20241213アサヒビール社が輸入するビールを自主回収した件の解説 導入編

お久しぶりです。ビール醸造技術者のしん太です。
2日前に流れてきたこちらのニュース。
なかなかわかり辛い内容となっていますので、解説してみます。
今回は概要編です。さっと内容がわかるようにかみ砕いてみます。

自主回収に関するお詫びとお知らせ

リリース内容を一部抜粋してみます
>アサヒビール株式会社が輸入・販売する「グロールシュ プレミアム ラガー」で使用している原料(Rhoホップエキス)について「日本国内で使用が認められていない添加物」が使用されていることが明らかとなりました。
 この添加物は、原料(ホップエキス)および最終製品(ビール)に残っていませんが、食品衛生法上の解釈について管轄保健所に問い合わせたところ、「食品衛生法第12条違反(疑い)であり、自主回収が妥当と考えられる」との見解が示されましたので、下記対象商品を自主回収いたします。
(中略)
なお、Rhoホップエキスの使用は、アメリカ、ヨーロッパ等で認められており、海外ではRhoホップエキスを使用したビールは一般的に流通しております。また、これまで国内外を含め健康被害のお申し出はいただいておりません。

自主回収に関するお詫びとお知らせ

重要な部分を太字にして、それぞれ一言解説します。
このニュースがちょっとわかりやすくなると思います。

①グロールシュプレミアムラガー
☆解説☆
・1615年にオランダで誕生した、世界最古のビールブランドの一つです
・2016年にアサヒビールがSABミラーからブランドを買っています

使用している原料(Rhoホップエキス)
☆解説☆
・ビールの原料のひとつ、ホップは加工されて添加することが一般的です。
・無加工は生ホップ(フレッシュホップ)と呼ばれます。
・一般的には乾燥粉砕してペレット状にしますが(ペレットホップ)、ホップの苦みと香りの成分の部分だけぎゅっと濃縮したホップエキス(エキストラクト)という形態も古くから使われています。
・今回ニュースにあがったRHOホップとはその中でも比較的歴史の新しい、新タイプのホップ加工品となります。
・ビール中の主要なホップ成分であるイソアルファ酸は紫外線により構造が変化し、ほかの成分と作用することで不快なにおいの発生につながります。これは一般的に日光臭やスカンク臭、と呼ばれます。ビール瓶で紫外線の影響を減少するために茶色や緑色の瓶を使うことが多いのはこれが一因です。
・RHOホップとはホップの構造を変化させ、この日光臭につながる構造変化を起こしにくくしたホップエキスです。ホップ由来の成分のアルファ酸を化学反応でテトラヒドロイソα酸(THIAA)等に変換することで、光安定性が大幅に増しています(つまり光の作用で構造変化しにくい)

③「日本国内で使用が認められていない添加物」
☆解説☆
・日本において使用できる食品添加物は、原則として厚生労働大臣が指定したものだけです。これは、天然物であるかどうかに関わりません。例外的に、指定を受けずに使用できるのは、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物だけです。未指定の添加物を製造、輸入、使用、販売等することはできません。(食品添加物 よくある質問(消費者向け)

「食品衛生法第12条違反(疑い)であり、自主回収が妥当と考えられる」
☆解説☆
ここは③と同義です。食品衛生法12条には食品添加物は決められたものしか使っちゃだめよ!と書いてあります。中にはこの食品にはこのくらいしか使っちゃダメ、やこの目的でしか使っちゃだめ、という個別ルールもあり、これを「使用基準」といいます。
↓12条の条文ワカリニクイネ

第十二条人の健康を損なうおそれのない場合として内閣総理大臣が食品衛生基準審議会の意見を聴いて定める場合を除いては、添加物(天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であつて添加物として使用されるものを除く。)並びにこれを含む製剤及び食品は、これを販売し、又は販売の用に供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

食品衛生法 | e-Gov 法令検索

なお、Rhoホップエキスの使用は、アメリカ、ヨーロッパ等で認められており、海外ではRhoホップエキスを使用したビールは一般的に流通しております。
☆解説☆
ここはお客様に対して過剰な不安を煽らないような文言ですね。RHOホップは海外のホップサプライヤー(メーカー)ではすでに一般的な商品として売られておりビール造りに使われています。

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ということで、リリースを少しかみ砕いてみました。
はたしてどの物質が日本国内で認められていない添加物、なのでしょうか。
これについてはリリースで触れられてはいませんし、実はRHOホップの商品説明にも書いてありません。
何らかの技術文書から読み解く必要があります。
ということで続きは次の記事で。

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しん太/ビール醸造とエッセイ
お読みいただきありがとうございます。頂いたチップでビールを飲んで、執筆の励みにします^^