前回
執務室に戻ってきたのは、午後の一時半に近かった。ふだんの木曜ならこれで帰宅するのだが、三時から予定が入っていた。入試問題の印刷見本の確認が三時から始まることになっていた。
それまでの一時間以上を、どうするかと思った瞬間に、尾末典子のが提案した試験問題が泛んできた。それはリンカーンの『ゲティスバーグ演説』を基にしたものだった。だが『ゲティスバーグ演説』そのものを最近はほとんど読んでいないことも思いだした。
今では検索すれば日本語訳されたものを各所で観ることも可能だが。リンカーン自身の言葉に触れてみたくなっていた。
そして探し出したページを、ぼくの言葉にしながら読んでいた。
ジョン・ロールズが書いていた。政治家といえるのはワシントンとリンカーンだ… たしかにその通りだと思いながらも、二十一世紀の日本に政治家が存在していないという事実に、悪寒すら感じるのだった。
※『ゲティスバーグ演説』は下記を参照した。
https://www.abrahamlincolnonline.org/lincoln/speeches/gettysburg.htm
つづく