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母と息子 119『魅惑の魂』第3巻 第2部 第47回
こういうことで1914年末のパリには、鎖から身を守る筋金入りの人々は十数人しかいなかった。それでも、その後から少しずつ増え、二、三の小さな集団が結成されていった。その中で最も明快な意思を示したのが、ラ・ヴィ・ウーヴリエール(労働生活)という集団だった。
日曜日に行われた彼らの集会のいくつかに、マルクは参加してみた。そこで聞いた言葉の多くが彼を震撼させていた。
マルクがこれまでに戦争そのものを話したことは、一度もなかった。だがそこで聞く戦争とはあまりもの不条理だった。彼は、今まで持っていた知識だけでは、そのすべてを理解することはあまりにも難しかった。戦争とは、あまりに残酷なものであり、あまりにも人間を軽視していた。
それでもまだか彼のなかでは、戦争を歓迎するほうを、雄々しいと思う考えも残っていた。十代半ばという彼の年齢では、「雄々しい」は最高の美徳でもあった。未知でありがらも、純粋な力がそこにあって、危険なものも伴うからだろうか… 人間は永遠の戦いに閉じ込められる、生きるためには無慈悲でも戦わなければならなかった。弱くては生きてはいけない。最強にならなければ!… そこには自分自身を激昂させたアネットへの思いもあった。母は自分の弱さをも知っていた。だから強くなった自分を、見せなければならなかった…