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母と息子 150『魅惑の魂』第3巻 第2部 第78回
マルクが学校を退学させられたのは、こんな理由があった。
ある夜のこと、彼がこっそりと寄宿舎に戻ってきたときに、偶然に舎監と出会ってしまった。舎監自身にも不都合なことがあって、かなり機嫌が悪かった。それでマルクをこっぴどく叱ったのだが、マルクの受け答えは横柄としか受け取れないものっだ。マルクの気持ちのなかでは舎監を見下げていたのだろう。
事件がそれで済めば何もなかっただろうが、舎監の下劣な心が、奇妙な予測をした。もしもマルクの宿舎の規則を無視した行動が、だれにも知られることになったなら、自分の監督不行き届きを咎めれることになって、運が悪ければ仕事さえ失いかねないだろう… そこで舎監は機先を制するつもりである行動をとったと思われる。
マルクは校長の前に呼び出されて、そこで放校を宣告された。マルクはそれに対して、弁解や謝罪の言葉を一言も発しなかった。周りの卑劣ばかリが眼についてしかたなかったからにちがいない。そんなことよりも、多くの嫌味を口にされても、それに少しも怯まなかった自分の内心を尊敬すらしていた。
事情を知ったシルヴィは、入ってきたマルクを見て愕然としていた。マルクの学業の面での、彼女の責任は小さなものではない。それはアネットから託されたことだった。アネットは彼女に、常にマルクを見守って健康や学校での様子を知らせてくれるようにと頼んでいた。そして彼が外出するときも、気配りをして監視するようも頼んでいた。