母と息子 83『魅惑の魂』第３巻 第２部 第１１回
これをはじめて見たものは、眼を丸くして当惑するだけもしれない。しかし、教師にとってはこのすべてが当たり前に過ぎなかった。ここでの授業はアネットは、まだ始めたばかりだが（彼女のこれまで授業は学校ではなく、個人の家庭での授業だった）、それでも最初の一歩から自信に満ちていた。彼女は生まれつきの統治する能力を備えていた。たとえ夢想の中にあっても、周りの変化を嗅ぎ取る優れたものも持っていた。わずかであっても周りにおこりそうな危険に対しては、つねに身構えができている。目前の、小狼や小狐たちは、彼女がぼんやりとする瞬間を狙っていた。彼女の気を散らすことに専念し、彼女を凝視している。厳しい眼の中に安らぎを求める火が灯るの待っているのだった。彼らにとって、この女は羊飼いとしての自分たちに、与えられたものだと思い込んでいたのだ。慰みものにできるだろうと！…
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